2 / 64
2 美月さんの家庭
しおりを挟む
2 美月さんの家庭
「お母さん,はい,お薬だよ,置くね」
「ありがとう,今日,学校は行ったのよね」
「大丈夫,心配しないで,ちゃんと,行ってるから」
美月は母子家庭で,さらにお母さんはうつ病になってしまっていた。
お母さんは,美月の父親が亡くなって再婚をした。そして,二人目の結婚相手との間に,5歳の「太陽」と,3歳の「星奈」がいる。しかし,先月,血の繋がっていなかった父は,他に好きな女の人が出来て,家を出ていってしまったのだ。
戸籍や近所からの見た目は両親がいることになっている。だから,母子手当が受け取れず,家計が苦しい。お母さんは,仕事疲れとショックで寝こみ,働いていた会社も辞めざるをえなかった。
社会は,こんな困った家庭に手を差し伸べてはくれない。お母さんは,そのままうつ病となり,薬を飲んで療養している。そのため,弟と妹の世話も含め,家事全般を高校3年生の美月がしなければいけない状況が突然やってきたのだ。
美月は、人ごとのように思っていた、タングケアラーになった。
令和2年度のヤングケアラーの実態に関する調査研究では、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査で、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態がある。
美月は、学校だけでなく、社会的な孤立の問題もあり、ヤングケアラーとして重い責任や負担が伴い、本人の方向性に影響が出るのが心配だ。
美月は、ある日を起点として家庭全般のことを日常的に行っていて苦痛に感じている。しかし、家庭内のプライベートな問題であることから支援が必要であったとしてもわからないのだ。
家族は絶対に私が守る! だって,私しかいないんだ。美月は優しく頑張り屋だった。だから,体操部では将来を期待されている存在で体育大学へ進学し,体操を続け,オリンピックに出たい夢を持っている。つい先日までの,美月の夢だ。
「太陽と星奈,保育園の連絡帳を見せて・・・・・・・・・・」
「お姉ちゃん,今,ゲームしてるから後にして,それより,夕食は,お腹すいた・・」
「わかったから,連絡帳出して,お姉ちゃんの言うこと,聞いて!」
二人の返事はなかった。そこで,次だ,夕食の準備をする。
ビニール手袋をして,大根を切る。
トントントントン~~~~~~~~~~~~
「痛い!」
ビニール手袋の指の先が伸びていて,自分の手を切ってしまったのだ。血が出たので手袋をとって消毒,また,すぐ食事の仕度だ。美月は,自分が情けなくなってしまう。体操をやらせてもらっていて,私は,こんなこともできないんだ・・・。
「お姉ちゃん,腹,減ったよ~~~~~~」
寝ていたお母さんが,
「太陽,美月は魔法使いじゃないから,すぐにはできないよ,待っててね」
太陽と星奈は,ゲームをしたり,テレビを見ている。
美月は,気を取り直して,料理を慎重に作り始めた。
「お姉ちゃん,まだ,もう・・」
「ねえ,太陽,星奈,お願い連絡帳を見せて」
美月は,料理を作りながら,その合間に連絡帳を見る気なのだ。
保育園での造形活動は家庭から持っていくことが多い,また,集金もあるのだ。保育園で必要なものはすべて美月が用意して持たせる。お金は美月が直接,園に持って行き,お母さんのことを聞かれても本当のことは話せず,言葉をにごしている。貯金をくずし,児童手当を計算しても,お金が足りない。そこで,今日,美月は学校を休み保育園に持っていくお金を日払いでもらえる仕事場で働いて支払ったのだ。働いて,その日にお金をもらえる仕事を選んだのだ。やはり,明日も,学校を休んで働かなければ・・。
お母さんは,体が重く,動くと頭痛がする。それでも子ども達のことを心配するので,美月は,お母さんには学校を休んで働いたことは言わず,安心させている。
翔の持ってきてくれたプリントは,洗濯も含め,家事すべてが終わった真夜中過ぎに見て,課題はやった。でも,プリントを学校に持っていけず,明日もお母さんに秘密で働くのだ。
自分の夢,学校,その前に,現実がある。私が家庭のことをやらなければいけない! 長女の私が家族の面倒を見なければ・・,美月はだれにも相談せず,深く思い詰めていた。
メールの着信音が鳴った。今日、プリントを持って来てくれた翔だった。
(今日は突然、ごめん。明日は学校で会えるよね、おやすみ)
翔と話したのは初めてだったから、こうしてメールをくれたのは不思議だけどうれしかった。孤独の扉が少し開いた気持ちだ。
「お母さん,はい,お薬だよ,置くね」
「ありがとう,今日,学校は行ったのよね」
「大丈夫,心配しないで,ちゃんと,行ってるから」
美月は母子家庭で,さらにお母さんはうつ病になってしまっていた。
お母さんは,美月の父親が亡くなって再婚をした。そして,二人目の結婚相手との間に,5歳の「太陽」と,3歳の「星奈」がいる。しかし,先月,血の繋がっていなかった父は,他に好きな女の人が出来て,家を出ていってしまったのだ。
戸籍や近所からの見た目は両親がいることになっている。だから,母子手当が受け取れず,家計が苦しい。お母さんは,仕事疲れとショックで寝こみ,働いていた会社も辞めざるをえなかった。
社会は,こんな困った家庭に手を差し伸べてはくれない。お母さんは,そのままうつ病となり,薬を飲んで療養している。そのため,弟と妹の世話も含め,家事全般を高校3年生の美月がしなければいけない状況が突然やってきたのだ。
美月は、人ごとのように思っていた、タングケアラーになった。
令和2年度のヤングケアラーの実態に関する調査研究では、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査で、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態がある。
美月は、学校だけでなく、社会的な孤立の問題もあり、ヤングケアラーとして重い責任や負担が伴い、本人の方向性に影響が出るのが心配だ。
美月は、ある日を起点として家庭全般のことを日常的に行っていて苦痛に感じている。しかし、家庭内のプライベートな問題であることから支援が必要であったとしてもわからないのだ。
家族は絶対に私が守る! だって,私しかいないんだ。美月は優しく頑張り屋だった。だから,体操部では将来を期待されている存在で体育大学へ進学し,体操を続け,オリンピックに出たい夢を持っている。つい先日までの,美月の夢だ。
「太陽と星奈,保育園の連絡帳を見せて・・・・・・・・・・」
「お姉ちゃん,今,ゲームしてるから後にして,それより,夕食は,お腹すいた・・」
「わかったから,連絡帳出して,お姉ちゃんの言うこと,聞いて!」
二人の返事はなかった。そこで,次だ,夕食の準備をする。
ビニール手袋をして,大根を切る。
トントントントン~~~~~~~~~~~~
「痛い!」
ビニール手袋の指の先が伸びていて,自分の手を切ってしまったのだ。血が出たので手袋をとって消毒,また,すぐ食事の仕度だ。美月は,自分が情けなくなってしまう。体操をやらせてもらっていて,私は,こんなこともできないんだ・・・。
「お姉ちゃん,腹,減ったよ~~~~~~」
寝ていたお母さんが,
「太陽,美月は魔法使いじゃないから,すぐにはできないよ,待っててね」
太陽と星奈は,ゲームをしたり,テレビを見ている。
美月は,気を取り直して,料理を慎重に作り始めた。
「お姉ちゃん,まだ,もう・・」
「ねえ,太陽,星奈,お願い連絡帳を見せて」
美月は,料理を作りながら,その合間に連絡帳を見る気なのだ。
保育園での造形活動は家庭から持っていくことが多い,また,集金もあるのだ。保育園で必要なものはすべて美月が用意して持たせる。お金は美月が直接,園に持って行き,お母さんのことを聞かれても本当のことは話せず,言葉をにごしている。貯金をくずし,児童手当を計算しても,お金が足りない。そこで,今日,美月は学校を休み保育園に持っていくお金を日払いでもらえる仕事場で働いて支払ったのだ。働いて,その日にお金をもらえる仕事を選んだのだ。やはり,明日も,学校を休んで働かなければ・・。
お母さんは,体が重く,動くと頭痛がする。それでも子ども達のことを心配するので,美月は,お母さんには学校を休んで働いたことは言わず,安心させている。
翔の持ってきてくれたプリントは,洗濯も含め,家事すべてが終わった真夜中過ぎに見て,課題はやった。でも,プリントを学校に持っていけず,明日もお母さんに秘密で働くのだ。
自分の夢,学校,その前に,現実がある。私が家庭のことをやらなければいけない! 長女の私が家族の面倒を見なければ・・,美月はだれにも相談せず,深く思い詰めていた。
メールの着信音が鳴った。今日、プリントを持って来てくれた翔だった。
(今日は突然、ごめん。明日は学校で会えるよね、おやすみ)
翔と話したのは初めてだったから、こうしてメールをくれたのは不思議だけどうれしかった。孤独の扉が少し開いた気持ちだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
釣りガールレッドブルマ(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!
「羊のシープお医者さんの寝ない子どこかな?」
時空 まほろ
児童書・童話
羊のシープお医者さんは、寝ない子専門のお医者さん。
今日も、寝ない子を探して夜の世界をあっちへこっちへと大忙し。
さあ、今日の寝ない子のんちゃんは、シープお医者んの治療でもなかなか寝れません。
そんなシープお医者さん、のんちゃんを緊急助手として、夜の世界を一緒にあっちへこっちへと行きます。
のんちゃんは寝れるのかな?
シープお医者さんの魔法の呪文とは?
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。
【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~
丹斗大巴
児童書・童話
どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
家族のきずなと種を超えた友情の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる