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第四部 中央大陸宗教大戦

第三部のあらすじ ※ネタバレ注意です

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 第三部のあらすじです。端折っている部分も多いですが、大体の流れはわかるかと思います。
 目新しい内容はありませんので、第三部読了済みの場合は特にお読みいただく必要はないものとなっております。






★★皇子救出編★★

 アリツェ、ラディム、ドミニクは辺境伯領領都オーミュッツで、辺境伯フェルディナント・プリンツと対面した。フェルディナントは帝国軍とは戦う意思がなく、ラディムを通じて皇帝と和解がしたいと話す。

 また、アリツェとラディムはやはり双子だったと判明する。双子は忌み嫌われる存在とされていたので、バイアー帝国側にも、アリツェの養父マルティンにも、双子だった件は伏せていたとフェルディナントは語る。謎だった実父カレル・プリンツの死についても、アリツェとラディムを流産しそうになった母ユリナを助けるために、回数制限のある『祈願』の力を使ったが故のものだとわかった。

 ラディムはフェルディナントからの話を受け、停戦へ向けて皇帝ベルナルドへの説得を決意する。失敗したら殺されるかもしれないと懸念し、ラディムはアリツェに使い魔のミアを託す。その際、ラディムは王都にいるであろうマリエの面倒も見てほしいと頼みこんできた。アリツェは動揺しつつも意を決し、ラディムにマリエを手に掛けた事実を話す。結果、ラディムは怒り、そのまま喧嘩別れとなった。

 その後、アリツェはラディムが帝都ミュニホフに捕らわれの身となり、処刑の日を待っているとの報告を受ける。軍を率いての救出は間に合わないと踏み、アリツェはドミニクとともに先行し、こっそりとミュニホフ入りをする。

 ミュニホフでは協力者を見つけられず、仕方なしに無理やり皇宮内に忍び込みラディム奪還を図ったが、ザハリアーシュ率いる導師部隊に見とがめられ、這う這うの体で逃げ出した。



 協力者なしでのラディム救出は厳しいと悟ったアリツェたちは、再びミュニホフの街の調査に出た。そんな中、街角で兄ラディムの匂いを纏う一人の女性と出会う。女性はエリシュカと名乗り、ムシュカ伯爵家の娘だと口にした。しかも、ラディムの傍付き侍女をしていたという。ムシュカ伯爵は帝国に反旗を翻そうとしており、アリツェたちはラディム救出の協力を求めた。

 ムシュカ伯爵の協力を得たアリツェたちは、再度皇宮に忍び込んだ。外で伯爵が陽動を行い、敵の目を外へと引き付けることで、前回とは違いスムーズに宮殿内を移動できた。

 ラディムを探している最中に、アリツェはザハリアーシュが世界再生教の大司教と密会をしている現場を盗み聞きした。ザハリアーシュは、精霊教が悪ではないと知りながら皇帝一家にでたらめを教え、精霊教を憎むように仕向けていたと語る。ザハリアーシュこそが、これまでの帝国による精霊教弾圧の黒幕だった。

 アリツェたちは再びラディム捜索に戻った。予想どおりにラディムの部屋の中で、捕らわれのラディム本人を発見し、救出した。ザハリアーシュがすべての元凶だった件をラディムに話すと、ラディムは皇帝ベルナルドをもう一度説得すると主張しだした。世界再生教のたくらみが明るみに出た以上、皇帝は必ず叛意するとラディムは言った。

 皇帝に面会し、ラディムは考えを改めるよう説得を行った。だが、もはや動き出した帝国を止めることはできないとベルナルドは拒否をし、ラディムを再度捕らえようとした。致し方なく、アリツェはラディムを連れて宮殿を脱出した。ムシュカ伯爵と合流し、対皇帝のための態勢を整えるため、いったんムシュカ伯爵領へと落ちのびることにした。伯爵領に落ちのびた後、今後の方針を話し合い、王国軍と強調して皇帝を討つと決定。アリツェとドミニクは辺境伯領へと戻った。ただし、ラディムはマリエに関するわだかまりもあり、伯爵領へとどまった。



★★悪役令嬢編★★

 辺境伯領へ戻るや、ドミニクは王都に呼ばれ出かけて行った。王都から再び辺境伯領へ戻ったドミニクは、自身の身分がフェイシア王国第二王子であるとアリツェに明かし、同時に、アリツェに求婚する。アリツェもドミニクが好きになっていたので、ドミニクの申し出を受ける決心をした。婚約の儀はオーミュッツで、国王夫妻招待の元、開催すると決定される。

 ドミニクとデートを楽しみながら、アリツェは婚約の日を待った。一方、アリツェの中の悠太は、最近自分の人格がおかしいことに気づく。思考が女性化している気配を感じ、一抹の不安を悠太は感じた。そんな婚約の儀を目前に控えざわつく辺境伯邸に、ムシュカ伯爵領からラディムが、エリシュカを伴いやってきた。ラディムは、エリシュカにマリエに関する心の傷をいやしてもらったと言い、エリシュカと恋仲になった様子をアリツェに見せた。元気を取り戻したラディムを見て、アリツェはホッと安堵する。

 婚約の儀の数日前、フェイシア国王夫妻とともに、ヤゲル王国の外交使節団がやってきた。婚約の儀に参列するため訪れた使節団には、噂に上っていた精霊教の『聖女』クリスティーナが同行していた。

 クリスティーナは高慢な性格で、同行するヤゲルの高官にもわがままを言いたい放題だった。ドミニクを一目見て気に入ったのか、クリスティーナはドミニクに色目を使い出し、アリツェはやきもきする。

 クリスティーナの態度に困惑するアリツェたちに、追い討ちをかける事実が判明する。クリスティーナはヤゲル王国の王女だった。さらに、クリスティーナは外交使節団を経由し、正式にドミニクに婚約をしないかと持ち掛けてきた。婚約することで、将来のフェイシア王国とヤゲル王国の連合王国化を進めようとの提案だった。だが、ドミニク側はこの提案を拒否し、無事アリツェとドミニクの婚約の儀が開催された。

 婚約を結んでからしばらく経った頃、フェイシア王国が精霊教を国教と決定した記念のパーティーの場で、突然ドミニクはアリツェとの婚約を解消し、クリスティーナと新たに婚約を結ぶと発表した。アリツェは失意のまま、パーティー会場を後にする。だが、この婚約破棄はアリツェが仕組んだものだった。



 時間はいったん婚約の儀の直後に戻る。
 悠太はアリツェに、ドミニクとの結婚には反対だという。今後帝国と本格的に事を構えるにあたり、フェイシア王国とヤゲル王国の関係強化は必ず必要になると悠太は力説し、そのためにも婚約を破棄し、ドミニクとクリスティーナが婚約を結ぶようにすべきだと主張した。悠太の説明を聞くうち、アリツェも渋々ながら同意し、婚約を破棄させる方向で動き始めた。

 アリツェはドミニクに婚約を破棄する気持ちはあるかどうかを確認した。だが、ドミニクはアリツェを溺愛しており、どうやらドミニクの側からの婚約破棄は無理そうだとアリツェは感じた。
 今後の方針として、クリスティーナに嫌がらせをし、ドミニクにアリツェの悪女ぶりを見せることでドミニクのアリツェに対する信頼を失わせることと、ドミニクとアリツェの結婚を望んでいる王国上層部に、アリツェがドミニクの妻にふさわしくないと思わせることで、上層部側から結婚の白紙撤回をドミニクに迫らせること、この二点をアリツェと悠太は考えた。

 ドミニクや王国上層部を失望させる作戦の一環として、アリツェは精霊教から世界再生教に改宗し、魔術を使い始めたと周囲に思わせようと決めた。魔術を使って嫌がらせを繰り返し、魔術の評判を落とすことで、フェイシア王国が精霊教を中心にまとまるように仕向けつつ、アリツェ自身の評判も落とす、そういった作戦だった。
 だが、副作用として、将来アリツェ自身がフェイシア王国を追われる事態になるかもしれなかった。保険として、ラディムに帝国内に安全な避難先を確保してもらおうと考えた。そのためにも、ラディムには確実にベルナルド皇帝に打ち勝ち、帝位についてもらう必要があった。アリツェはラディムに宣言する。「わたくし悪役令嬢に成りますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!」と。
 アリツェはさっそくクリスティーナへの嫌がらせを始めた。だが、クリスティーナもたいしたタマだった。いくら嫌がらせを繰り返しても、まったく堪えた様子を見せない。そんな中、クリスティーナの持ち物を漁っていた時、アリツェは偶然に、アリツェの持つ『精霊王の証』と同じメダルをクリスティーナも持っているのに気付く。どういうことかとクリスティーナを問い詰めるも、はぐらかされて真相はわからなかった。

 クリスティーナへの嫌がらせがなかなか功を奏せず、頭を悩ませていたアリツェの元に、フェルディナントが一つの提案を持ち込んだ。プリンツ子爵領のグリューンへ行き、養父のマルティンに精霊教へ改宗するよう説得しないかというものだ。最初渋っていたアリツェだったが、子爵領にはクリスティーナも同行すると聞かされ、悠太からこの件は婚約破棄に使えると説得される。

 悠太の作戦はこうだ。アリツェは世界再生教に改宗したとマルティンをだまし、接近する。その様子をクリスティーナに見せ、クリスティーナが危機感からアリツェとマルティンを拘束するように仕向ける。世界再生教に帰依することでフェイシア王国に害をなそうとしたアリツェとマルティンをものの見事に捕縛した功労者として、一躍クリスティーナの株は上がる。また、フェイシア国王に尋問された際には、アリツェはマルティンが恐ろしくて、世界再生教に改宗するとでたらめを口にしたと弁明し、逆に、今までのマルティンの所業をばらすことで、マルティンを失脚させる。これで、クリスティーナの王国内での評判が上がる一方で、アリツェの評判は下がり、また、マルティンの失脚で王国内に世界再生教を支持する勢力がいなくなる結果をももたらせる。まさに一石三鳥の作戦だった。

 アリツェも納得し、作戦を遂行、見事成功し、マルティンは子爵位をはく奪され、王都に幽閉された。アリツェは代わりにプリンツ子爵の地位を与えられ、グリューンを統治するよう国王に命じられた。だが、子爵領は将来、結婚したドミニクのための領地とすると国王は言う。ドミニクとの婚約破棄を望むアリツェは、このままでは将来、グリューンを追い出される事態は確実だった。しかし、生まれ育った地でもあるグリューンの寂れ具合を、このままにはしておけないとアリツェは思い、できるだけの領地改革を始めた。

 領地改革が一息ついたところで、アリツェは再び悪役令嬢役を始める。そして、クリスティーナを魔術を用いて階段から突き落とそうとし、その現場をドミニクに目撃させた。ドミニクにアリツェの悪女ぶりを直に見せ、ドミニクの失望を誘おうとしたのだが、それでもドミニクはアリツェを捨てようとはしなかった。

 改めてアリツェはドミニクを説得した。フェイシア王国とヤゲル王国の関係強化の重要性を特に強調して説いたものの、やはりドミニクは拒否をした。だが、王国上層部から、アリツェが帝国のスパイではないかとの疑問の声が沸き起こり始め、さすがにドミニクも擁護がしきれなくなった。ここに至り、ドミニクも婚約の破棄を了承した。



 アリツェがドミニクの説得に成功した翌日、アリツェの身体に初経がやってきた。生理が始まり大人になったアリツェの身体に引きずられるかのように、悠太の思考はどんどん女性化していった。このままではアリツェの人格に統合され、消滅するのではないかと、悠太は危惧し始めた。

 アリツェを取り巻く状況が劇的に変化していく中、突然兄ラディムがグリューンに現れた。ラディムの中の優里菜が、アリツェの中の悠太とぜひ話し合いたいと言うのでわざわざやってきたとラディムは話す。了解したアリツェは、意識を悠太に渡した。
 優里菜は悠太に、自身の身体と人格の変化について相談を始めた。優里菜も悠太とまったく同じ状況に陥っていた。このままではやがて、二人とも転生素体側の人格に吸収されそうだと結論付ける。いろいろ考えた結果、この運命は変えられそうにないと観念し、この逢瀬が最後になるだろうと覚悟を決めた。

 そして、運命の婚約破棄の日に話は戻る。
 失意の中王宮を辞そうとしたアリツェの元に、ドミニクとクリスティーナが慌てた様子で駆けつけてきた。話を聞けば、クリスティーナが実は転生者で、転生者ミリア・パーラヴァの記憶が戻ったという。かつてVRMMO『精霊たちの憂鬱』でカレル・プリンツ、ユリナ・カタクラとパーティーを組んでいたミリアは、転生者の条件を満たしていた。だが、管理者ヴァーツラフへのテストプレイ参加の申し込みがぎりぎりのタイミングになってしまったため、悠太と優里菜が転生処理をする段階では、まだミリアが転生するとの意思表示がヴァーツラフの元に届いていなかった。このため、悠太たちにはテストプレイヤーが二人とヴァーツラフは説明したが、実際にはミリアも含めた三人が転生していた。

 ミリアは、性悪クリスティーナの人格を抑え込むので、婚約破棄の件は白紙に戻し、アリツェとドミニクが結婚すべきだと主張した。願ったりかなったりなので、アリツェもドミニクも同意した。フェイシアとヤゲルの関係強化は、ドミニクの弟アレシュとクリスティーナが結婚することで成し遂げようという話になり、すべては一件落着となった。

 落ち着きを取り戻したと思った矢先、帝国軍が本格的に進軍を開始したとの報が入った。アリツェたちは急ぎ辺境伯領へ舞い戻り、国境の前線へと向かった。

 中央大陸歴八一三年十二月。ついに帝国との全面戦争が始まろうとしていた。
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