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第十章 皇子救出作戦
4 再び潜入いたしますわ
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深夜、悠太とドミニクは、ペスを引き連れて宮殿の裏手に回った。一旦物陰にひそみ、侵入のタイミングをうかがう。
「最初の侵入経路自体は、失敗した前回と一緒だね。ちょっと、不安だなぁ」
ドミニクがポツリとこぼした。
「オーッホッホッホ! ドミニク様、弱気だなんてらしくないですわ。今回は伯爵様の陽動もありますし、何より、わたくしたちが宮殿の見取り図をしっかりと頭に叩き込んでおります。失敗するはずが、ありませんわ!」
悠太は高笑いを上げて、ドミニクの不安を吹き飛ばそうとした。
「まぁ、アリツェがそういうのなら、たぶん大丈夫なんだろな」
悠太の姿を、ドミニクは苦笑を浮かべながら見つめている。
「お任せあれ、ですわ!」
薄い胸をそらしながら、悠太はポンと胸板を叩いた。
『ご主人、そろそろ頃合いだっポ。今なら大分、正面側に衛兵がひきつけられているっポ』
そこに、念話でルゥからの報告が入った。
「ドミニク様、ルゥから連絡が入りましたわ。どうやら、侵入のタイミングが到来したようですわ」
「よしきた! お互い、頑張ろうか」
悠太とドミニクはうなずきあうと、ペスの精霊術で気配を消して、勝手口から宮殿に潜入した。
「ルゥの言うとおり、確かに衛兵の姿はないですわね。精霊術の行使の気配も見受けられませんわ。導師部隊もおそらくは、正面に回っているのでしょう。今のうちに、さっさとお兄様を救出しましょう」
悠太は慎重に周囲の様子を探ったものの、敵対する者の気配は感じなかった。ペスの鼻も、特に危険な臭いは感じていないようだ。
ゆっくりと慎重に、エリシュカに教えられた地下牢への階段へと歩を進めた。
「確か、この階段だな。地下牢へ続くのは」
ドミニクが指す先に、ぽっかりと開いた地下への階段がある。
悠太は意を決し、周囲を警戒しながら階下へと降りた。
「妙だぞ、誰もいない……」
ドミニクはきょろきょろと地下牢の周囲を見回している。
「もしかしてわたくしたちの意図をつかんで、先に別の場所に移送されたのでしょうか?」
地下牢には誰も捕らえられていなかった。ただ、ここ最近まで使われていた形跡は見受けられたので、直近までラディムがいたのは間違いないだろう。ペスからも、わずかにラディムの匂いが残っていると伝えられた。
「不味いな。ということは、ボクたち、嵌められている可能性があるよ」
ドミニクはクシャっと顔をゆがめた。
このタイミングでのラディムの移送……。どう考えても、先日の悠太たちの侵入を受けての措置だろう。いずれ、再びラディム奪還にくると見込んでの。
であれば、この地下牢に何らかの罠が仕掛けられていたとしても、不思議はなかった。
「とりあえず、ここに留まるのは悪手ですわ。いったん、台所まで戻りましょう」
触らぬ神に祟りなし、そんな言葉が悠太の脳裏に浮かんだ。下手に地下牢を探り、何らかの罠が発動されると大変だ。ここはさっさと引き返すべきだった。
台所まで戻った悠太たちは、今後の方針を考え、頭を抱えた。
「さて困ったぞ。伯爵の陽動もそれほど長く持つとは思えないし、急がないといけない」
気ばかりが急く。
「ですが、お兄様の居場所がさっぱりですわね」
悠太はエリシュカから預かった簡易の宮殿見取り図を開いて、何かヒントはないかと考え込んだ。地下牢に捕らえられているとの情報以外、ラディムの現状についてはまったく分かっていなかった。その地下牢にいない以上、いったいどこを探せばよいのだろうか。
悠太はそこでふと、かつて子爵邸に捕らえられた時を思い出した。
「……エリシュカ様からいただいた見取り図を確認しているのですが、二階のお兄様の自室を調べてみませんか?」
「自室に軟禁かい? どうだろう……」
悠太の提案に、ドミニクは渋面を浮かべた。
「大した根拠があるわけではございませんの。でも、わたくしがかつて逃走の末に子爵に捕らえられた時、わたくしの自室に軟禁されましたわ。ですので、もしかしたらお兄様も、と」
可能性は薄いかもしれない。しかし、ほかに思いつく場所もなかった。
「まぁ、ほかに手がかりもないし、アリツェの言うとおりにしてみよう」
ドミニクも妙案が浮かばなかったのか、悠太の意見に賛同をした。
「最初の侵入経路自体は、失敗した前回と一緒だね。ちょっと、不安だなぁ」
ドミニクがポツリとこぼした。
「オーッホッホッホ! ドミニク様、弱気だなんてらしくないですわ。今回は伯爵様の陽動もありますし、何より、わたくしたちが宮殿の見取り図をしっかりと頭に叩き込んでおります。失敗するはずが、ありませんわ!」
悠太は高笑いを上げて、ドミニクの不安を吹き飛ばそうとした。
「まぁ、アリツェがそういうのなら、たぶん大丈夫なんだろな」
悠太の姿を、ドミニクは苦笑を浮かべながら見つめている。
「お任せあれ、ですわ!」
薄い胸をそらしながら、悠太はポンと胸板を叩いた。
『ご主人、そろそろ頃合いだっポ。今なら大分、正面側に衛兵がひきつけられているっポ』
そこに、念話でルゥからの報告が入った。
「ドミニク様、ルゥから連絡が入りましたわ。どうやら、侵入のタイミングが到来したようですわ」
「よしきた! お互い、頑張ろうか」
悠太とドミニクはうなずきあうと、ペスの精霊術で気配を消して、勝手口から宮殿に潜入した。
「ルゥの言うとおり、確かに衛兵の姿はないですわね。精霊術の行使の気配も見受けられませんわ。導師部隊もおそらくは、正面に回っているのでしょう。今のうちに、さっさとお兄様を救出しましょう」
悠太は慎重に周囲の様子を探ったものの、敵対する者の気配は感じなかった。ペスの鼻も、特に危険な臭いは感じていないようだ。
ゆっくりと慎重に、エリシュカに教えられた地下牢への階段へと歩を進めた。
「確か、この階段だな。地下牢へ続くのは」
ドミニクが指す先に、ぽっかりと開いた地下への階段がある。
悠太は意を決し、周囲を警戒しながら階下へと降りた。
「妙だぞ、誰もいない……」
ドミニクはきょろきょろと地下牢の周囲を見回している。
「もしかしてわたくしたちの意図をつかんで、先に別の場所に移送されたのでしょうか?」
地下牢には誰も捕らえられていなかった。ただ、ここ最近まで使われていた形跡は見受けられたので、直近までラディムがいたのは間違いないだろう。ペスからも、わずかにラディムの匂いが残っていると伝えられた。
「不味いな。ということは、ボクたち、嵌められている可能性があるよ」
ドミニクはクシャっと顔をゆがめた。
このタイミングでのラディムの移送……。どう考えても、先日の悠太たちの侵入を受けての措置だろう。いずれ、再びラディム奪還にくると見込んでの。
であれば、この地下牢に何らかの罠が仕掛けられていたとしても、不思議はなかった。
「とりあえず、ここに留まるのは悪手ですわ。いったん、台所まで戻りましょう」
触らぬ神に祟りなし、そんな言葉が悠太の脳裏に浮かんだ。下手に地下牢を探り、何らかの罠が発動されると大変だ。ここはさっさと引き返すべきだった。
台所まで戻った悠太たちは、今後の方針を考え、頭を抱えた。
「さて困ったぞ。伯爵の陽動もそれほど長く持つとは思えないし、急がないといけない」
気ばかりが急く。
「ですが、お兄様の居場所がさっぱりですわね」
悠太はエリシュカから預かった簡易の宮殿見取り図を開いて、何かヒントはないかと考え込んだ。地下牢に捕らえられているとの情報以外、ラディムの現状についてはまったく分かっていなかった。その地下牢にいない以上、いったいどこを探せばよいのだろうか。
悠太はそこでふと、かつて子爵邸に捕らえられた時を思い出した。
「……エリシュカ様からいただいた見取り図を確認しているのですが、二階のお兄様の自室を調べてみませんか?」
「自室に軟禁かい? どうだろう……」
悠太の提案に、ドミニクは渋面を浮かべた。
「大した根拠があるわけではございませんの。でも、わたくしがかつて逃走の末に子爵に捕らえられた時、わたくしの自室に軟禁されましたわ。ですので、もしかしたらお兄様も、と」
可能性は薄いかもしれない。しかし、ほかに思いつく場所もなかった。
「まぁ、ほかに手がかりもないし、アリツェの言うとおりにしてみよう」
ドミニクも妙案が浮かばなかったのか、悠太の意見に賛同をした。
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