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14 翔の壁ドン ①

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14 翔の壁ドン

①朝,星奈ちゃんの泣き声で美月は目が覚めた。

 星奈ちゃんに聞くと、知らない人に追いかけられる怖い夢を見たそうだ。美月は,星奈ちゃんを,抱きしめてギューしてあげた。

「大丈夫だよ,星奈、お姉ちゃんが絶対に守るから安心して,はい,笑顔~,お姉ちゃんは星奈の笑顔が好きなんだ,ねぇ,え・が・お~!」

 落ち着いた星奈ちゃんをもう一度寝せて,朝食の準備に取りかかった。

 今日は星奈の好きなものを料理してあげようと思い,起きるのはちょっと早かったけど,料理を始めた。火にかけておいて,見える所で洗濯物の片付けと,今日,持っていくものの区分け,そして,料理を続ける。気がつくと,台所に誇りが・・・・・・・,

「そうだ,忙しくて掃除もやったりしなかったりになってしまっていたんだわ」

 美月はコードレスの掃除機で,朝の準備の合間に台所の清掃も行った。顔の汗を拭き取って、清掃が終わってから気が付いた。食事前に埃が立ってしまうのに・・・・・・・,美月は、ほこりを見てすぐに行動してしまった自分を反省するのだった。

 幼児二人が起きてきて大忙しの朝の始まりだ。着衣,洗顔,食事,保育園,院内保育の準備,連絡帳の再度確認, そして、星奈ちゃんには髪の毛をかわいく結んであげる。最後に自分の高校への準備,昨日のことがあって不登校になりたい気分だが,美月には大切にしている体操の練習があるのだ。

 二人を笑顔で見送って学校へ急いで行った。
 学校の机の中が気になるのだ。机の中に袋に入った体操のレオタードとインナーが入っていた。特にメモはないが,陸上部の朝練の前に入れてくれたのだろう。それにしても,レオタードを持ち出した人の予想はついているけど,なぜ,翔が知っているのか,洗って引き出しに入れてくれたのか不思議だった。

 授業の直前に翔も教室に入ってきた。理由を聞くべきなのか,御礼が最初なのか,とにかく気まずい休み時間だ,結局,翔も話してくることもなく,時は過ぎていった。偶然にも二人を会わせたのは教室を移動する時の廊下だった。

「翔君,この空き教室に入って話そう」

「うん,わかった!」

「え~っと,何から話せばいいか・・」

「机の中に入れておいたけど受け取った?」

「ううん・・・,ありがとう,聞かないって言ったけど,だれなのか気になるな・・」

 美月と翔の会話に間があいた。

「だれが盗ったのかは言えないんだ,ごめん,でも,反省していると思うよ」

 美月は,朝,弘子達に別件で用事があって話しかけたけど,大笑いをしていて無視された。反省しているようには見えなかった。きつい口調で翔に言った。

「なぜ,反省しているってわかるの,人の心は見えないよ!!!」

 翔は真剣な顔つきで美月を見て右手で壁ドンをした。

「僕の心を見て,美月さんが好きだ!」

 美月が無言で翔を見ているうちに,翔は小走りで走っていってしまった。

「私は,翔君を・・・」

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