ヤングケアラー美月恋愛編（一般作）

８ ビデオでレオタードを追う翔 ①

８　ビデオでレオタードを追う翔
①
「翔君，この前に倒れた時の私の介抱，それから夕食の料理，それで，今度は練習に付き合わせてごめんなさい、本当に・・・」
　翔は美月と一緒にいられるのがうれしかった。しかも、まぶしい白いレオタード姿だ。
「ううん、いいよ、だって、僕は・・（美月さんが好きだから）」
　最後の方は声に出せなかった。
「えっ！　私、男の人にビデオで撮られるのは恥ずかしくて嫌だけど、お母さんは私の体操に期待してくれているの、そのお母さんの気持ちに応えたい、だから、はずかしいけどお願いします」
　美月は、翔にペコリと頭を下げた。
　美月は白いレオタードを見られる恥ずかしさをのりこえ、体操への情熱を燃やす。翔には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。翔も陸上練習で疲れているのに，お母さんのお願いで無理に付き合わせてしまっている。お母さんは美月の「体操」だけが生き甲斐だ。生きる勇気でもあり，夢，希望なのだ，そして美月もお母さんや家族のために尽くしながらも体操は続けなければと強い決意を持っている。
　美月は知らないが、美月に好意を持っている翔は，少しでも美月の役に立ち，そして何よりも側に入られることがうれしかった。
「大丈夫だよ，美月さん，僕は家で特にやることないから・・，それに、僕は美月さんが・・・いや、それで，何をすればいいの？」
　美月は、2階の自分の部屋からビデオカメラを持って来て、翔に渡した。
「固定カメラだと指先や足の伸ばしが鮮明に見られないから，なるべく私の体を拡大して写してほしいの，ただ・・・・・動きが速いところもあるから，翔君、無理しないでね」
　まずは，準備運動，補助運動，補強運動をして，バランスの練習を始めた。
　伸膝の両脚あるいは片脚立ちで重心を高くして，大きさをみせるバランスである。指先，目線に気をつけてバランスをとっていく。翔は一方向だけでなく，ぐるぐると回って映している。翔は美月の股も拡大して丸見えなので興奮してきたが、美月は練習に真剣だった。休んだ２日間を取り戻し，高校生活最後の年に良い成績をなんとしてもとりたいのだ！
　翔は美月に言われた目の位置や，その先の指先，足の位置や膝の曲がり具合など，映像に撮っている。そして，翔にとって美月の体操の練習は、妖精が舞いをしているかのように輝いて見えていた。