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第2章 邪教の国
第32話 爺や
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季節は夏から秋に切替わろうとしていた。
草や葉が木の葉色に染まりつつあった。
風に吹かれて、木々から木の葉が舞い降りる姿は、異世界でも元いた世界でも同じ景色なのだなと感じた。
川が見えてきた。
正確には川の城壁だ。
川そのものが立体的になっている。
魔法の力のようだ。
川の城門が見つかる。
門番には1人のエルフが立っていた。
耳はとんがっていて、草と木で作られた鎧を着用していた。
「こんにちは」
「お前は!」
どうやら気付かれていたようだ。
あれだけエルフ王とその息子と兵士達をこっぴどく扱ったのだから、嫌われても可笑しくないだろう。
「お通りください、デルサス様がお待ちです」
「は?」
「先程、鳥便にてエルフ姫様から伝言を受け取っております。デルサス様は爺やとよばれているもので、ご内密にここを通してやれと言われております」
「助かります」
1人のエルフ兵士が俺を引き連れて、エルフ王国の路地裏を歩く。
人気がない所を歩きながら、1軒の木造小屋が見つかる。
そこの周囲には古代文字のような文字が無数に張り巡らされている。
どうやら結界の役割を表しているようだ。
「あなたにはこれがただの木造小屋に見えるでしょうね」
「はい」
「それが、デルサス様の御才覚があるという証なのです」
エルフの兵士が扉を開けた。
その瞬間、緑の香りがした。
そこは草原であった。
ただの木造小屋の中は無限に広がる草原であった。
草原の真上には木々が立ち並んでいる。
巨大な木々のツリーハウスの中と言っても良いだろう。
ただし、草原が広がっているため、ツリーハウスの中に草原がという、少し頭がこんがらがってしまったが。
木造のテーブルと、木造の椅子が2脚置かれてあった。
対面には1人の老人が長い白髭を撫でながらこちらを見ていた。
眉毛がとても白くなっており、とても濃かった。眼が隠れてしまう程だった。
何より、腰は曲がっておらず、すらりと伸びていた。
一直線にこちらを貫くかと思える視線。
「やぁ、ルボロス・フィールド君、わしはデルサスだ。エルフ姫には爺やと呼ばれておるのう、かつては、ファーストと共に冒険していて、側近だったんじゃがな、さてと、お礼を述べさせてもらおう、エルフ姫の心を開いてくれてありがとう」
デルサスという爺やは軽く頭を下げた。
あのエルフ王の傲慢ぶりとは全く違っていた。
「さてと、一杯の紅茶でもどうかのう、エルフ姫の話によるとお主は、強くなりたいそうじゃのう、魔王ボスボスに両腕と両足を奪われたそうじゃて」
「はい、そうなのですが」
「そなたの魂はもう高齢と言っていいのだろうな、しかし、肉体は11歳じゃて、ギャップを埋める方法も神目スキルで習得しておるのだろうしな、さらに強くなるにはどうしたらいいものかのうと考えるじゃろうが、まずは一杯の紅茶じゃて、ブロッサムよ持ってきなされ」
「はい、デルサス様」
ブロッサムと呼ばれたエルフ兵士が紅茶が入ったティーポットを持ってきた。
草木の模様が入ったカップに冷たい紅茶を注いでくれた。
赤い液体に、ほのかな香りが鼻に入ってくる。
「この紅茶はのう、わしの畑で育てた茶葉じゃて、エルフ王は大嫌いじゃが、お主はどうかのう?」
とりあえず、ゆっくりと口の中に含んだ。
病院の中で飲んでいた飲み物がある。
1つは炭酸飲料だった。そして1つが元彼女がよく作ってくれた紅茶であった。
その彼女は退院していなくなってしまって疎遠になったが。
今思えば、彼女も不思議な力を持っていた。
それは、意識そのものを飛ばす事だったはずだ。
例えば肉体があって、そこから魂そのものを飛ばして、肉体には別の魂が入るが、飛んだ魂が戻ってくると、入っている魂が出ていくという仕組み、二重人格と呼ばれていたはずだ。
そういえば俺はその彼女の顔が思い出せない。
確か赤毛だったはずなんだけど、顔がぼやけてしまう。
まるで最後に握手した時に、彼女の手から彼女の意識を奪われた感じだ。
涙が流れていた。
この紅茶の味を知っている。
彼女がよく入れてくれた味とそっくりだった。
「この、紅茶をお気に召してくれたか、これはな、ある村娘が作り方を教えてくれたものじゃ、彼女はある意味、生きていないがのう」
「そうですか」
「さてと、美味しい紅茶の後は、会話といこうかのう、強くなる方法じゃが、ゼフダスとセネレスがカギを握っておるのは確かじゃな」
「なぜそこまで分かるんですか?」
「はむはむ? それはのう、ゼフダスは魔法の弟子じゃからじゃ」
「そうでしたか、まったくの予想外です」
「まぁ内緒じゃがな、人間の姿に変身して指導したからのう、あ奴からしたら、デルサスというくそ生意気な爺にしか映っておらんでな」
「それは物凄く笑えると思います」
「さてと、お主はどうやら職業属性を奪えるみたいじゃのう、わしから職業を奪っては見ぬか」
「どういう事でしょうか」
「わしはそろそろ職業属性を転職したいんじゃよ、同じ職業ばかりでは飽きるじゃろう?」
「ですがあなたの職業は」
今までその光を抑えていたのだろう、次の瞬間、光は爆発的に輝いた。
ツリーハウス、いやそう草原中が輝く。
眼を開けていられない。
そこには【大賢者】属性が表示されており【天】属性があった。
職業属性の大賢者を手に入れれば、莫大な力を手に入れられるだろう、それにエレメンタル属性の【天】とはどういう意味なのかまったく頭の回転が追い付かない。
「さてと、覚悟は出来たかのう?」
爺やの眉毛で隠されている瞳がギラリと光った。
目そのものが光だった。
これがデルサスという男の存在意義だった。
草や葉が木の葉色に染まりつつあった。
風に吹かれて、木々から木の葉が舞い降りる姿は、異世界でも元いた世界でも同じ景色なのだなと感じた。
川が見えてきた。
正確には川の城壁だ。
川そのものが立体的になっている。
魔法の力のようだ。
川の城門が見つかる。
門番には1人のエルフが立っていた。
耳はとんがっていて、草と木で作られた鎧を着用していた。
「こんにちは」
「お前は!」
どうやら気付かれていたようだ。
あれだけエルフ王とその息子と兵士達をこっぴどく扱ったのだから、嫌われても可笑しくないだろう。
「お通りください、デルサス様がお待ちです」
「は?」
「先程、鳥便にてエルフ姫様から伝言を受け取っております。デルサス様は爺やとよばれているもので、ご内密にここを通してやれと言われております」
「助かります」
1人のエルフ兵士が俺を引き連れて、エルフ王国の路地裏を歩く。
人気がない所を歩きながら、1軒の木造小屋が見つかる。
そこの周囲には古代文字のような文字が無数に張り巡らされている。
どうやら結界の役割を表しているようだ。
「あなたにはこれがただの木造小屋に見えるでしょうね」
「はい」
「それが、デルサス様の御才覚があるという証なのです」
エルフの兵士が扉を開けた。
その瞬間、緑の香りがした。
そこは草原であった。
ただの木造小屋の中は無限に広がる草原であった。
草原の真上には木々が立ち並んでいる。
巨大な木々のツリーハウスの中と言っても良いだろう。
ただし、草原が広がっているため、ツリーハウスの中に草原がという、少し頭がこんがらがってしまったが。
木造のテーブルと、木造の椅子が2脚置かれてあった。
対面には1人の老人が長い白髭を撫でながらこちらを見ていた。
眉毛がとても白くなっており、とても濃かった。眼が隠れてしまう程だった。
何より、腰は曲がっておらず、すらりと伸びていた。
一直線にこちらを貫くかと思える視線。
「やぁ、ルボロス・フィールド君、わしはデルサスだ。エルフ姫には爺やと呼ばれておるのう、かつては、ファーストと共に冒険していて、側近だったんじゃがな、さてと、お礼を述べさせてもらおう、エルフ姫の心を開いてくれてありがとう」
デルサスという爺やは軽く頭を下げた。
あのエルフ王の傲慢ぶりとは全く違っていた。
「さてと、一杯の紅茶でもどうかのう、エルフ姫の話によるとお主は、強くなりたいそうじゃのう、魔王ボスボスに両腕と両足を奪われたそうじゃて」
「はい、そうなのですが」
「そなたの魂はもう高齢と言っていいのだろうな、しかし、肉体は11歳じゃて、ギャップを埋める方法も神目スキルで習得しておるのだろうしな、さらに強くなるにはどうしたらいいものかのうと考えるじゃろうが、まずは一杯の紅茶じゃて、ブロッサムよ持ってきなされ」
「はい、デルサス様」
ブロッサムと呼ばれたエルフ兵士が紅茶が入ったティーポットを持ってきた。
草木の模様が入ったカップに冷たい紅茶を注いでくれた。
赤い液体に、ほのかな香りが鼻に入ってくる。
「この紅茶はのう、わしの畑で育てた茶葉じゃて、エルフ王は大嫌いじゃが、お主はどうかのう?」
とりあえず、ゆっくりと口の中に含んだ。
病院の中で飲んでいた飲み物がある。
1つは炭酸飲料だった。そして1つが元彼女がよく作ってくれた紅茶であった。
その彼女は退院していなくなってしまって疎遠になったが。
今思えば、彼女も不思議な力を持っていた。
それは、意識そのものを飛ばす事だったはずだ。
例えば肉体があって、そこから魂そのものを飛ばして、肉体には別の魂が入るが、飛んだ魂が戻ってくると、入っている魂が出ていくという仕組み、二重人格と呼ばれていたはずだ。
そういえば俺はその彼女の顔が思い出せない。
確か赤毛だったはずなんだけど、顔がぼやけてしまう。
まるで最後に握手した時に、彼女の手から彼女の意識を奪われた感じだ。
涙が流れていた。
この紅茶の味を知っている。
彼女がよく入れてくれた味とそっくりだった。
「この、紅茶をお気に召してくれたか、これはな、ある村娘が作り方を教えてくれたものじゃ、彼女はある意味、生きていないがのう」
「そうですか」
「さてと、美味しい紅茶の後は、会話といこうかのう、強くなる方法じゃが、ゼフダスとセネレスがカギを握っておるのは確かじゃな」
「なぜそこまで分かるんですか?」
「はむはむ? それはのう、ゼフダスは魔法の弟子じゃからじゃ」
「そうでしたか、まったくの予想外です」
「まぁ内緒じゃがな、人間の姿に変身して指導したからのう、あ奴からしたら、デルサスというくそ生意気な爺にしか映っておらんでな」
「それは物凄く笑えると思います」
「さてと、お主はどうやら職業属性を奪えるみたいじゃのう、わしから職業を奪っては見ぬか」
「どういう事でしょうか」
「わしはそろそろ職業属性を転職したいんじゃよ、同じ職業ばかりでは飽きるじゃろう?」
「ですがあなたの職業は」
今までその光を抑えていたのだろう、次の瞬間、光は爆発的に輝いた。
ツリーハウス、いやそう草原中が輝く。
眼を開けていられない。
そこには【大賢者】属性が表示されており【天】属性があった。
職業属性の大賢者を手に入れれば、莫大な力を手に入れられるだろう、それにエレメンタル属性の【天】とはどういう意味なのかまったく頭の回転が追い付かない。
「さてと、覚悟は出来たかのう?」
爺やの眉毛で隠されている瞳がギラリと光った。
目そのものが光だった。
これがデルサスという男の存在意義だった。
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