23 / 32
オレは同居人と先へ進みたい
7
しおりを挟む
「なあ。健は、オレのこと好きか? 資格とか自信とか関係なく、素直に答えてほしい」
「……うん。好きだよ」
「それが聞けて良かった。オレもお前が好きだ。恋人にとって必要なものなんて、それで十分だと思う。痛いことが耐えられなくても良い。オレのことを好きでいてくれれば良いんだ。ずっとオレのこと、好きでい続けてほしい」
濡れた目尻に口づけて慰めると、健の腕が遠慮がちに賢太郎の背に絡まった。健は照れ臭そうに目線を合わせてくる。白いベッドに横たわった恋人は、先程より柔らかい表情になっていた。
「お前から、そこまで情熱的な言葉を聞くことになるなんて思わなかった。賢太郎も、俺のことを好きでい続けてくれるのか?」
「当然だろ」
「恋人だからできること、全部はできないかもしれないよ、俺とは」
「それでも良い。今できなくても、いつかできるようになるかもしれないし。もし仮にずっとできなかったとしても、お前のことを嫌いにはならない。二人で触れ合えるような、他のことをすればいい」
「……今はそう言ってくれてるけど、いつか賢太郎が嫌になっちゃうんじゃないかって、ずっと不安だった」
健は寂しそうに目を伏せたが、賢太郎の言ったことを口先だけの嘘だと思っているという訳ではないようだ。健は、存在するかもわからない、遠い未来のことを危惧しているのだろう。肉体的に繋がれないからと理由を付けて健に別れを告げるような、想像上の未来の賢太郎のことを考えている。
「そんな悪い想像の中のオレなんて信じないでほしいな。そいつ、今のところ架空の存在だろ」
「……確かに」
「いつかはそうなるかもしれないって不安に思ってるなら、お前に出来る範囲でいいから、今のオレのことを大切にしてくれよ。今日まで結構、傷付いたんだから」
「う、ごめん。そうだよな。目の前の賢太郎のことを一番に考えなきゃいけなかった」
健は、拗ねる賢太郎を宥めるように身体を引き寄せる。二人を隔てる空間がなくなって、心臓の鼓動が重なって、息が混じり合う。頭を撫でると、健は息を漏らしながら唇を離した。蕩けきった、切ない瞳をしている。
「あんなに、お前と顔を合わせるのが怖かったのにな。今はすごく、あの時間が勿体なかったって思える。もっと、一緒に居られたはずなのに……」
「今から埋め合わせしよう。今日はまだ時間がある。明日もずっと一緒だろ?」
「……うん。車の中でできなかった分、たくさん触ってよ」
健は、悪戯っぽく挑発するように微笑む。初めて見る表情に、賢太郎は胸が高鳴った。お言葉に甘えて、裾から入れた手を腹に乗せる。健は擽ったそうに笑いながら受け入れてくれたが、手が上に行くにつれて渋い顔になっていった。
「どうした? やっぱり怖い?」
「大丈夫。……シャワーを先に浴びたい」
「オレは気にしないけど」
「俺が気になるんだよ。お前だって、初めてキスする前にめちゃめちゃ歯磨きしてたじゃん」
「……じゃあ、二人で入ればいい」
片時も離れたくなくて、何とか一緒にいられる方法を提案する。健は視線を彷徨わせていたが、微動だにしない賢太郎を見て観念したように頷いた。
健は服を脱ぎ捨てると、所在なさげに視線をうろつかせ、足早に浴室に入る。追って後ろから抱きしめると、あの夜と違って、健は温かかった。流れ出るお湯を二人の肌が分け合う。
「一緒に入るって言ったのに、酷いな」
「恥ずかしいんだよ。どこ見て良いんだか分からないし、見られるのも変な感じがする」
「裸見るのも見られるのも、二回目だろ」
「そうだけど、あの時は怖くてそれどころじゃなかったから。記憶が無いの」
「……お前、修学旅行の大浴場とかどうしてたんだ」
「何とも思ったことない。まじまじ見ることもないし、好きな奴がいるわけでもなかったからさ」
シャワーヘッドを握り締めながら文句を付ける恋人を黙らせるため、賢太郎は健の耳を舐め上げた。予想通り掠れた甘い声がして、抵抗が止む。舌で耳を愛撫しながら健を壁に押し付けて、握りしめていたものを取り上げ、シャワーフックに立てかけた。
「んっ……ああっ」
「あのな、いい加減諦めてくれ。最初は恥ずかしいかもしれないけど、これから先、何回でも見ることになるんだぞ」
「そ、そうだけどさ……んっ」
大人しくなった健を正面から抱え直して、キスで唇を塞ぎながら尻に手を伸ばす。初めて触ったそこは、思ったよりも肉付きが良くてハリがあった。……あれだけ賢太郎の料理を食べているのだから当然だ。オレが育てたようなものだと誇りに思いながら、賢太郎は遠慮なく両手で尻を揉みしだく。塞いだ口から抗議の唸りが響いていたことに気付いたのは、健から背中をばしばしと叩かれてからだった。
「……うん。好きだよ」
「それが聞けて良かった。オレもお前が好きだ。恋人にとって必要なものなんて、それで十分だと思う。痛いことが耐えられなくても良い。オレのことを好きでいてくれれば良いんだ。ずっとオレのこと、好きでい続けてほしい」
濡れた目尻に口づけて慰めると、健の腕が遠慮がちに賢太郎の背に絡まった。健は照れ臭そうに目線を合わせてくる。白いベッドに横たわった恋人は、先程より柔らかい表情になっていた。
「お前から、そこまで情熱的な言葉を聞くことになるなんて思わなかった。賢太郎も、俺のことを好きでい続けてくれるのか?」
「当然だろ」
「恋人だからできること、全部はできないかもしれないよ、俺とは」
「それでも良い。今できなくても、いつかできるようになるかもしれないし。もし仮にずっとできなかったとしても、お前のことを嫌いにはならない。二人で触れ合えるような、他のことをすればいい」
「……今はそう言ってくれてるけど、いつか賢太郎が嫌になっちゃうんじゃないかって、ずっと不安だった」
健は寂しそうに目を伏せたが、賢太郎の言ったことを口先だけの嘘だと思っているという訳ではないようだ。健は、存在するかもわからない、遠い未来のことを危惧しているのだろう。肉体的に繋がれないからと理由を付けて健に別れを告げるような、想像上の未来の賢太郎のことを考えている。
「そんな悪い想像の中のオレなんて信じないでほしいな。そいつ、今のところ架空の存在だろ」
「……確かに」
「いつかはそうなるかもしれないって不安に思ってるなら、お前に出来る範囲でいいから、今のオレのことを大切にしてくれよ。今日まで結構、傷付いたんだから」
「う、ごめん。そうだよな。目の前の賢太郎のことを一番に考えなきゃいけなかった」
健は、拗ねる賢太郎を宥めるように身体を引き寄せる。二人を隔てる空間がなくなって、心臓の鼓動が重なって、息が混じり合う。頭を撫でると、健は息を漏らしながら唇を離した。蕩けきった、切ない瞳をしている。
「あんなに、お前と顔を合わせるのが怖かったのにな。今はすごく、あの時間が勿体なかったって思える。もっと、一緒に居られたはずなのに……」
「今から埋め合わせしよう。今日はまだ時間がある。明日もずっと一緒だろ?」
「……うん。車の中でできなかった分、たくさん触ってよ」
健は、悪戯っぽく挑発するように微笑む。初めて見る表情に、賢太郎は胸が高鳴った。お言葉に甘えて、裾から入れた手を腹に乗せる。健は擽ったそうに笑いながら受け入れてくれたが、手が上に行くにつれて渋い顔になっていった。
「どうした? やっぱり怖い?」
「大丈夫。……シャワーを先に浴びたい」
「オレは気にしないけど」
「俺が気になるんだよ。お前だって、初めてキスする前にめちゃめちゃ歯磨きしてたじゃん」
「……じゃあ、二人で入ればいい」
片時も離れたくなくて、何とか一緒にいられる方法を提案する。健は視線を彷徨わせていたが、微動だにしない賢太郎を見て観念したように頷いた。
健は服を脱ぎ捨てると、所在なさげに視線をうろつかせ、足早に浴室に入る。追って後ろから抱きしめると、あの夜と違って、健は温かかった。流れ出るお湯を二人の肌が分け合う。
「一緒に入るって言ったのに、酷いな」
「恥ずかしいんだよ。どこ見て良いんだか分からないし、見られるのも変な感じがする」
「裸見るのも見られるのも、二回目だろ」
「そうだけど、あの時は怖くてそれどころじゃなかったから。記憶が無いの」
「……お前、修学旅行の大浴場とかどうしてたんだ」
「何とも思ったことない。まじまじ見ることもないし、好きな奴がいるわけでもなかったからさ」
シャワーヘッドを握り締めながら文句を付ける恋人を黙らせるため、賢太郎は健の耳を舐め上げた。予想通り掠れた甘い声がして、抵抗が止む。舌で耳を愛撫しながら健を壁に押し付けて、握りしめていたものを取り上げ、シャワーフックに立てかけた。
「んっ……ああっ」
「あのな、いい加減諦めてくれ。最初は恥ずかしいかもしれないけど、これから先、何回でも見ることになるんだぞ」
「そ、そうだけどさ……んっ」
大人しくなった健を正面から抱え直して、キスで唇を塞ぎながら尻に手を伸ばす。初めて触ったそこは、思ったよりも肉付きが良くてハリがあった。……あれだけ賢太郎の料理を食べているのだから当然だ。オレが育てたようなものだと誇りに思いながら、賢太郎は遠慮なく両手で尻を揉みしだく。塞いだ口から抗議の唸りが響いていたことに気付いたのは、健から背中をばしばしと叩かれてからだった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
とろけてなくなる
瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。
連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。
雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。
無骨なヤクザ×ドライな少年。
歳の差。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
異世界転移して岩塩を渇望していたらイケメン冒険者がタダでくれたので幸せです
緑虫
BL
#食欲の秋グルメ小説・イラスト企画 用に書き始めたら何故か岩塩メインになった短編(多分)です
母親の葬儀の後、空っぽになったイクトは目が覚めると異世界転移をしていた。異世界転移先で監督者のおじさんローランとスローライフを送っていたが、塩の入手が困難で実はかなり塩味に飢えていた。
そんな時、ローランの息子で冒険者のユージーンがふらりと立ち寄り……?
エロなしです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる