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4章 精霊と勇者とやる気なし
76話 やっぱりな
しおりを挟む「精霊の執を終わらせる? なぜ、それが必要なんだ?」
「精霊界とあっちを繋げてる力ってのが結構不安定でさぁ~。
精霊の執が管理してたんだけどもうできないじゃん?
だから、閉じて貰わないと困るんだよねぇ。
崩壊しても困るしさー!
ね、やってくれるでしょ?」
コテン、と可愛らしく首を傾げる精霊王。
「協力したいですけど……僕、本当に何も知らないんです」
レオンハルトが不安げに言った。セオドアの方を見る。
「師匠………」
「恐らく、アレがやり方を知っているんだろう。心配いらない」
「そうだよー。手取り足取り教えてあげる!」
そこで、セオドアが思いついたように精霊王を見た。
「レオンハルトが死ぬようなことは無いな?」
「んもー、心配性だなぁ。死ぬようなことはないよぉ。元気なままお返ししますぅー」
その言葉に、拗ねたように精霊王が返した。
「誓え」
「はいはい、精霊王の名のもとにー。これでいい?」
それでようやく、セオドアが安心したようにため息をついた。
「な、なぁセオドア。精霊王様をうたがう訳じゃねぇがそんな誓いで大丈夫なのか?」
グスカンが、セオドアに囁く。
「なにー?」
「いっいえなんでも!」
「問題ない。言い方は何であれ、精霊王は己の誓いに逆らえん」
「そうだったのか………」
「ね、もういい?」
「大丈夫か、レオンハルト」
「はいっ! がんばります!」
「準備バッチリみたいだね! じゃあさ、血をちょうだい? 小瓶に入れる程度でいいから」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい」
「やぁーだなぁ。そんなに睨まないでよ。小瓶程度って言ったじゃーん」
「僕は大丈夫ですよ。でも、僕を傷つけるにはかなりの力が要ります………」
「うわー、そうだった。シファニアの愛があるんだよねー」
「僕に守護者の愛をくれたのは、お母さんだったんですよね……」
レオンハルトがしみじみと、行った。
「愛されてんだな」
「はい!」
精霊王が咳払いをした。
「んんっ、その点に関しては大丈夫だよ。レオンハルト君…………構えて」
「ここでやるのか?」
「うん。精霊界だったら何処でもいいよ。
いくよ」
「はい」
次の瞬間、風でできた不可視の刃が、レオンハルトの腕を切り裂いた。
赤い血が辺りに飛び散る。
「不本意だが、相変わらずだな」
「まー、精霊王だからね。レオンハルト君、私に続いて…………
太古の盟約に基づき、糸を無に還す」
「太古の盟約に基づき、糸を無に還す」
「其は力なり」
「其は力なり」
「反逆の心無く」
「反逆の心無く」
「遂行されし契約」
「遂行されし契約」
「理に終焉を告げ」
「理に終焉を告げ」
「再び出逢わん事を望む」
「再び出逢わん事を望む」
レオンハルトと精霊王の声が重なり、共鳴し、響きあう。
そして、精霊王が安心したようにため息をつくと晴れやかに告げた。
「ありがとう! わたしは得をしたよ」
「やはりか」
「おい、どういう事だ?」
「こいつは、人が戸惑うのを見て楽しむ性根の歪んだ奴だ。ただでは返さないとは思っていた」
「ひどい言いがかりだなぁ。でもまぁ、ちょっとした余興には付き合ってもらうよ?」
精霊王は、無邪気にそう言い放つった。
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