ヤングケアラー美月恋愛編（一般作）

１５ 突然の翔との別れ ①

１５　突然の翔との別れ

①美月のいつもの忙しい朝が始まった。

　朝食の準備をしながら天気が良いので布団を干し，昨日の室内洗濯物も出かける直前まで一度太陽の日に当てる。二人に　好き嫌いなく食べられるように食べ物の話をしながら食べさせて，布団や洗濯物を取り入れる。そして、二人が保育園へ持っていくものを保育園のバックに入れる。その前には，園の連絡帳を確認しておいた。

「そうだ，今日は可燃物のゴミ出し日，８時前に集積場へ持って行かないと」

「おねえちゃん，早く！早くしないと園のバス来ちゃうよ～」

　二人にせかせられながら何とか園バスに間に合い，今度は自分の高校へ行く準備の確認だ。この頃，レポートの提出が多い。昨日、勉強して書いたレポートの持ち物確認をする。制服に着替えて早く出かけても，また遅刻だ。職員室で適当に遅刻の理由を言って教室に入ってほっとする。

　１校時に遅刻したので，翔がノートをコピーして机の上に置いといてくれた。御礼を言うのも気まずいので，笑顔を向けるだけで済ませたが，昼休みに翔がやってきて，また告白してきた。

「ありがとう，翔君，考えさせてね」

　忙しい自分に付き合わせるのは悪いので承諾したくてもできない。そう，美月は翔に心が動いていた。

（私，翔君を好きなのかも・・・・・・・）

　美月は，自分を理解してくれている人が一人でもいることがうれしかった。弟や妹も翔には懐いている。このまま甘えてもいいのかな，美月が受け入れようと気持ちが流れているのだ。

　放課後，体操部の練習が終わってから病院に寄った。そして、院内学級で二人を引き取り，お母さんとも話してから帰宅すると，玄関前に見知らぬ女性が立っていた。

「こんにちは，あなたが美月さんね，翔の母です。突然，ごめんなさい。お願いがあってきたのよ，翔はお父さんの後を継いでお医者さんになるの，だから，もう，翔とは合わないでほしいの，翔は優しい子だから，それにつけこまないでほしいの，翔がきたら追い返して，他から聞いたらお家が大変とのこと，これ，お母さんのお見舞い金，１００万，大金だと思うでしょ，翔とは接触しないでほしいからよ、絶対に翔とは関わらないで，翔を誘惑しないで！はい！約束は守ってね」

　お金を何も分からない妹に渡して帰ろうとした。

「あのう・・・，すみませんでした。私，気をつけます。私が甘えて・・・・，とにかく，こんな大金は受け取れません」

「わかってちょうだい，翔は医者になるの，女の子と関わっていられないの，受け取って，そして，翔が話しかけても絶対に翔とは口も聞かないでほしいの！」

「お母さんの気持ちは良くわかりました。おかあさんの言う通りにします。だから，お金は持って帰ってください」

「そう，わかったわ，お金目当てではなさそうね，医者になる翔にとってあなたはふさわしくないの，お金は置いてくから、さようなら！」

　美月は少しでも翔と付き合えると思った自分の愚かさに悲しくなって涙した。

「お姉ちゃん，泣かないで，翔お兄ちゃんは大丈夫だよ，きっと・・・・」

　二人に励まされながら，家に入った美月だった。