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理屈はばっちりだったねっ!
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大分気持ちを持ち直せた私は、ユリナを連れ立って工房へと戻った。
作業場ではカレルが腕を組み、素材鋼を鋭く見つめている。
「カレル、ごめんなさい。心配をかけたかな?」
カレルも私を探しに出てくれているものと思ったので、ちょっぴり寂しかった。けれど、私は態度に出さないよう、何食わぬ顔でカレルに話しかけた。
ユリナを応援するって、約束したもんね。
「あ、レンカ! よかった、無事で。急に出て行ったから驚いたよ」
カレルは立ち上がり、私の傍へ駆け寄った。
カレルは私に「ごめんな」と謝る。本当はカレルも探しに行きたかったのだと言った。
「入れ違いになるのが怖かったから、カレルには無理言って、ここに残ってもらったんだ」
ユリナは両手を合わせながら私に詫びた。
ユリナとカレルの二人とも工房を離れては、その後に私が戻った時、工房に誰もいないって状況になる。それを避けたかったみたい。
理由を聞いて、さっきムクムクっと込み上げてきた寂しさも、すっと消えた。よかった、カレルもきちんと心配してくれていたんだ、と。
「どうする? 今日はもうやめておくかい?」
カレルは金敷きを指さしながら私に聞いた。
「いや、続きをやろう。ユリナのおかげで、私も随分と気が晴れたから、今度はうまくいくと思うんだ」
今の私は、さっきまでの私とは違う。生産の鬼になると決めたんだ。きちんと、やれるはず……!
「よしきた。じゃ、さっそくリトライだ!」
カレルは楽しそうに声を上げると、金敷きの傍に座り込んだ。私もハンマーを手に取り、定位置へ着く。
カレルと呼吸を合わせ、私はハンマーを素材鋼に打ち下ろした。
トンテンカンッ トンテンカンッ
「よし、このタイミングで……」
私はカレルへのありったけの想いを込めて、一心不乱にハンマーを叩きつけた。
トンテンカンッ トンテンカンッ――。
「で、できた……」
私は額から流れ落ちる汗を袖で拭った。
目の前の素材鋼はきれいに鍛接され、うっすらと複雑な色彩で輝いていた。
「わー、すごい。なんだか虹色に輝いて見えるね」
ユリナはパンっと手を叩き、歓声を上げる。
「『精霊樹の古木』と一緒だな。霊素の影響で色付いて見えるんだと思う」
カレルの言うとおり、『精霊樹の古木』の丸太と同じような輝きだった。なんだか惹きこまれるような、不思議な色合いを放っている。きっとこれこそが、霊素なんだろうな。
「じゃ、このやり方でいけそうだね。成形する前に、きちんとエレメンタルウェポンとして働くか、試してみて」
私の言葉にカレルはうなずいて、出来上がった鍛接済みの素材鋼に霊素を注いだ。
すると、素材鋼のぼんやりしていた輝きが、急に激しく明滅しだした。と同時に、カレルの体が白い光に包まれる。
「おおおお、こいつはすごい。うまくいったぞ。しかも、オレの作るマジックアイテムとは違って、きちんと効果が永続しそうだ」
注入した光の精霊術による回復効果が、きちんと発動したようだ。
「じゃ、理屈はオッケーってことだね」
私はホッと胸をなでおろした。考えが正しかったと証明できて、生産職としてちょっぴり誇らしい。
作業場ではカレルが腕を組み、素材鋼を鋭く見つめている。
「カレル、ごめんなさい。心配をかけたかな?」
カレルも私を探しに出てくれているものと思ったので、ちょっぴり寂しかった。けれど、私は態度に出さないよう、何食わぬ顔でカレルに話しかけた。
ユリナを応援するって、約束したもんね。
「あ、レンカ! よかった、無事で。急に出て行ったから驚いたよ」
カレルは立ち上がり、私の傍へ駆け寄った。
カレルは私に「ごめんな」と謝る。本当はカレルも探しに行きたかったのだと言った。
「入れ違いになるのが怖かったから、カレルには無理言って、ここに残ってもらったんだ」
ユリナは両手を合わせながら私に詫びた。
ユリナとカレルの二人とも工房を離れては、その後に私が戻った時、工房に誰もいないって状況になる。それを避けたかったみたい。
理由を聞いて、さっきムクムクっと込み上げてきた寂しさも、すっと消えた。よかった、カレルもきちんと心配してくれていたんだ、と。
「どうする? 今日はもうやめておくかい?」
カレルは金敷きを指さしながら私に聞いた。
「いや、続きをやろう。ユリナのおかげで、私も随分と気が晴れたから、今度はうまくいくと思うんだ」
今の私は、さっきまでの私とは違う。生産の鬼になると決めたんだ。きちんと、やれるはず……!
「よしきた。じゃ、さっそくリトライだ!」
カレルは楽しそうに声を上げると、金敷きの傍に座り込んだ。私もハンマーを手に取り、定位置へ着く。
カレルと呼吸を合わせ、私はハンマーを素材鋼に打ち下ろした。
トンテンカンッ トンテンカンッ
「よし、このタイミングで……」
私はカレルへのありったけの想いを込めて、一心不乱にハンマーを叩きつけた。
トンテンカンッ トンテンカンッ――。
「で、できた……」
私は額から流れ落ちる汗を袖で拭った。
目の前の素材鋼はきれいに鍛接され、うっすらと複雑な色彩で輝いていた。
「わー、すごい。なんだか虹色に輝いて見えるね」
ユリナはパンっと手を叩き、歓声を上げる。
「『精霊樹の古木』と一緒だな。霊素の影響で色付いて見えるんだと思う」
カレルの言うとおり、『精霊樹の古木』の丸太と同じような輝きだった。なんだか惹きこまれるような、不思議な色合いを放っている。きっとこれこそが、霊素なんだろうな。
「じゃ、このやり方でいけそうだね。成形する前に、きちんとエレメンタルウェポンとして働くか、試してみて」
私の言葉にカレルはうなずいて、出来上がった鍛接済みの素材鋼に霊素を注いだ。
すると、素材鋼のぼんやりしていた輝きが、急に激しく明滅しだした。と同時に、カレルの体が白い光に包まれる。
「おおおお、こいつはすごい。うまくいったぞ。しかも、オレの作るマジックアイテムとは違って、きちんと効果が永続しそうだ」
注入した光の精霊術による回復効果が、きちんと発動したようだ。
「じゃ、理屈はオッケーってことだね」
私はホッと胸をなでおろした。考えが正しかったと証明できて、生産職としてちょっぴり誇らしい。
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