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第八章 皇帝親征
19 私たちは双子だったのか
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(優里菜、主人格を交代するか?)
悠太と話したそうにしている優里菜に気を使って、ラディムは一歩引いた。優里菜は礼を言い、人格を浮上させる。
「……カレル、私だよ。ユリナ・カタクラだよ……」
優里菜はわずかに声を震わせ、悠太のキャラクター名を呼んだ。
「ユリナ!? もう一人のテストプレイヤーは、ユリナだったのか! でも、なぜ少年の体に……」
悠太は目をむいて仰天した。
「そういうカレルこそ、なんで私そっくりの女の子に入っているのかな?」
優里菜は鋭く悠太を見据えた。
「いや、ははは……。まぁ、成り行きで」
悠太は頭を掻きながら言葉を濁している。
「まあ今はその点は置いておいて、一つ聞きたいことがあるんだ。実はさ、この体の中に、なぜだかカレル――横見悠太君の記憶も入っているんだけれど、カレル、何か心当たりないかな?」
優里菜の人格が悠太の人格を消し去ってしまったのではないか。そんな推論を優里菜とラディムはしていたが、どうやら悠太の人格は無事にアリツェという少女の中に取り込まれていた。優里菜は、少しほっとした。
だが、そうなると、このラディムの体の中の悠太の記憶の正体がわからない。悠太の記憶の部分だけが二つに分裂して、ラディムとアリツェの体の中に別々に入った? いったいどうやって?
「なんだって? オレのこのアリツェの体には、オレとアリツェの人格しかないけれど、そっちはもしかして三重人格になっているのか? オレの人格が、もう一人いる!?」
突然の話に悠太は声が裏返っていた。優里菜の説明が悪かったせいか、悠太の人格部分もラディムの中にあると勘違いされた。
「あ、違うの。なぜだかカレルの分は記憶だけで、人格がないんだよ。カレル……あー、えっと、悠太君って呼んだほうがいいかな? これ、いったいどういうことだと思う?」
優里菜は慌てて訂正し、悠太の反応を待った。
だが、悠太からの答えはなかった。頭を振るだけだ。どうやら悠太にも、わけがわからないらしい。
「実は、アリツェはカレル・プリンツ前辺境伯の実子なんだ。それで、生まれたころの状況を調べて、なぜアリツェが遠縁の子爵家へ養子に出されたのかを調べようと思っていたんだが……」
悠太は話題を切り替え、この地に来た理由を話し出した。だが、この話も優里菜には衝撃だった。
悠太の転生素体であるアリツェの父も、カレル・プリンツ前辺境伯だった。つまり、ラディムとは父を同じくした血の繋がった兄弟になる。母が同じかどうかまでは、まだわからないが。
だが、優里菜にとってはあまり知りたくない事実だった。これで、優里菜は悠太の転生素体とは恋仲になれない。……だた、お互いに体の性別が逆転しているので、血がつながっていなくても恋人になれたかは少々怪しかったが。
「実は、このラディム君も前辺境伯の子なんだよね。子供は一人って聞いていたのに、ラディム君もアリツェちゃんも前辺境伯の子供?」
「おいおい、実の兄弟かよ……」
優里菜の言葉に、悠太は落胆したかのようにつぶやいた。
「ちなみに、アリツェちゃんの母親は誰かな?」
異母兄弟の可能性もあるので、ユリナは確認した。だが、聞いている範囲でのカレル前辺境伯を考えると、ユリナ・ギーゼブレヒト以外の女性とねんごろになっている可能性は、限りなく低いはずだ。
「母親は……、この世界の母の名は実は知らないんだ。アリツェは生まれた直後に、辺境伯家から遠縁の子爵家へ養子に出されていて、子爵家でも冷遇されていたから詳しい話は聞かされていない。システム上の母は……」
「ん? どうしたの?」
言いよどむ悠太に、優里菜は首をかしげた。
「君だ、ユリナだよ、母に選んだのは……」
悠太の顔は真っ赤に染まっていた。
「あ……、えと、悠太君も同じだったんだね。じゃあ、ラディム君とアリツェちゃんは、二人ともシステム上の両親が一緒だね。私たちの子供なんだ、どっちも……」
悠太との間に何とも言えない空気が漂う。
「あとね、アリツェちゃんのこの世界でのお母さんも、間違いなくラディム君と同じはずだよ。私が聞いている範囲では、前辺境伯はラディム君のお母さん――帝国皇女のユリナ・ギーゼブレヒトを溺愛していたみたいだし」
「ってことは、二人は双子?」
悠太の問いに、優里菜は首肯した。
悠太と話したそうにしている優里菜に気を使って、ラディムは一歩引いた。優里菜は礼を言い、人格を浮上させる。
「……カレル、私だよ。ユリナ・カタクラだよ……」
優里菜はわずかに声を震わせ、悠太のキャラクター名を呼んだ。
「ユリナ!? もう一人のテストプレイヤーは、ユリナだったのか! でも、なぜ少年の体に……」
悠太は目をむいて仰天した。
「そういうカレルこそ、なんで私そっくりの女の子に入っているのかな?」
優里菜は鋭く悠太を見据えた。
「いや、ははは……。まぁ、成り行きで」
悠太は頭を掻きながら言葉を濁している。
「まあ今はその点は置いておいて、一つ聞きたいことがあるんだ。実はさ、この体の中に、なぜだかカレル――横見悠太君の記憶も入っているんだけれど、カレル、何か心当たりないかな?」
優里菜の人格が悠太の人格を消し去ってしまったのではないか。そんな推論を優里菜とラディムはしていたが、どうやら悠太の人格は無事にアリツェという少女の中に取り込まれていた。優里菜は、少しほっとした。
だが、そうなると、このラディムの体の中の悠太の記憶の正体がわからない。悠太の記憶の部分だけが二つに分裂して、ラディムとアリツェの体の中に別々に入った? いったいどうやって?
「なんだって? オレのこのアリツェの体には、オレとアリツェの人格しかないけれど、そっちはもしかして三重人格になっているのか? オレの人格が、もう一人いる!?」
突然の話に悠太は声が裏返っていた。優里菜の説明が悪かったせいか、悠太の人格部分もラディムの中にあると勘違いされた。
「あ、違うの。なぜだかカレルの分は記憶だけで、人格がないんだよ。カレル……あー、えっと、悠太君って呼んだほうがいいかな? これ、いったいどういうことだと思う?」
優里菜は慌てて訂正し、悠太の反応を待った。
だが、悠太からの答えはなかった。頭を振るだけだ。どうやら悠太にも、わけがわからないらしい。
「実は、アリツェはカレル・プリンツ前辺境伯の実子なんだ。それで、生まれたころの状況を調べて、なぜアリツェが遠縁の子爵家へ養子に出されたのかを調べようと思っていたんだが……」
悠太は話題を切り替え、この地に来た理由を話し出した。だが、この話も優里菜には衝撃だった。
悠太の転生素体であるアリツェの父も、カレル・プリンツ前辺境伯だった。つまり、ラディムとは父を同じくした血の繋がった兄弟になる。母が同じかどうかまでは、まだわからないが。
だが、優里菜にとってはあまり知りたくない事実だった。これで、優里菜は悠太の転生素体とは恋仲になれない。……だた、お互いに体の性別が逆転しているので、血がつながっていなくても恋人になれたかは少々怪しかったが。
「実は、このラディム君も前辺境伯の子なんだよね。子供は一人って聞いていたのに、ラディム君もアリツェちゃんも前辺境伯の子供?」
「おいおい、実の兄弟かよ……」
優里菜の言葉に、悠太は落胆したかのようにつぶやいた。
「ちなみに、アリツェちゃんの母親は誰かな?」
異母兄弟の可能性もあるので、ユリナは確認した。だが、聞いている範囲でのカレル前辺境伯を考えると、ユリナ・ギーゼブレヒト以外の女性とねんごろになっている可能性は、限りなく低いはずだ。
「母親は……、この世界の母の名は実は知らないんだ。アリツェは生まれた直後に、辺境伯家から遠縁の子爵家へ養子に出されていて、子爵家でも冷遇されていたから詳しい話は聞かされていない。システム上の母は……」
「ん? どうしたの?」
言いよどむ悠太に、優里菜は首をかしげた。
「君だ、ユリナだよ、母に選んだのは……」
悠太の顔は真っ赤に染まっていた。
「あ……、えと、悠太君も同じだったんだね。じゃあ、ラディム君とアリツェちゃんは、二人ともシステム上の両親が一緒だね。私たちの子供なんだ、どっちも……」
悠太との間に何とも言えない空気が漂う。
「あとね、アリツェちゃんのこの世界でのお母さんも、間違いなくラディム君と同じはずだよ。私が聞いている範囲では、前辺境伯はラディム君のお母さん――帝国皇女のユリナ・ギーゼブレヒトを溺愛していたみたいだし」
「ってことは、二人は双子?」
悠太の問いに、優里菜は首肯した。
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