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4.ただの受けではなさそうです!2

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 2人はかとなく全身ずぶ濡れ状態で、両者の髪先から滴り落ちる水滴が光に煌めいて艶かしい。

 さらに言えば湖の上には裸の上半身しか出ていないため、真昼間の屋外で何か見てはいけないものを見ている気分になってモゾモゾしてくる。

「ぶっっっっ!!!!」

 あまりの衝撃に、リーゼはバチーンと高らかな音を響かせながら自身の鼻を押さえて後ろに倒れ込んだ。

「えっ!? おい、どうした!?」

「リーゼちゃん!?」

 ギョッとした様子の2人が、目を見張ってバシャバシャと水音を響かせながら駆け寄ってくる。

「大丈夫?」

「…………お前、笑ってねーか…………?」

 覗き込んでくる2人の気配と声音は、両者の表情を想像するに容易い。

ーーこれ、知ってます!! 何だったかしら、そう、あれです!! いっそわざとですよねって突っ込みたくなる【誘い受け】ってやつですねっ!!?

 鼻どころか、にやけを堪えられない口元と目元すべてを何としてでも隠さないといけなくなる。

 リーゼは草の上で顔面を両手で覆いながら横向きにゴロンとまるまって小刻みに震えた。貴族令嬢などとヘソで茶を沸かせる光景である。

「す、すみません、大丈夫なのでどうぞ続きを……っ!」

「……続きってなんだ」

 意味がわからないけれど確実に何かよくないことが起こっていることを察知してイヤそうに顔を歪めるアッシュに、笑顔を浮かべながらも少し困惑気味なレオ。そして別次元ではぁはぁと荒い息を押し殺すことに必死なリーゼ。

「ん? おい、レオ?」

 何か気になるアッシュの声が聞こえた気がして、鼻血とか出てないかしらと本気で心配しつつも、リーゼは近寄ってくる誰かの気配を察知してそうっと手のひらをどかす。

 指の隙間から漏れ見えるキラキラとした金色は陽の光かしらなんて、先ほどの光景を悠長に反芻しながら両手をどかそうとすると、なぜか両手首を誰かに掴まれた。

「ん…………?」

 思わず目が点になりつつも、横向きのままにリーゼが目前へと視線を移せば、そこには水に濡れて色気が増しているレオの、目が潰れそうな破壊力のご尊顔が。

「んんっっ!?」

 思わずピシリと固まるリーゼに、リーゼのそばに寄り添うように転がったレオが笑顔で口を開く。

「何か1人で楽しそうなんだよねぇ、リーゼちゃん。僕にもその楽しいこと、教えて欲しいな?」

 水によって潤み度増幅中の吸い込まれそうな翠の瞳で見つめられて、リーゼの脳内はショートする。

「そ、そ、そ、そ、そんな滅相もないですっっっ!!!!」

 ぎゃあと飛びすさりたいのに両手首はしっかりと男性の力で掴まれていて、びくともしないことに更なるパニックが襲う。

「こら、レオ!! 嫁入り前だぞ!!」

 呑気な感じで苦言を呈するアッシュに、ほら嫁が怒ってますよ!! なんて言いたいのに言えなくて、リーゼはどくどくと先ほどまでとは別の意味で鳴る胸を持て余す。

「……まぁ仕方ないか。じゃぁほら、暑いし、リーゼちゃんも足首くらい一緒に浸かろうよ。大丈夫、姑みたいにうるさいアッシュが黙ってればバレないよ」

「お前ケンカ売ってるだろ……っ!!」

 上等だ!! とギリギリとしながらぷんぷんと怒るアッシュを意に介さず、レオはリーゼの身体をいとも簡単に引き起こす。

「さ、行こ」

 上半身裸でずぶ濡れでも、十二分に王子様みたいにキラキラとしたレオにそのまま手を引かれて、リーゼは未だどきどきと高鳴る胸を持て余して1人考える。

 アッシュお兄さまを陥落させるレオ様、恐るべし……っっ!!! とーー。
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