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Episode1 しょっぱなからオムニバス! 男性主人公&童話風オムニバスホラー3品
【お急ぎの方へ☆サクッとネタバレ】Episode1-C 夢の中の美しき娘のために物語を書き続けた純情な男のお話
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『成功に光あれば影もあり! それに、ミューズが女性であるとは限らない……』の巻。
大学に通い、文豪たちの多数の作品に触れながら、日々、激しく燃え上がる情熱とともに自分自身もペンをとり、物語を書いているロドルフという青年がいた。
彼はアイデアもあり、文章力や知識もそこそもあったものの、どうしても物語を完結させることができなかった。
そんなある日の夜。
彼は不思議な夢を見た。
草原に聳え立つ月下の塔の最上階にて、美貌の娘に出会う。
彼自身がこの美貌の娘の名を”リュシエンヌ”と名付けた。
リュシエンヌが登場する夢は一夜では終わらず、ロドルフは毎夜夢の中で彼女と逢い、ダンスを踊り続けた。
不思議なことに、彼はダンスを踊っているはずなのに、現実の彼が書いている物語たちが次々につながって、一つの形として完成しつつあるのを”心の中で”見えていた。
ロドルフは、”夢は夢”と切り離して考えることなく、目を覚ますとすぐに、ダンスとともに心の中で展開された光景――自らが紡ぎゆく物語の旋律を原稿用紙に書き留めていった。
そうこうしているうちに、彼は物語を完結させることができたのだ。
そして、”創作の喜びに心を躍らせながら完結させた”幾つもの物語を彼が自分以外の者に見せていくうちに、いつの間にやら有名となり、文学界の成功者として、もてはやされるようにもなっていた。
一躍、時の人となったロドルフであるも、羽目を外して身を持ち崩したりすることはなく、”現実のリュシエンヌ”に会いたいと願い、ペンをとっていた。
ダンスを踊るあの夢を通じて彼女の意識と繋がっているに違いない、と考えていたから。
ロドルフは、リュシエンヌをモデルとした過去最長の長編となる最新作を書き上げ、ますます評判上々に。
そんなある日、彼は橋の上で見知らぬ男にナイフで腹を刺された挙句、川に落ちて死亡してしまう。
彼を刺した男は、いわゆる彼の”アンチ”であった。
まだまだ作家として物語を紡ぎたかったロドルフの魂は、教会で行われている自分自身の葬儀を見ていた。
その時、神々しい光とともにリュシエンヌが現れる。
ロドルフの唇がリュシエンヌの唇に重なり合う。最初で最後の口づけだ。
けれども、リュシエンヌは突如、庶民的なおっさんへと変わる。いや、”元の姿に戻った”と。
このおっさんは、いわゆるミューズ(ムーサ)のような存在らしい。
ロドルフの情熱、そして元々の才能とアイデアのストックという下地も充分であったからこそ、ミューズの一人がロドルフへと手を差し出し、夢を通じて彼の成功を後押ししたのだ。
美しいリュシエンヌの姿であったのは、見てくれとムードが大切であるという理由。
ロドルフには不思議と騙されたという怒りや憎しみは湧いてこなかった。
リュシエンヌの姿は幻ではあったものの、彼女を思って物語を書き続けた日々は創作の喜びに包まれていたのだから。
彼のその人生の最期こそ、哀しく悲惨なものであったが、自分が作家として生きてきたこと自体は悔やんでなどいなかった。
それに、魂は生まれ変わるのだ。
姿かたちや時代は違えど、再びこの世に産声をあげるに違いないロドルフは、ミューズのおっさんに『また、俺と一緒に踊ってくれよ』と言い、天へと昇っていった。
大学に通い、文豪たちの多数の作品に触れながら、日々、激しく燃え上がる情熱とともに自分自身もペンをとり、物語を書いているロドルフという青年がいた。
彼はアイデアもあり、文章力や知識もそこそもあったものの、どうしても物語を完結させることができなかった。
そんなある日の夜。
彼は不思議な夢を見た。
草原に聳え立つ月下の塔の最上階にて、美貌の娘に出会う。
彼自身がこの美貌の娘の名を”リュシエンヌ”と名付けた。
リュシエンヌが登場する夢は一夜では終わらず、ロドルフは毎夜夢の中で彼女と逢い、ダンスを踊り続けた。
不思議なことに、彼はダンスを踊っているはずなのに、現実の彼が書いている物語たちが次々につながって、一つの形として完成しつつあるのを”心の中で”見えていた。
ロドルフは、”夢は夢”と切り離して考えることなく、目を覚ますとすぐに、ダンスとともに心の中で展開された光景――自らが紡ぎゆく物語の旋律を原稿用紙に書き留めていった。
そうこうしているうちに、彼は物語を完結させることができたのだ。
そして、”創作の喜びに心を躍らせながら完結させた”幾つもの物語を彼が自分以外の者に見せていくうちに、いつの間にやら有名となり、文学界の成功者として、もてはやされるようにもなっていた。
一躍、時の人となったロドルフであるも、羽目を外して身を持ち崩したりすることはなく、”現実のリュシエンヌ”に会いたいと願い、ペンをとっていた。
ダンスを踊るあの夢を通じて彼女の意識と繋がっているに違いない、と考えていたから。
ロドルフは、リュシエンヌをモデルとした過去最長の長編となる最新作を書き上げ、ますます評判上々に。
そんなある日、彼は橋の上で見知らぬ男にナイフで腹を刺された挙句、川に落ちて死亡してしまう。
彼を刺した男は、いわゆる彼の”アンチ”であった。
まだまだ作家として物語を紡ぎたかったロドルフの魂は、教会で行われている自分自身の葬儀を見ていた。
その時、神々しい光とともにリュシエンヌが現れる。
ロドルフの唇がリュシエンヌの唇に重なり合う。最初で最後の口づけだ。
けれども、リュシエンヌは突如、庶民的なおっさんへと変わる。いや、”元の姿に戻った”と。
このおっさんは、いわゆるミューズ(ムーサ)のような存在らしい。
ロドルフの情熱、そして元々の才能とアイデアのストックという下地も充分であったからこそ、ミューズの一人がロドルフへと手を差し出し、夢を通じて彼の成功を後押ししたのだ。
美しいリュシエンヌの姿であったのは、見てくれとムードが大切であるという理由。
ロドルフには不思議と騙されたという怒りや憎しみは湧いてこなかった。
リュシエンヌの姿は幻ではあったものの、彼女を思って物語を書き続けた日々は創作の喜びに包まれていたのだから。
彼のその人生の最期こそ、哀しく悲惨なものであったが、自分が作家として生きてきたこと自体は悔やんでなどいなかった。
それに、魂は生まれ変わるのだ。
姿かたちや時代は違えど、再びこの世に産声をあげるに違いないロドルフは、ミューズのおっさんに『また、俺と一緒に踊ってくれよ』と言い、天へと昇っていった。
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