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Episode2 伏線もオチもバレバレ! ツッコみ待ちのオムニバスホラー2品+エピローグ
Episode2-B 胸糞
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明美(あけみ)がその女に出会ったのは、妊娠七か月の時であった。
明美が仲の良い姉と一緒に生まれてくる子供のための物をたくさん購入した帰り道にて、道端の占い師の女が突然に声をかけてきたのだ。
右頬に黒々とした大きな二センチ大の黒子を持つ女の年齢は、明美たちの母親と同世代かと推測された。
「……あんた、お腹の子を絶対に産んじゃダメだよ。その子は皆に災いをもたらす。災いの種をあんたは宿しているんだ」
女の目は蛇のように冷たく、薄気味悪く、親の仇でも見るかのように明美を睨みつけてきた。
明美は膨らんだお腹をかばうように後ずさってしまったが、傍らの姉は女へと歩み出た。
「ちょっと、なんてことを言うんですか? 言っていいことと悪いことぐらい分からないんですか? しかも妊婦相手に。あなたの行動は、言葉の通り魔と同じですよ」
姉が明美とお腹の子をかばってくれた。
それに、縁もゆかりもない単なる通りすがりの者に不吉な言葉で心を切り付けられたからと言って、中絶する者(そもそも人工中絶できる時期はとっくに過ぎていたも)などいない。
やがて、明美は予定通り、元気な女の子を出産した。
明美と夫は、娘を”未来(みく)”と名付けた。
この未来という娘、何といえば良いのか……天から様々な美点を与えられて生まれてきたとしか思えない娘であった。
美人で成績優秀、真面目で優しく穏やかな性格であるばかりか、正義感も強く、当然のごとく彼女の周りには人が絶えることがなかった。
誰からも愛される娘。
明美と夫にとっても、そして結婚願望がなく独身を通している明美の姉にとっても、彼女の存在が、彼女に出会えたことが、幸せの種どころか幸せそのものであった。
娘が生まれる前、占い師の中年女にぶつけられた不快な戯言は、予言ではなく、やはり戯言でしかなかったのだ。
だが、十七歳の誕生日を目前にしたある日、未来は姿を消した。
下校途中の失踪。
あの真面目な未来が、将来の夢もしっかりと持っていた未来が、家出などするはずがない。
絶対に何らかの事件に巻き込まれたに違いない。
警察だけでなく、明美と夫も、明美の姉も、未来の友人たちも、近隣住民までもが協力しあい、未来の無事を祈り捜索を続けた。
けれども、長らく行方不明であった未来は、惨たらしい遺体となって明美たちの元へと帰ってきた。
なんてこと、なんてことだ!
未来を監禁、陵辱を繰り返したうえに、嬲り殺した犯人として逮捕されたのは、同年代の不良少年グループであった。
奴らと未来に面識なんてあるはずなどなく、たまたま通りかかった未来を暴行目的で拉致したのだ。
しかも、犯人グループの中には年子の三人兄弟がいて、三人ともが未来の殺害に関与していた。
この主犯格たちの家族が、未来の葬儀を終えた明美の家へと揃ってやって来た。
謝罪されても到底許せやしないが、謝罪に来たのかと思いきや、奴らは悲しみに暮れる明美たちを罵倒してきた。
「お宅の娘がうちの息子たちを誘惑したんだ!!」
「あんたらの娘が全部、悪いのよ!!」
こいつらは、本当に人間なのか!?
こいつらの体には、本当に人の血が流れているのであろうか!?
死者に鞭打つ、それも、これ以上ないほどの非業の死を遂げた死者を鞭打つどころの話ではない。
がなり立ててくる奴らの中に、”右頬に黒々とした大きな二センチ大の黒子を持つ老婆”がいた。
明美も姉も、老婆の顔立ちは忘れていても、その黒子だけは覚えていた。
そして、向こうも明美たちのことを覚えていた。
主犯格三人の祖母であった老婆は、涙を滝のように流し続けながら喚いた。
「だから、”あの時”、産むなと言ったろう! あんたの娘は災いの種だったんだよ! 私の可愛い孫たちに、いいや、私ら家族全員に災いをもたらしたんだ!」
(完)
明美が仲の良い姉と一緒に生まれてくる子供のための物をたくさん購入した帰り道にて、道端の占い師の女が突然に声をかけてきたのだ。
右頬に黒々とした大きな二センチ大の黒子を持つ女の年齢は、明美たちの母親と同世代かと推測された。
「……あんた、お腹の子を絶対に産んじゃダメだよ。その子は皆に災いをもたらす。災いの種をあんたは宿しているんだ」
女の目は蛇のように冷たく、薄気味悪く、親の仇でも見るかのように明美を睨みつけてきた。
明美は膨らんだお腹をかばうように後ずさってしまったが、傍らの姉は女へと歩み出た。
「ちょっと、なんてことを言うんですか? 言っていいことと悪いことぐらい分からないんですか? しかも妊婦相手に。あなたの行動は、言葉の通り魔と同じですよ」
姉が明美とお腹の子をかばってくれた。
それに、縁もゆかりもない単なる通りすがりの者に不吉な言葉で心を切り付けられたからと言って、中絶する者(そもそも人工中絶できる時期はとっくに過ぎていたも)などいない。
やがて、明美は予定通り、元気な女の子を出産した。
明美と夫は、娘を”未来(みく)”と名付けた。
この未来という娘、何といえば良いのか……天から様々な美点を与えられて生まれてきたとしか思えない娘であった。
美人で成績優秀、真面目で優しく穏やかな性格であるばかりか、正義感も強く、当然のごとく彼女の周りには人が絶えることがなかった。
誰からも愛される娘。
明美と夫にとっても、そして結婚願望がなく独身を通している明美の姉にとっても、彼女の存在が、彼女に出会えたことが、幸せの種どころか幸せそのものであった。
娘が生まれる前、占い師の中年女にぶつけられた不快な戯言は、予言ではなく、やはり戯言でしかなかったのだ。
だが、十七歳の誕生日を目前にしたある日、未来は姿を消した。
下校途中の失踪。
あの真面目な未来が、将来の夢もしっかりと持っていた未来が、家出などするはずがない。
絶対に何らかの事件に巻き込まれたに違いない。
警察だけでなく、明美と夫も、明美の姉も、未来の友人たちも、近隣住民までもが協力しあい、未来の無事を祈り捜索を続けた。
けれども、長らく行方不明であった未来は、惨たらしい遺体となって明美たちの元へと帰ってきた。
なんてこと、なんてことだ!
未来を監禁、陵辱を繰り返したうえに、嬲り殺した犯人として逮捕されたのは、同年代の不良少年グループであった。
奴らと未来に面識なんてあるはずなどなく、たまたま通りかかった未来を暴行目的で拉致したのだ。
しかも、犯人グループの中には年子の三人兄弟がいて、三人ともが未来の殺害に関与していた。
この主犯格たちの家族が、未来の葬儀を終えた明美の家へと揃ってやって来た。
謝罪されても到底許せやしないが、謝罪に来たのかと思いきや、奴らは悲しみに暮れる明美たちを罵倒してきた。
「お宅の娘がうちの息子たちを誘惑したんだ!!」
「あんたらの娘が全部、悪いのよ!!」
こいつらは、本当に人間なのか!?
こいつらの体には、本当に人の血が流れているのであろうか!?
死者に鞭打つ、それも、これ以上ないほどの非業の死を遂げた死者を鞭打つどころの話ではない。
がなり立ててくる奴らの中に、”右頬に黒々とした大きな二センチ大の黒子を持つ老婆”がいた。
明美も姉も、老婆の顔立ちは忘れていても、その黒子だけは覚えていた。
そして、向こうも明美たちのことを覚えていた。
主犯格三人の祖母であった老婆は、涙を滝のように流し続けながら喚いた。
「だから、”あの時”、産むなと言ったろう! あんたの娘は災いの種だったんだよ! 私の可愛い孫たちに、いいや、私ら家族全員に災いをもたらしたんだ!」
(完)
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