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第十四章 悠太と優里菜、移ろいゆく心
7 アレシュ様とですの?
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「私の記憶が戻った以上は、クリスティーナの人格が好き勝手やらかす事態は、何としても防ぎます。ですので、私とドミニクとの婚約もなし。アリツェと元の鞘に戻りなさい」
クリスティーナは僅かにふんぞり返り、力強くポンっと胸を叩いた。
「でも、わたくしは悪役令嬢として、もうすっかり王国内では悪評が……」
ドミニクとの関係を再構築できるのであれば、これほどうれしい話はない。だが現状では、アリツェは王国上層部に帝国のスパイだと思われている。もはやドミニクと結婚云々の話どころではなかった。
「その点は問題ありません。『聖女』の話なら、皆さん聞いてくれるはずだわ。あなたが国の未来を憂い、わざと悪役を演じた件を、きっちり説明させていただきます」
クリスティーナは「私に任せなさい!」とアリツェの手をしっかりと握り締めた。
こうしていると、クリスティーナの元人格とは違って、ミリアの人格は面倒見のよさそうな、優しい女性にアリツェは思えた。
「血のつながりでもって、フェイシア王国とヤゲル王国の結びつきを強化するせっかくの機会を、無くしてしまうのは惜しいのではないでしょうか?」
国際情勢をにらんだうえでの、今回の婚約破棄だ。ドミニクとクリスティーナの婚約がご破算となれば、今までの悪役令嬢っぷりが無駄になるのではないかとアリツェは不安に駆られた。
「でも、あなたたち二人は愛し合っているのでしょう? 私は人の恋人を寝取るような趣味は持っていません!」
クリスティーナはわずかに怒気をはらんだ声を張り上げて、大きく頭を振った。
「それに、結婚による両国の関係強化という話ならば……」
クリスティーナはチラリと部屋の入口に視線を送る。
「そこで聞いているのでしょう? 入っていらっしゃいな」
「クリスティーナ様、兄上……」
アリツェは振り返って入口に目を遣ると、アレシュが落ち着かない様子で立っていた。
「アレシュ! お前、盗み聞きしていたのか!」
ドミニクは立ち上がり、アレシュを怒鳴りつけた。
「いいんです、ドミニク様。彼にも事情を知っておいてもらうべきです」
クリスティーナは慌ててドミニクを制する。ドミニクはわずかに不満げな顔を浮かべたが、再びソファーに座り込んだ。
「私とアレシュ様が結婚すれば、すべて丸く収まると私は思うのです」
突拍子もない話をクリスティーナは口にした。
「クリスティーナ様! 本当ですか!」
アレシュは叱られてシュンとしていたのが一転、満面の笑みを浮かべてクリスティーナを見つめた。
「おいおい、聖女様、本気なのかい?」
ドミニクは信じられないといった面持ちで、クリスティーナに視線を送る。
「よろしいのですか? クリスティ――ミリア様……」
予想外の提案に、アリツェも何が何やらわからず言葉を濁した。まさか、今度はアリツェに代わってクリスティーナが、フェイシアとヤゲル両国のために泥をかぶろうとしているのだろうか。
「あっ、呼び方はミリアでなく、今までどおりクリスティーナにしてもらえるかな? 事情を知らない者に聞かれたら、面倒だもの」
「はい……」
アリツェはあらぬ方向に推移する事態に頭がついてゆかず、気のない返事をくれた。
クリスティーナは僅かにふんぞり返り、力強くポンっと胸を叩いた。
「でも、わたくしは悪役令嬢として、もうすっかり王国内では悪評が……」
ドミニクとの関係を再構築できるのであれば、これほどうれしい話はない。だが現状では、アリツェは王国上層部に帝国のスパイだと思われている。もはやドミニクと結婚云々の話どころではなかった。
「その点は問題ありません。『聖女』の話なら、皆さん聞いてくれるはずだわ。あなたが国の未来を憂い、わざと悪役を演じた件を、きっちり説明させていただきます」
クリスティーナは「私に任せなさい!」とアリツェの手をしっかりと握り締めた。
こうしていると、クリスティーナの元人格とは違って、ミリアの人格は面倒見のよさそうな、優しい女性にアリツェは思えた。
「血のつながりでもって、フェイシア王国とヤゲル王国の結びつきを強化するせっかくの機会を、無くしてしまうのは惜しいのではないでしょうか?」
国際情勢をにらんだうえでの、今回の婚約破棄だ。ドミニクとクリスティーナの婚約がご破算となれば、今までの悪役令嬢っぷりが無駄になるのではないかとアリツェは不安に駆られた。
「でも、あなたたち二人は愛し合っているのでしょう? 私は人の恋人を寝取るような趣味は持っていません!」
クリスティーナはわずかに怒気をはらんだ声を張り上げて、大きく頭を振った。
「それに、結婚による両国の関係強化という話ならば……」
クリスティーナはチラリと部屋の入口に視線を送る。
「そこで聞いているのでしょう? 入っていらっしゃいな」
「クリスティーナ様、兄上……」
アリツェは振り返って入口に目を遣ると、アレシュが落ち着かない様子で立っていた。
「アレシュ! お前、盗み聞きしていたのか!」
ドミニクは立ち上がり、アレシュを怒鳴りつけた。
「いいんです、ドミニク様。彼にも事情を知っておいてもらうべきです」
クリスティーナは慌ててドミニクを制する。ドミニクはわずかに不満げな顔を浮かべたが、再びソファーに座り込んだ。
「私とアレシュ様が結婚すれば、すべて丸く収まると私は思うのです」
突拍子もない話をクリスティーナは口にした。
「クリスティーナ様! 本当ですか!」
アレシュは叱られてシュンとしていたのが一転、満面の笑みを浮かべてクリスティーナを見つめた。
「おいおい、聖女様、本気なのかい?」
ドミニクは信じられないといった面持ちで、クリスティーナに視線を送る。
「よろしいのですか? クリスティ――ミリア様……」
予想外の提案に、アリツェも何が何やらわからず言葉を濁した。まさか、今度はアリツェに代わってクリスティーナが、フェイシアとヤゲル両国のために泥をかぶろうとしているのだろうか。
「あっ、呼び方はミリアでなく、今までどおりクリスティーナにしてもらえるかな? 事情を知らない者に聞かれたら、面倒だもの」
「はい……」
アリツェはあらぬ方向に推移する事態に頭がついてゆかず、気のない返事をくれた。
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