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第6話 光の神ラバスと闇の神バルス
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うち、とても弱い。
うち、何のために生きているかわからない。
うち、優しい家に助けられたけど、結局は1人になる。
うち、ゴブリン3兄弟に育てられた。
「ねぇ、ジャスカはなんで緑色の肌をしているの?」
うちはそう尋ねる事しかできなかった。
「そうだな、緑の人間だからさ!」
「そうなの?」
「今日でバナッシュは13歳になる。一端のお姉さんじゃねーか」
「デャスカはなんでそんなに小さいの? うちより小さい」
「それはな、緑色でまだまだ成長不足の人間だからさ!」
「あまりからかう物ではないですぞ、ジャスカにデャスカよ」
「ブャスカの兄貴は優しいからなぁ、それでこそ長男坊の緑色の人間さ!」
「なんでうちは、緑色の人間じゃないの?」
「それはな、お前が俺達ゴブリンじゃなくな、人間だからさ」
ブャスカの兄貴がそう言った。
ジャスカ、デャスカ、ブャスカ、それが家族だった。
うちはいつの間にかこのゴブリンと呼ばれる3兄弟の家族に恵まれた。
それが、うちの大事な人達だった。
人ではないのかもしれないけど。
同じ生き物だと思っていたんだ。
「おい、まじかよ」
ジャスカが叫んだ。
彼が指さす方向は、うち達の家があった方角だった。
そこから灰色の曇った煙が空目掛けて伸びていた。
まるで空に向かって蛇が髑髏を撒いているようだった。
煙はどんどん大きくなっていって、海の方角まで流れて行っていた。
あちらの方角はギルムザ港があった方角だったはず。
うちの小さな小さな記憶の片隅にあったのはなんだっけ。
思い出すことが出来ない。
とても痛い記憶だった気がするよ。
「家が燃えてんじゃねーかよ」
ジャスカが叫んだ。
ジャスカの次男坊はいつだって叫ぶ。
デャスカの三男坊はいつだって小ぢんまりとしている。
「おい、ゴブリンが一端に人間の真似事か?」
1人の男が立っていた。
とても怖そうな人だった。
彼の体の周りには光ではなく闇が纏いついていた。
うちは小さなころから人の体にまとわりつく光が見えていた。
光は色ではなく、輝きだった。
輝きは感情の起伏で色々な輝きを見せた。
知っている色ではないのでなんと形容すればいいか分からなかった。
それでも声が聞こえるんだ。
【警告 勇者グリングシャです。ゴブリン3兄弟が殺される可能性が100%です】
「ふざけないでバルス!」
【何度言ったたら分かるのですか、私は光の神ラバス、闇の神バルスではないと】
「うちはあなたが光の神だとは思えない。ジャスカ、デャスカ、ブャスカの事を悪く言うから」
【それはゴブリンだからです。ゴブリンは人間を殺しますよ】
「3人はそんな事しないんだから」
「さっきから独り言の激しいお嬢さんだな」
【警告、勇者グリングシャにあなたが殺される可能性1パーセント】
ジャスカが棍棒を腰布から取り出すと。
腰を低くして勇者グリングシャに向き直った。
デャスカは背中に担いであった大きな弓を取ると。
ゆったりとした動作で構えた。
ブャスカは右腰にさしてある杖を引き抜くと、杖を大振りに構えた。
うちはいつもの3兄弟の構えを見て覚えていた。
でも、うちにはまだまだ筋肉が足りなかった。
棍棒も弓も杖も持つ事が出来ない。
でも、3人の武器が大きすぎると言う事もあるのだろうけど。
何かが右頬をかすった。その瞬間、ジャスカの首が落下した。
ジャスカの首が落ちた。
勇者グリングシャの右手には剣が握られていた。
「うそだろ、ジャスカあああああああ」
そう叫んだデャスカの右腕と左腕が消し飛んだ。
勇者グリングシャの左手から解き放たれた魔法だろう。
光魔法のようだった。
そして問答無用とばかりにナイフが投擲されてデャスカの小さな体の心臓を突き刺していた。
緑色の肉体をしているのに血は真っ赤だった。
「に、逃げろバナッシュ」
そう言ったブャスカの全身が骨になった。
何が起きたか理解出来なかった。
「浄化しただけさ。魔石をな」
勇者グリングシャはにへらと笑っている。
彼は、うちの大事な家族を皆殺しにしたのだ。
うちの体の中でふつふつと何かがフラッシュバックする。
そうだ。そうだ。
記憶が鮮明によみがえる。
父親がいた。母親がいた。
2人は賢者だった。
でも、この男が、この男が、うちのパパとママを殺した。
ギルムザ港の入り江で彼は両親と口論して殺していた。
何が起きたのかは理解出来なかったけど。
剣がどうたらと言っていた気がする。
その後うちは逃げた。
逃げて逃げて、ゴブリン3兄弟と出会ったんだけど。
こうして勇者グリングシャと出会った。
【警告 正体がばれると殺される可能性が100%になります】
「はぁはぁはぁ」
呼吸が荒くなる。
息が苦しくなる。
こんな所で死んでられない。
もっと強くなって強くなって、あいつをぶちのめしたい。
「お前、どこかで見た顔だな、とても小憎たらしいガキだが生かしておいてやろう、俺は忙しいからな」
そんな事を言って、彼は歩き続けている。
「そうだ。お前等が集めていた魔石、全部燃やしちまった。あんなもんは浄化したほうが良いのさ、でないと色々と問題が発生するからなぁ、煙が海を押し上げて、リヴァイアサンでも怒り狂うかもしれんなぁ、はっはっは」
「こんのぉおぉ」
【警告 死にますよ】
うちは歯を食いしばって、右手と左手を握りしめて。
怒りが爆発してしまいそうになるのを必死で堪えた。
必死で、心の奥底から心の中から何か闇のようなものを抱えていた気がする。
「殺してやるぅ」
そう叫びたかった。
でももう彼はいなかった。
そうしてうちはギルムザ港に辿り着いた。
記憶が思い出すように元の家に向かったけど、そこはもう廃墟になっていて、何も残っていなかった。
思い出の品すら何も無かった。
そうして生きる希望を失くして、路地裏で死にかけていたんだ。
「おい、まじかよ、こいつ売れるんじゃねーか」
奴隷商人に捕まりそうになったけど。運命っておかしなものだと思ったよ。
うち、何のために生きているかわからない。
うち、優しい家に助けられたけど、結局は1人になる。
うち、ゴブリン3兄弟に育てられた。
「ねぇ、ジャスカはなんで緑色の肌をしているの?」
うちはそう尋ねる事しかできなかった。
「そうだな、緑の人間だからさ!」
「そうなの?」
「今日でバナッシュは13歳になる。一端のお姉さんじゃねーか」
「デャスカはなんでそんなに小さいの? うちより小さい」
「それはな、緑色でまだまだ成長不足の人間だからさ!」
「あまりからかう物ではないですぞ、ジャスカにデャスカよ」
「ブャスカの兄貴は優しいからなぁ、それでこそ長男坊の緑色の人間さ!」
「なんでうちは、緑色の人間じゃないの?」
「それはな、お前が俺達ゴブリンじゃなくな、人間だからさ」
ブャスカの兄貴がそう言った。
ジャスカ、デャスカ、ブャスカ、それが家族だった。
うちはいつの間にかこのゴブリンと呼ばれる3兄弟の家族に恵まれた。
それが、うちの大事な人達だった。
人ではないのかもしれないけど。
同じ生き物だと思っていたんだ。
「おい、まじかよ」
ジャスカが叫んだ。
彼が指さす方向は、うち達の家があった方角だった。
そこから灰色の曇った煙が空目掛けて伸びていた。
まるで空に向かって蛇が髑髏を撒いているようだった。
煙はどんどん大きくなっていって、海の方角まで流れて行っていた。
あちらの方角はギルムザ港があった方角だったはず。
うちの小さな小さな記憶の片隅にあったのはなんだっけ。
思い出すことが出来ない。
とても痛い記憶だった気がするよ。
「家が燃えてんじゃねーかよ」
ジャスカが叫んだ。
ジャスカの次男坊はいつだって叫ぶ。
デャスカの三男坊はいつだって小ぢんまりとしている。
「おい、ゴブリンが一端に人間の真似事か?」
1人の男が立っていた。
とても怖そうな人だった。
彼の体の周りには光ではなく闇が纏いついていた。
うちは小さなころから人の体にまとわりつく光が見えていた。
光は色ではなく、輝きだった。
輝きは感情の起伏で色々な輝きを見せた。
知っている色ではないのでなんと形容すればいいか分からなかった。
それでも声が聞こえるんだ。
【警告 勇者グリングシャです。ゴブリン3兄弟が殺される可能性が100%です】
「ふざけないでバルス!」
【何度言ったたら分かるのですか、私は光の神ラバス、闇の神バルスではないと】
「うちはあなたが光の神だとは思えない。ジャスカ、デャスカ、ブャスカの事を悪く言うから」
【それはゴブリンだからです。ゴブリンは人間を殺しますよ】
「3人はそんな事しないんだから」
「さっきから独り言の激しいお嬢さんだな」
【警告、勇者グリングシャにあなたが殺される可能性1パーセント】
ジャスカが棍棒を腰布から取り出すと。
腰を低くして勇者グリングシャに向き直った。
デャスカは背中に担いであった大きな弓を取ると。
ゆったりとした動作で構えた。
ブャスカは右腰にさしてある杖を引き抜くと、杖を大振りに構えた。
うちはいつもの3兄弟の構えを見て覚えていた。
でも、うちにはまだまだ筋肉が足りなかった。
棍棒も弓も杖も持つ事が出来ない。
でも、3人の武器が大きすぎると言う事もあるのだろうけど。
何かが右頬をかすった。その瞬間、ジャスカの首が落下した。
ジャスカの首が落ちた。
勇者グリングシャの右手には剣が握られていた。
「うそだろ、ジャスカあああああああ」
そう叫んだデャスカの右腕と左腕が消し飛んだ。
勇者グリングシャの左手から解き放たれた魔法だろう。
光魔法のようだった。
そして問答無用とばかりにナイフが投擲されてデャスカの小さな体の心臓を突き刺していた。
緑色の肉体をしているのに血は真っ赤だった。
「に、逃げろバナッシュ」
そう言ったブャスカの全身が骨になった。
何が起きたか理解出来なかった。
「浄化しただけさ。魔石をな」
勇者グリングシャはにへらと笑っている。
彼は、うちの大事な家族を皆殺しにしたのだ。
うちの体の中でふつふつと何かがフラッシュバックする。
そうだ。そうだ。
記憶が鮮明によみがえる。
父親がいた。母親がいた。
2人は賢者だった。
でも、この男が、この男が、うちのパパとママを殺した。
ギルムザ港の入り江で彼は両親と口論して殺していた。
何が起きたのかは理解出来なかったけど。
剣がどうたらと言っていた気がする。
その後うちは逃げた。
逃げて逃げて、ゴブリン3兄弟と出会ったんだけど。
こうして勇者グリングシャと出会った。
【警告 正体がばれると殺される可能性が100%になります】
「はぁはぁはぁ」
呼吸が荒くなる。
息が苦しくなる。
こんな所で死んでられない。
もっと強くなって強くなって、あいつをぶちのめしたい。
「お前、どこかで見た顔だな、とても小憎たらしいガキだが生かしておいてやろう、俺は忙しいからな」
そんな事を言って、彼は歩き続けている。
「そうだ。お前等が集めていた魔石、全部燃やしちまった。あんなもんは浄化したほうが良いのさ、でないと色々と問題が発生するからなぁ、煙が海を押し上げて、リヴァイアサンでも怒り狂うかもしれんなぁ、はっはっは」
「こんのぉおぉ」
【警告 死にますよ】
うちは歯を食いしばって、右手と左手を握りしめて。
怒りが爆発してしまいそうになるのを必死で堪えた。
必死で、心の奥底から心の中から何か闇のようなものを抱えていた気がする。
「殺してやるぅ」
そう叫びたかった。
でももう彼はいなかった。
そうしてうちはギルムザ港に辿り着いた。
記憶が思い出すように元の家に向かったけど、そこはもう廃墟になっていて、何も残っていなかった。
思い出の品すら何も無かった。
そうして生きる希望を失くして、路地裏で死にかけていたんだ。
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