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シェヘラザードに蛇足
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「……だから、この世の全ての物語は渋谷のスクランブル交差点で交わるように出来ているのでした。めでたしめでたし」
「随分と現実的な場所なんだね?」
「俺の中では幻想的な場所だけどな?」
「蛇兄さんを拾った日に、そこで赤信号に引っかかったよね?覚えてる?」
「さあ?でもあの場所を渡り続けるのは奇跡に近いんよ」
「青信号を待つだけでしょ?」
「一つでも掛け違えたら、二度と青信号にはなんねえから」
「そっか……それは、ちょっとわかるかもしれない」
「この話はちゃんと覚えておけよ?」
その日の夜は夢を見た。
私は私のことを見下ろしていた。
夢の中の私は何故か酷く可愛くて、脆くて壊れそうで心配だった。
それなのに、私はその場から急に走り出すと、人波に揉まれて沈んでゆく。
ひとり取り残された私は、とても悲しくて辛いはずなのに、沈んでゆく私に手を差し伸べるわけでもなく、その様子をただただ見つめていた。
月も太陽も存在しない部屋で目を開けると、自分自身が愛おしい。そんな、初めてで、不思議な感情と一緒に夢から醒めた。そのせいか、いつもよりも胸の辺りが騒めいていたし、私はどうしても我慢ができなくなって、無防備に投げ出されていた蛇兄さんの薬指のタトゥーに自分の指をそっと絡めてみる。私の中指が蛇兄さんの薬指に絡み取られる様は、ひとりで妄想した「やっと蛇兄さんに食べてもらえた時」よりもずっと甘美で、この記憶だけあれば、この先しばらくは生きていけるような気がしていた。
「随分と現実的な場所なんだね?」
「俺の中では幻想的な場所だけどな?」
「蛇兄さんを拾った日に、そこで赤信号に引っかかったよね?覚えてる?」
「さあ?でもあの場所を渡り続けるのは奇跡に近いんよ」
「青信号を待つだけでしょ?」
「一つでも掛け違えたら、二度と青信号にはなんねえから」
「そっか……それは、ちょっとわかるかもしれない」
「この話はちゃんと覚えておけよ?」
その日の夜は夢を見た。
私は私のことを見下ろしていた。
夢の中の私は何故か酷く可愛くて、脆くて壊れそうで心配だった。
それなのに、私はその場から急に走り出すと、人波に揉まれて沈んでゆく。
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