ヤングケアラー美月恋愛編（一般作）

②

②家に帰っていつものヤングケアラーの仕事が始まる。

　二人の服を脱がせて洗濯機へ，そして，二人にテレビを見せている間に食事の準備，今日は鍋物するので，まず，大根をイチョウ切りにして鍋に入れる。大根や白菜の芯は水が通るまでに時間がかかるので最初に入れたのだ。

「お姉ちゃん，お兄ちゃんが好きなテレビを見せてくれない」

　星奈ちゃんと太陽君のテレビのチャンネル争いだ。

「わかった～わかった～，お姉ちゃんから言うから～泣かないで・・・」

　鍋の火を弱火にして，体の向きを変えて太陽に星奈ちゃんへ譲るように話す美月，でも，男の子と女の子では見たい番組が違うので解決できず，ジャンケンということになって，やっと，落ち着いた。

　鍋に戻った美月は，スープを入れる，そして，白菜，肉団子，イワシ団子，水餃子をいれて，時間が立ったら出来上がり。

　二人と一緒に食事をする前にお風呂のスイッチを入れておく。食事が終わると食器は水桶にいれて，二人をお風呂に入れる。新しい下着の準備と明日の服も準備しておく。二人がお風呂を出ると食器を洗い，洗濯物の脱水，そして室内に乾す。

　美月は，体操の自主練習の前に明日の準備をしていた。

　ピンポ～ン　ピンポ～ン

　「こんばんは，翔です，やっぱり，来たよ，何か手伝うよ」

　美月は，ドアを開けずに，むしろ，開かないのにドアを押した。

「ありがとう～でも，帰って～，もう，きちゃ，ダメだよ，勉強してりっぱなお医者さんになって！」

　美月は泣いていた。翔にはわからなかったが涙が出ていたのだ。

　太陽君と星奈ちゃんも気がついてドアの所にきた。

「お兄ちゃんに会いたいよ，お姉ちゃん・・・・・」

「ダメ，帰って！」

　星奈ちゃんが美月の涙に気付いた。

「お姉ちゃん，泣いてるの，おばちゃんが会ったらダメって言ったから・・・・・・」

　ドアの外で翔に聞こえていた。

「美月さん，ちょっとだけ，話そう，開けて・・・」

「とにかく，今日は帰って！」

　美月の強い口調に翔は帰った。

　美月は，今日の体操の自主練習はやめて寝ようとした時に，あの時に返したはずの，１００万円が入っていたことに気付いた。これだけあればお母さんにもっと良い治療がしてあげられる。太陽や星奈にも，もっと・・・・・・・。

　美月はお金よりも、精神の豊かさを優先する決意をした。明日は学校が休みだから，二人を連れてお金を翔君の家に返しにいこうと決めた美月だった。