ヤングケアラー美月恋愛編（一般作）

④

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　翔は弘子達と一緒に行動する美月が心配だった。でも、話しかけても無視されるし、メールをしても返ってこない、家に行っても追い返され、手の打ちようがなかった。それでも、美月の郵便ポストに手紙を入れて心配していること、何でも話してほしいことを伝えた。しかし、美月は翔が心配してくれればするほど、翔を守るために弘子の言うことを聞こうという思いが強くなる。
　弘子が教室で翔に話しかけてきた。翔が美月さんとのことを聞いても友達だからと言って美月の話題は避けていたから、何か他の話だろう。
「ねえ、翔、ここに、私や美恵、咲恵などの毛があるんだけど、翔はどの毛がいいと思う」　翔は変な質問だけど、コミュニケーションをしておいた方が美月さんのことを聞き出せるかも知れないので、相手になってあげることにした。
　一方、美月は見向きもしなかった。
「4本の毛があるけど、もう一人はだれの」
　弘子、美恵、咲恵の3人は分かるが、もう1本はだれだろう。明らかに、1本だけ、変わった髪の毛だ。翔は、個性が大事と考え、それを手で指した。
「もう、いい、行こう！」
　美恵と咲恵を連れて教室から出て行った。弘子はつや髪で綺麗な毛なので選んでくれるだろうと思っていたのに、翔が選んだのは、嫉妬している美月の毛だったから、弘子は不愉快だったのだ。
　昼休みに美月に作らせた弁当を弘子達は美月と屋上で食べた。美恵と咲恵は、弘子に誉めないでケチを付けるように言われていたが、つい本音が出てしまう。
「美月、これ、美味しい、どうやって味付けしたの」
「うん、美月、これも、柔らかさが丁度良くて、歯ごたえもいいよ、美月、料理、天才だね」
　弘子は、二人を睨んだ。二人は、それを見て、
「美月、美味しいのを期待していたのに、明日は、頼むよ」
「美月、適当にやっているのが、バレバレなんだよ、丁寧に作れ」
　二人は、そう言いながら、弘子の背中の方から見られないように、美月にウインクして親指を出し、うまい！という気持ちを伝えた。
　弘子は、わざと弁当のカラアゲをこぼして、
「美月、ごめん、落としちゃった、美月、もったいないから、今、食べて～」
　美月は、落ちたものを食べたくなかったので、下を向いてしまった。
　咲恵が怒りをあらわにして近寄ってきた。
「美月、弘子の言うことが聞けないの、私が食べさせてあげる、口、開けな！」
　咲恵が拾って、美月の座っている場所は近いのにスタートダッシュのように走って美月の前で、転んだ。
「あっ！　いてぇ～」
　弘子の落とした物を手に持っていたが、転んだ拍子で屋上から下に投げてしまった。咲恵が美月を睨みながら、
「美月が、さっさと食べないから落としちゃっただろう、おおいてぇ～」
　咲恵の膝から血が出ていた。すぐに、美月は持っていた消毒薬をつけて手当てをした。咲恵は耳元で、
「美月、食べなくて良かったよ」
　咲恵の演技だったが、怪我をしたのは弘子に信じてもらうためだった。
　弘子も心配して咲恵の所にきた。
「大丈夫、咲恵、美月、咲恵に土下座して謝れ」
「弘子、平気だよ、美月のバカに土下座されたら、気分が悪くなる、いいよ」
「美月、さっさと、ここに来て、やれよ！」
　美月は、怪我をしてまでも落としたものを食べさせないようにした咲恵に感謝の気持ちもあって、土下座した。
「咲恵さん、ごめんなさい、そして、ありがとう」
弘子は怒った顔で、
「美月、パンツ脱げ、放課後に返してやる、咲恵を怪我させた罰だ！」
　美月は、パンツを脱いで弘子に渡した。
　美恵が咲恵に、
「保健室行こう、美月の手当てでは、心配だ！」
　大丈夫と言っている咲恵を無理矢理に保健室に連れて行った。弘子と美月は教室に帰った。
　昼休みに弘子は男子に、
「今日は、特別に私の下着をちらっと見せてあげる、ほら～」
「わぉ～、すげぇ～かわいいじゃん、きれい・・・・」
　弘子は美月のパンツを見せて、男子に囲まれてはしゃいでいた。

　美恵達が教室に戻ってきたのは、授業が始まる少し前だった。そして、美恵は美月の机の近くに来た。
「おい、美月、お前の手当て、やっぱりダメじゃん！聞いているのか！」
　言葉とは裏腹に、制服の中に隠してあったものを手渡した。保健室から生理用のパンツを借りてきてくれたのだ。弘子に放課後までノーパンでいるように言われたのを聞いた美恵が気を利かしたのだ。美月は、トイレに行ってはき、授業に遅れずに参加した。
　弘子の友達の咲恵と美恵は、言葉では弘子に従っているが、美月を助けてくれるように変わってきた。それでも、美月は、翔のために弘子には逆らうことはできないのだ。