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私のスヴィチコヴァーを召し上がれっ!

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 精霊の大森林に入り、私たちは目的の採取場所へと進んだ。普段私が木材を採取する場所を通り過ぎ、さらに奥へと分け入る。

 うーん、レア素材の場所を知れるのはいいんだけれど、これ、私ひとりじゃ取りに来るの無理っぽいなぁ。周囲がうっそうとしすぎだし、何より、雑魚モンスターが、私のソロではちょっと厳しい感じだよ。

 私は手斧を構えつつ、前方で雑魚モンスター『ストゥロム』と交戦中のカレルとユリナを見つめた。

 ストゥロムは、大型の木のモンスターだ。枝を伸ばし、四肢をがんじがらめにしたうえで絞め殺そうとしてくる。しかも、質の悪い話なんだけれど、通常の木に擬態しているので発見が遅れがちになるんだよね。

 ただ、そこは百戦錬磨のカレルとユリナだった。距離があるうちから擬態を見破り、カレルの風の精霊術で枝葉を切断し、相手の好きにはさせていない。カレルは、ペスと名付けられた子犬の使い魔に適切に指示を出しつつ、ストゥロムを翻弄していた。

 一方で、ユリナは薙刀で広範囲を薙ぎ払い、ストゥロムに寄生している昆虫型モンスターの集団を蹴散らしている。

 私は二人の手際のよい戦闘風景を、しっかりと目に焼き付けた。

 武器がどのように扱われているかを実地で知れる数少ない機会なんだ。しっかり活用しなくちゃね。

 私じゃ絶対にかなわない強敵を難なく屠るカレルとユリナの姿に、私はすっかり興奮した。

 戦闘が終わると、カレルは使い魔たちを集めて頭を撫でた。使い魔たちもうれしそうに鳴き声を上げている。

 聞いてはいたけれど、精霊使いは使い魔とのコミュニケーションが大事だっていうのは、本当なんだ。モフモフの毛皮に顔をうずめているカレルの顔、すごくだらしない。……べ、別にうらやましくなんかないんだからねっ。 

 ユリナはカレルの隣で、薙刀の刃先の手入れをしていた。

 うん、ああやって大切に扱ってくれれば、武器もうれしいよね。こういう人に武器を作って使ってもらうのは、本当に鍛冶屋冥利に尽きるって感じ。

 さて、二人に戦闘を任せっぱなしだったし、昼食ぐらいは私が作りましょうかね。

 私は持ってきた鍋を取り出し、ささっとお昼を作った。といっても、事前に工房で作っておいたソースを凍らせて持ってきているので、温めなおして焼いたお肉にかけるだけの簡単料理なのは秘密だよ。

「さ、食べて食べて。スヴィチコヴァーなんだけど、ごめん、生クリームやベリージャムは持ってきていないんだ」

 根菜を刻んでピューレ状にしたソースを、焼いた牛もも肉にさっとかけたもので、私の拠点としているヴィーデの街でよく食べられている料理だ。本来なら、上に生クリームとクランベリージャムをかけるんだけれど、残念ながら今は持ち合わせていない。

「暖かいものが食べられるだけでも、ありがたいよ」

「わー、ありがとう。さっそくいただくね」

 私は二人の食べる姿をじっと眺めた。どうやら、お口に合ったようだ。よかったよかった。これで少しは役に立てたかな?






「ここだよ、レンカちゃん」

 ユリナが立ち止まり、深い森の中にぽっかりと開いた空間を指さした。

「へぇー、こりゃすごいねー」

 私はぐるりと周囲を見回した。この周辺だけ、明らかに生えている木の種類が違った。『精霊樹』だ。

「だろう? 結構お気に入りの場所なんだよな」

 カレルは微笑を浮かべながら、ポンポンっと精霊樹の幹を叩いた。

 それにしても、なんだか神秘的な雰囲気がする場所だ。このあたりの霊素が特に濃いせいなのか、なんだか妙に落ち着かないよ。

「じゃ、さっそく始めよう。素材になる木は七色に光っているはずだから、すぐにわかるはずだ」

「オッケー、オッケー」

 私はカレルの言葉にうなずくと、さっそく目的の『精霊樹の古木』を探し始めた。

 七色に輝いているなら、すぐに目につきそうなんだけどなぁ。どこにあるんだろう?

 私はきょろきょろと周囲をうかがいながら歩いた。すると、何やら右手のほうの木々の隙間から、ぼんやりと光が漏れ出ている。もしかして、目的の物かな?

 分け入って中をうかがうと、どうやらドンピシャのようだ。虹色に輝く古木が目に飛び込んできた。私はさっそく斧を取り出し、切り出しにかかった。
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