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第7章 ~エマヌエーレ国編~
―62― クセの強い奴ら(1) 新顔魔道士(チリチリ頭と婚活女子)にもスポットライト!
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トレヴァーが意識を取り戻したという朗報は、レイナとジェニーの元にももたらされた。
それを聞いたレイナの体だけでなく、魂までもがフッと緩んでいくようであった。
痛いぐらいに張り詰めていた糸は緩やかに切れていったのだ。
良かった。本当に良かった。
潤んだ目をした二人の少女は、気がつくと互いに手を取り合っていた。
ここ数日、口にこそは出さなかったが、最悪の事態も覚悟をしておかなければならないということは理解していた。
しかし、トレヴァーの詳しい容態までは分からないも、彼は引き返してくることができたのだ。
まだ続く、この旅路へと。
彼女たちは、ライリーとジョーダンのことも思わずにはいられなかった。
一度は互いに違う道を歩むことを選択した恋人たちであったが、異国の地で思いもよらぬ再会を果たし、さらにはジョーダンという存在によって今度は”家族”という形でより強く結びつくこととなった。
それなのに、最愛の夫を失って嘆き悲しむライリーの姿なんて見たくない。
これから成長していくジョーダンだって、自分の父親は海賊に殺されたのだという苦しみを背負っていかなければならないのだとしたら惨すぎる、と。
レイナもジェニーは”仲間の身を案じる”というよりも、同じ女性ということもあってか、ライリーとその子どもに自ずと寄り添うような思いでトレヴァーの生還を願わずにはいられなかったのだ。
なおも涙目のままの彼女たち二人の元に、アダムがやってきた。
「フランシスの予言は当たらなかったのう。いや、あんなものが当たってたまるか。わしは今からトレヴァーの部屋に行ってくる。それとお前たち二人、分かっているとは思うがこの宿から出るんじゃないぞ」
引き続き保護下に置いた二人の少女に背中を向け、アダムはトレヴァーの部屋へと向かう。
あの七人の中で一番最初に逝くのはわしに決まっておろう。
若い奴らが年寄りより先に逝くなんてことあってはならんのじゃ……。
口には出さぬ老翁の思い。
だが、その”あってはならん”ことに、もうすぐ八十四年となる己の人生で幾度となく直面せざるを得なかったことを思うとやるせなくなる。
妻も娘も息子も婿も、もう一人の孫娘(ジェニーの姉)も、自分より先に逝ってしまった。
人生を断ち切られてしまった者は、自分の家族だけではない。
約六十年前にフランシスやサミュエルを筆頭とする魔道士の犠牲となった神人たちに始まり……海の上で永遠の眠りにつくことになった男たちもだ。
それに、アダムは孫娘たちを怯えさせないために「フランシスの予言は当たらなかったのう」とは言ったものの、それは”今は当たらなかった”だけだとも思っていた。
あの予言の実現は、先送りにされただけであるのだとも……。
いまだ手を取り合ったままのレイナとジェニーの背中に、弱々しげな声――絞り出した生気を取り戻しきれていない女性の声――がかけられた。
「あの人……助かったみたいね……私、全身の力がさらに抜けそうだわ…………」
彼女の言う”あの人”とはトレヴァーのことであり、さらには今の言葉を言い換えるなら、「私はあの人を……助けることができたみたいね……私、全身の力がさらに抜けそうだわ…………」となるだろう。
そう、この彼女こそ、芳しき香水と綺羅びやかな化粧という"武装"で兵士たちの前に登場し、死出の旅へと向かわんとするトレヴァーを間一髪この世に引き止めてくれていたエマヌエーレ国の新顔女性魔道士であった。
彼女の名は、ノルマ・イメルダ・ロディガーリ。
ちなみに本人としては年齢は非公開であるも、二十四歳であると別の魔導士が教えてくれた。
レイナもジェニーも彼女と知り合ってから、まだ相当に日は浅い。
しかし、このノルマさんとやらは魔導士としての傍ら、別の活動をも積極的に”アドリアナ王国の兵士たち”に向けて行おうとしているのではないかと気づき始めていた。
それを聞いたレイナの体だけでなく、魂までもがフッと緩んでいくようであった。
痛いぐらいに張り詰めていた糸は緩やかに切れていったのだ。
良かった。本当に良かった。
潤んだ目をした二人の少女は、気がつくと互いに手を取り合っていた。
ここ数日、口にこそは出さなかったが、最悪の事態も覚悟をしておかなければならないということは理解していた。
しかし、トレヴァーの詳しい容態までは分からないも、彼は引き返してくることができたのだ。
まだ続く、この旅路へと。
彼女たちは、ライリーとジョーダンのことも思わずにはいられなかった。
一度は互いに違う道を歩むことを選択した恋人たちであったが、異国の地で思いもよらぬ再会を果たし、さらにはジョーダンという存在によって今度は”家族”という形でより強く結びつくこととなった。
それなのに、最愛の夫を失って嘆き悲しむライリーの姿なんて見たくない。
これから成長していくジョーダンだって、自分の父親は海賊に殺されたのだという苦しみを背負っていかなければならないのだとしたら惨すぎる、と。
レイナもジェニーは”仲間の身を案じる”というよりも、同じ女性ということもあってか、ライリーとその子どもに自ずと寄り添うような思いでトレヴァーの生還を願わずにはいられなかったのだ。
なおも涙目のままの彼女たち二人の元に、アダムがやってきた。
「フランシスの予言は当たらなかったのう。いや、あんなものが当たってたまるか。わしは今からトレヴァーの部屋に行ってくる。それとお前たち二人、分かっているとは思うがこの宿から出るんじゃないぞ」
引き続き保護下に置いた二人の少女に背中を向け、アダムはトレヴァーの部屋へと向かう。
あの七人の中で一番最初に逝くのはわしに決まっておろう。
若い奴らが年寄りより先に逝くなんてことあってはならんのじゃ……。
口には出さぬ老翁の思い。
だが、その”あってはならん”ことに、もうすぐ八十四年となる己の人生で幾度となく直面せざるを得なかったことを思うとやるせなくなる。
妻も娘も息子も婿も、もう一人の孫娘(ジェニーの姉)も、自分より先に逝ってしまった。
人生を断ち切られてしまった者は、自分の家族だけではない。
約六十年前にフランシスやサミュエルを筆頭とする魔道士の犠牲となった神人たちに始まり……海の上で永遠の眠りにつくことになった男たちもだ。
それに、アダムは孫娘たちを怯えさせないために「フランシスの予言は当たらなかったのう」とは言ったものの、それは”今は当たらなかった”だけだとも思っていた。
あの予言の実現は、先送りにされただけであるのだとも……。
いまだ手を取り合ったままのレイナとジェニーの背中に、弱々しげな声――絞り出した生気を取り戻しきれていない女性の声――がかけられた。
「あの人……助かったみたいね……私、全身の力がさらに抜けそうだわ…………」
彼女の言う”あの人”とはトレヴァーのことであり、さらには今の言葉を言い換えるなら、「私はあの人を……助けることができたみたいね……私、全身の力がさらに抜けそうだわ…………」となるだろう。
そう、この彼女こそ、芳しき香水と綺羅びやかな化粧という"武装"で兵士たちの前に登場し、死出の旅へと向かわんとするトレヴァーを間一髪この世に引き止めてくれていたエマヌエーレ国の新顔女性魔道士であった。
彼女の名は、ノルマ・イメルダ・ロディガーリ。
ちなみに本人としては年齢は非公開であるも、二十四歳であると別の魔導士が教えてくれた。
レイナもジェニーも彼女と知り合ってから、まだ相当に日は浅い。
しかし、このノルマさんとやらは魔導士としての傍ら、別の活動をも積極的に”アドリアナ王国の兵士たち”に向けて行おうとしているのではないかと気づき始めていた。
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