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第十五章 再会
4 性悪聖女様は吸収されましたの?
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翌日、アリツェの私室にクリスティーナが尋ねてきた。
「アリツェ、昨日は素晴らしい式を、本当にありがとう。一生の思い出になるわ」
どうやら興奮もあってあまり眠れていないのか、クリスティーナの目の周りにはクマがある。
「いいんですのよ、クリスティーナ。わたくしとあなたの仲ではないですか」
眠いだろうにわざわざ礼を言いに来たクリスティーナに、アリツェは優しく微笑んだ。
「ほんと、かわいいわね、あなた」
クリスティーナはアリツェの傍までよって、そのままアリツェを抱きしめようとした。
「ダメですよ、クリスティーナ様。アリツェはボクのものです。あげませんからね」
その様子を見ていたドミニクが慌てて割って入り、代わりにアリツェを抱き寄せた。
「ちょ、ちょっとドミニクっ!」
ドミニクの突然の行動に、アリツェは慌てて声を上げた。だが、ドミニクは手を緩めない。
「あらあら、お熱いことね」
クリスティーナは苦笑を浮かべていた。
クリスティーナに見られる気恥ずかしさもあり、アリツェは全身が熱くなる。
「……それはそうと、一つあなたに報告をしたい話が。悪いけれど、ラディム君も呼んでもらえるかしら?」
クリスティーナは急に真面目な表情に変わり、ラディムの同席を要求した。
わざわざラディムを指名という点に、どうやら転生者がらみの話だとアリツェは察し、すぐさま侍女にラディムを呼んでくるよう指示をした。
「クリスティーナ様、私にも御用で?」
呼ばれたラディムが、すぐにアリツェの私室に姿を現した。
「すみません、ラディム君。あ、あとあなたもできれば私を呼び捨てにしてもらえると嬉しいわ」
クリスティーナはラディムに微笑んだ。
「あぁ、わかった、クリスティーナ」
一瞬躊躇したものの、ラディムは素直に首肯する。
「……実はね、私の中の人格についてなの」
やはり、転生者がらみの話のようだ。
「昨日の婚約の儀を終えて、疲れたのでベッドで横になってウトウトとしていたんだけれど」
「あ、もしかして……」
アリツェはピンときた。ミリアが表に出てきて以来、一度もクリスティーナの人格が現れていない点を考えると、おそらくは……。
「そう、人格が統合されたわ。私が押さえ込んでいたクリスティーナの人格が急速に消えて、私の中にスーッと溶け込んでいくような感覚を覚えたわ」
クリスティーナは目を閉じ、胸の前で両手を合わせる。
「で、目が覚めたら、かつてのクリスティーナの人格は完全に消えていて、彼女の記憶のみが私の中にとどまったの」
「完全に、消えた……」
クリスティーナの言葉に、アリツェは目をむいた。
「あ、消えたって言っても、なんだか不思議なのよ。こうして人格はミリアなんだけれど、同時にクリスティーナでもあるっていう感覚。説明が難しいわね。とにかく、消えたからって言っても、完全に消滅したわけではない。ミリアの人格の中にクリスティーナの人格が混じりこんでいるのよ」
アリツェとラディムが押し黙っていると、クリスティーナは慌てて弁解した。
「ヴァーツラフ様が言っていたとおり、まじりあうのですわね。実際に体験しないと、感覚はわかりそうにありませんけれど」
クリスティーナの話を聞いてもどうにも理解がしがたいが、人格自体が無くなってしまったわけではないようだ。溶け合って、融合する。言葉で表現すればこんな感じになるのだろうか。
本来であればアリツェと悠太もそうなるはずだった。結局は二重人格で固定されてしまったが。
……だが、最近悠太の様子がおかしいとも、アリツェは感じていた。以前優里菜との会話で、悠太の人格がアリツェに統合されそうだと不安を吐露しているのを見た。悠太の思考がアリツェに寄ってきていて、アリツェを主人格に人格が統合されるのではないかとの危惧を、ここのところの悠太はずっと持っているようだった。
言葉を裏付けるかのように、最近は夜になっても悠太の人格が表に出てこようとはせず、アリツェがそのまま夜も活動する機会が増えていた。ミリアがクリスティーナの人格を抑えて表に出てこないようにしていた状況と、似ていると言えば似ているのかもしれない。であれば、アリツェと悠太の行きつく先は……。
「うまく説明できなくてごめんなさいね」
クリスティーナは少し悔しそうに頭を振った。
「いずれにしても、これでわがまま娘の人格に悩まされはしなくなるわ。これから始まる本格的な対帝国戦に、私もより一層協力させていただくわ」
クリスティーナはアリツェの手を握り締める。
「ありがとうございます、クリスティーナ」
「助かる、クリスティーナ」
アリツェとラディムはクリスティーナの配慮に礼を述べた。今度の戦いは絶対の勝利が求められる。心強い味方は多いに越したことはない。
「ふふ、私たちは同じ転生者同士ですし、アリツェとラディム君の中には私のかつてのパーティーメンバーがいるんです。当然です」
クリスティーナは得意げに鼻を鳴らし、グイっと胸を張った。
「アリツェ、昨日は素晴らしい式を、本当にありがとう。一生の思い出になるわ」
どうやら興奮もあってあまり眠れていないのか、クリスティーナの目の周りにはクマがある。
「いいんですのよ、クリスティーナ。わたくしとあなたの仲ではないですか」
眠いだろうにわざわざ礼を言いに来たクリスティーナに、アリツェは優しく微笑んだ。
「ほんと、かわいいわね、あなた」
クリスティーナはアリツェの傍までよって、そのままアリツェを抱きしめようとした。
「ダメですよ、クリスティーナ様。アリツェはボクのものです。あげませんからね」
その様子を見ていたドミニクが慌てて割って入り、代わりにアリツェを抱き寄せた。
「ちょ、ちょっとドミニクっ!」
ドミニクの突然の行動に、アリツェは慌てて声を上げた。だが、ドミニクは手を緩めない。
「あらあら、お熱いことね」
クリスティーナは苦笑を浮かべていた。
クリスティーナに見られる気恥ずかしさもあり、アリツェは全身が熱くなる。
「……それはそうと、一つあなたに報告をしたい話が。悪いけれど、ラディム君も呼んでもらえるかしら?」
クリスティーナは急に真面目な表情に変わり、ラディムの同席を要求した。
わざわざラディムを指名という点に、どうやら転生者がらみの話だとアリツェは察し、すぐさま侍女にラディムを呼んでくるよう指示をした。
「クリスティーナ様、私にも御用で?」
呼ばれたラディムが、すぐにアリツェの私室に姿を現した。
「すみません、ラディム君。あ、あとあなたもできれば私を呼び捨てにしてもらえると嬉しいわ」
クリスティーナはラディムに微笑んだ。
「あぁ、わかった、クリスティーナ」
一瞬躊躇したものの、ラディムは素直に首肯する。
「……実はね、私の中の人格についてなの」
やはり、転生者がらみの話のようだ。
「昨日の婚約の儀を終えて、疲れたのでベッドで横になってウトウトとしていたんだけれど」
「あ、もしかして……」
アリツェはピンときた。ミリアが表に出てきて以来、一度もクリスティーナの人格が現れていない点を考えると、おそらくは……。
「そう、人格が統合されたわ。私が押さえ込んでいたクリスティーナの人格が急速に消えて、私の中にスーッと溶け込んでいくような感覚を覚えたわ」
クリスティーナは目を閉じ、胸の前で両手を合わせる。
「で、目が覚めたら、かつてのクリスティーナの人格は完全に消えていて、彼女の記憶のみが私の中にとどまったの」
「完全に、消えた……」
クリスティーナの言葉に、アリツェは目をむいた。
「あ、消えたって言っても、なんだか不思議なのよ。こうして人格はミリアなんだけれど、同時にクリスティーナでもあるっていう感覚。説明が難しいわね。とにかく、消えたからって言っても、完全に消滅したわけではない。ミリアの人格の中にクリスティーナの人格が混じりこんでいるのよ」
アリツェとラディムが押し黙っていると、クリスティーナは慌てて弁解した。
「ヴァーツラフ様が言っていたとおり、まじりあうのですわね。実際に体験しないと、感覚はわかりそうにありませんけれど」
クリスティーナの話を聞いてもどうにも理解がしがたいが、人格自体が無くなってしまったわけではないようだ。溶け合って、融合する。言葉で表現すればこんな感じになるのだろうか。
本来であればアリツェと悠太もそうなるはずだった。結局は二重人格で固定されてしまったが。
……だが、最近悠太の様子がおかしいとも、アリツェは感じていた。以前優里菜との会話で、悠太の人格がアリツェに統合されそうだと不安を吐露しているのを見た。悠太の思考がアリツェに寄ってきていて、アリツェを主人格に人格が統合されるのではないかとの危惧を、ここのところの悠太はずっと持っているようだった。
言葉を裏付けるかのように、最近は夜になっても悠太の人格が表に出てこようとはせず、アリツェがそのまま夜も活動する機会が増えていた。ミリアがクリスティーナの人格を抑えて表に出てこないようにしていた状況と、似ていると言えば似ているのかもしれない。であれば、アリツェと悠太の行きつく先は……。
「うまく説明できなくてごめんなさいね」
クリスティーナは少し悔しそうに頭を振った。
「いずれにしても、これでわがまま娘の人格に悩まされはしなくなるわ。これから始まる本格的な対帝国戦に、私もより一層協力させていただくわ」
クリスティーナはアリツェの手を握り締める。
「ありがとうございます、クリスティーナ」
「助かる、クリスティーナ」
アリツェとラディムはクリスティーナの配慮に礼を述べた。今度の戦いは絶対の勝利が求められる。心強い味方は多いに越したことはない。
「ふふ、私たちは同じ転生者同士ですし、アリツェとラディム君の中には私のかつてのパーティーメンバーがいるんです。当然です」
クリスティーナは得意げに鼻を鳴らし、グイっと胸を張った。
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