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Episode4 「なずみのホラー便」より出張!『美少女たちのパーティー』シリーズ2品
Episode4-A 美少女たちのパーティー PART7~危険な年頃~
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もうすぐ夜が明ける。
人里離れた屋敷の一室に、ポーラ含む総勢八名の美少女たちが揃っていた。
テーブルの上には、血のごとき艶を見せている葡萄酒の残りが入ったゴブレットが置かれていたも、誰一人として手を伸ばす者はいなかった。
「そろそろよね」
「そうよ、あと少しのはずよ」
隣にいたシャルロットとリリアーヌの姉妹が囁きあう。
彼女たちだけでなく、ポーラも、いや、ここにいる美少女たち全員が長い夜の”終わり”を待ち望んでいた。
ポーラが溜息とともに体の重心を左に傾けた時、左太腿の内側がズキンと脈打った。
「大丈夫?」と気づいたシャルロットが小声で問う。
「ええ、傷口って血は止まっても、痛みは喘ぐように蘇ってくるものね。でも……きっと”これ”が最後の傷になるだろうから、まだ耐えられるわ」
極めて小声で答えたポーラは、はしたないとは思いつつも、自身のスカートを捲り上げた。
ポーラのスカートの中を見た美少女たちからは苦痛の呻きが漏れる。
彼女の白くすべらかな左内腿には、雷(いかずち)のような惨たらしい傷痕が走っていた。
そればかりか、右内腿や柔らかなふくらはぎに幾つもの傷痕が残っていた。
しかし、他の美少女たちも多かれ少なかれ、ポーラと同じような傷をその体にも心にも負っていた。
故意に傷をつけられていない者など誰一人としていなかったのだから。
些細な粗相すら”犯していないのに”、ある美少女は気絶するまで背中や尻を鞭打たれ続け、また別の美少女は膨らみかけた乳房の下を切り裂かれた。
処女の血が欲しい。
ただ、それだけの理由で。
自身の美貌の衰えを”ひしひし”とどころか、”これでもか”と感じずにはいられない危険な年頃に差し掛かりつつある、この屋敷の女主人は、金と身分に物を言わせ、近隣の村より貧しい生まれの娘たちを集めてきていた。
今から”そう遠くない昔”、ここより”そう遠くはないある国”で、とある伯爵夫人が自らの美しさのために、何百人もの若い娘を身の毛もよだつ拷問の末に殺害したという嘘か誠か分からぬ話をポーラも聞いたことがあった。
ポーラたちは命こそ直ちに取られはしなかったものの、親兄弟や法律からも隔離されたこの屋敷において、侍女として酷使されるだけでなく、死なない程度にじわじわと日々、痛められ続けてきた。
蘇った吸血鬼のごとき女主人の血絞りは、”少し前までは”ポーラに集中していた。
何もポーラが抜きん出た美少女であったからではない。
客観的に顔の造作だけを見たなら、シャルロットとリリアーヌの姉妹こそ、げっそりとやつれてしまってはいるものの、まさに天使の化身と言えよう。
女主人はポーラの顔をまじまじと見て、こう言ったのだ。
「今のお前は本当に憎たらしいほどに愛らしい。だが、お前には少しばかり残念な成長を遂げそうな兆しもそこはかとなく感じられる。私には真の美を見極める目があるのだ。どちらに大きく振れるか分からぬ”危険な年頃”のお前の美しさは、私がその絶頂期のうちに有効活用してやろう」
客人なども滅多に訪れない人里離れたこの屋敷において、花や景色、絵画や彫刻などよりも、鏡の中の自分自身だけを眺め続ける女主人に、果たして真の美を見極める目があるのか怪しいものであるが。
仮に、ポーラが残念な成長を遂げた――八本の美容液のうちの一本としての役割を果たせなくなった――としても、ここから生きて出られる保証はない。
自分だけが美しくありたい女主人が、自身の美の秘密を知っているポーラをこのまま無事に家に帰すわけがないであろう。
そして、屋敷内に男手がない――護衛も含め、男は極力、遠ざけられていた状況――にあったのは幸いであった。
女主人はこうも言っていた。
「お前たち若い娘は、男と見たなら、すぐに擦り寄って番(つがい)になろうとするものだ。隙あらばその脚を開きたがる”危険な年頃”だが、私はそうはさせない。お前たちのその若さも、肌も血も肉も全て私のためだけに存在しているのだから」と。
だから、それほど難しいことではなかったのだ。
ポーラたち全員が結託して、女主人の食事に、あるいは葡萄酒に、気づかれない程度の少量の毒を盛り続けるなんてことは。
数日前、ようやくその毒の効き目が現れたらしい。
発熱し、脈も乱れ、意識も朦朧とし始めた。
手に入るはずもない永遠の若さと美しさを追い求め続けた一人の加虐性変態性欲者は、ついにベッドから起き上がれなくなった。
この血にまみれた狂宴はもうすぐ終わるだろう。
今か今か、と、誰もが宴の”終わり”を待ち続けていた。
小声で何かを囁き合ったシャルロットとリリアーヌの姉妹が立ち上がり、すぐ隣の女主人の寝室へと歩いて行った。
痺れを切らした彼女たちは、”あとどれくらいかしら?”と様子を見に行ったのだろうとポーラは思っていた。
だが、この部屋に漂っていた重い沈黙をブクブクと泡立てるかのように、女主人のくぐもった呻き声が隣室から聞こえてきた。
ポーラの肌がゾゾッと粟立ち、心臓ばかりか体中の傷痕がドクンと脈打った。
呻き声はやがて止まった。
それは、時間にしたなら、ほんのわずかであったろう。
天使たちは戻ってきた。
リリアーヌの手には”枕”があった。
「……今、終わったわ」
シャルロットが言った。
――完――
人里離れた屋敷の一室に、ポーラ含む総勢八名の美少女たちが揃っていた。
テーブルの上には、血のごとき艶を見せている葡萄酒の残りが入ったゴブレットが置かれていたも、誰一人として手を伸ばす者はいなかった。
「そろそろよね」
「そうよ、あと少しのはずよ」
隣にいたシャルロットとリリアーヌの姉妹が囁きあう。
彼女たちだけでなく、ポーラも、いや、ここにいる美少女たち全員が長い夜の”終わり”を待ち望んでいた。
ポーラが溜息とともに体の重心を左に傾けた時、左太腿の内側がズキンと脈打った。
「大丈夫?」と気づいたシャルロットが小声で問う。
「ええ、傷口って血は止まっても、痛みは喘ぐように蘇ってくるものね。でも……きっと”これ”が最後の傷になるだろうから、まだ耐えられるわ」
極めて小声で答えたポーラは、はしたないとは思いつつも、自身のスカートを捲り上げた。
ポーラのスカートの中を見た美少女たちからは苦痛の呻きが漏れる。
彼女の白くすべらかな左内腿には、雷(いかずち)のような惨たらしい傷痕が走っていた。
そればかりか、右内腿や柔らかなふくらはぎに幾つもの傷痕が残っていた。
しかし、他の美少女たちも多かれ少なかれ、ポーラと同じような傷をその体にも心にも負っていた。
故意に傷をつけられていない者など誰一人としていなかったのだから。
些細な粗相すら”犯していないのに”、ある美少女は気絶するまで背中や尻を鞭打たれ続け、また別の美少女は膨らみかけた乳房の下を切り裂かれた。
処女の血が欲しい。
ただ、それだけの理由で。
自身の美貌の衰えを”ひしひし”とどころか、”これでもか”と感じずにはいられない危険な年頃に差し掛かりつつある、この屋敷の女主人は、金と身分に物を言わせ、近隣の村より貧しい生まれの娘たちを集めてきていた。
今から”そう遠くない昔”、ここより”そう遠くはないある国”で、とある伯爵夫人が自らの美しさのために、何百人もの若い娘を身の毛もよだつ拷問の末に殺害したという嘘か誠か分からぬ話をポーラも聞いたことがあった。
ポーラたちは命こそ直ちに取られはしなかったものの、親兄弟や法律からも隔離されたこの屋敷において、侍女として酷使されるだけでなく、死なない程度にじわじわと日々、痛められ続けてきた。
蘇った吸血鬼のごとき女主人の血絞りは、”少し前までは”ポーラに集中していた。
何もポーラが抜きん出た美少女であったからではない。
客観的に顔の造作だけを見たなら、シャルロットとリリアーヌの姉妹こそ、げっそりとやつれてしまってはいるものの、まさに天使の化身と言えよう。
女主人はポーラの顔をまじまじと見て、こう言ったのだ。
「今のお前は本当に憎たらしいほどに愛らしい。だが、お前には少しばかり残念な成長を遂げそうな兆しもそこはかとなく感じられる。私には真の美を見極める目があるのだ。どちらに大きく振れるか分からぬ”危険な年頃”のお前の美しさは、私がその絶頂期のうちに有効活用してやろう」
客人なども滅多に訪れない人里離れたこの屋敷において、花や景色、絵画や彫刻などよりも、鏡の中の自分自身だけを眺め続ける女主人に、果たして真の美を見極める目があるのか怪しいものであるが。
仮に、ポーラが残念な成長を遂げた――八本の美容液のうちの一本としての役割を果たせなくなった――としても、ここから生きて出られる保証はない。
自分だけが美しくありたい女主人が、自身の美の秘密を知っているポーラをこのまま無事に家に帰すわけがないであろう。
そして、屋敷内に男手がない――護衛も含め、男は極力、遠ざけられていた状況――にあったのは幸いであった。
女主人はこうも言っていた。
「お前たち若い娘は、男と見たなら、すぐに擦り寄って番(つがい)になろうとするものだ。隙あらばその脚を開きたがる”危険な年頃”だが、私はそうはさせない。お前たちのその若さも、肌も血も肉も全て私のためだけに存在しているのだから」と。
だから、それほど難しいことではなかったのだ。
ポーラたち全員が結託して、女主人の食事に、あるいは葡萄酒に、気づかれない程度の少量の毒を盛り続けるなんてことは。
数日前、ようやくその毒の効き目が現れたらしい。
発熱し、脈も乱れ、意識も朦朧とし始めた。
手に入るはずもない永遠の若さと美しさを追い求め続けた一人の加虐性変態性欲者は、ついにベッドから起き上がれなくなった。
この血にまみれた狂宴はもうすぐ終わるだろう。
今か今か、と、誰もが宴の”終わり”を待ち続けていた。
小声で何かを囁き合ったシャルロットとリリアーヌの姉妹が立ち上がり、すぐ隣の女主人の寝室へと歩いて行った。
痺れを切らした彼女たちは、”あとどれくらいかしら?”と様子を見に行ったのだろうとポーラは思っていた。
だが、この部屋に漂っていた重い沈黙をブクブクと泡立てるかのように、女主人のくぐもった呻き声が隣室から聞こえてきた。
ポーラの肌がゾゾッと粟立ち、心臓ばかりか体中の傷痕がドクンと脈打った。
呻き声はやがて止まった。
それは、時間にしたなら、ほんのわずかであったろう。
天使たちは戻ってきた。
リリアーヌの手には”枕”があった。
「……今、終わったわ」
シャルロットが言った。
――完――
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