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第六章 一人の少女と一匹の猫
10 爆薬を作ろう
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「じゃあ、次は爆薬でも作るかな」
育成プログラムに沿った、火の魔術の第二段階の修練だ。
ラディムはポケットに入れた小石を取り出した。以前も作った、『生命力』を詰め込んである小石だ。
赤に色付けてある小石が、発動に『生命力』を要するもの。青に色付けてある小石が、誰でも発動できるもの。色を塗り分けて、一目でどちらがどちらかわかるようにしていた。
「ば、爆薬ですか!?」
ラディムの口から物騒な響きが飛び出したので、マリエは目を丸くしている。
「そう、これだ。これを造れれば護身用のアイテムにもなるし、いいと思う」
マリエに二色の小石を見せる。マリエは興味深そうに、ラディムの手のひらに載った小石を眺めていた。
「威力の調節が難しそう、ですね」
「火の魔術は生命力の調整が難しいよな。私もまだまだ修行中だ。一緒に頑張ろう」
マリエの言うように、火の魔術は『生命力』の調節が難しかった。放出する生命力が少なすぎれば発火せず、多すぎればあっという間に大惨事だ。
この爆薬についても、火力が足りなければ起爆しない不発弾になるし、多すぎれば生命力を注入した瞬間にその場で爆発してしまう。慎重に慎重を重ねなければ、術者自身が傷つくことになる。
だが、ラディムは確信していた。マリエの魔術制御の巧みさを見れば、それほど苦も無く成功するだろう、と。
「は、はいっ」
爆薬を前にマリエは少し身体をこわばらせていた。声が上ずっている。
「今日はこの辺にしておくか」
『生命力』を大分使ったのか、ラディムは疲労感と眠気を覚えた。これ以上は事故のもとになる。辞め時だった。扱う物が物だ、暴発させかねない。
「殿下、ありがとうございます。おかげさまで小さな爆薬程度なら何とか作れるようになりました」
ラディムの言葉を受け、マリエも手を止めた。やはり『生命力』の使い過ぎで疲労を感じているのだろう。少し笑顔に力がない。
特に、マリエはまだラディムほどの『生命力』量はないはずだった。ラディム以上に疲れていてもおかしくはない。
ただ、その成果は上々だった。最初は震える手つきで小石を扱っていたマリエも、二時間もするとすっかり慣れたのか、自分なりにいろいろと『生命力』の注入のタイミングなどを試しているようだった。いくつか納得のいく完成品も出来上がっている。
「本当に、マリエは筋がいいな。じゃあ、来週までにしっかりと爆薬を造れるよう練習しておいてくれ。発動に生命力が要るものと要らないものを、ね」
マリエの成果品を眺め、ラディムは感心した。やはり、初めて作った時のラディムの爆薬よりも、質が良い。
これなら少し難しい課題を与えても大丈夫と踏んだラディムは、二種類の爆薬を作成するようマリエに指示をした。マリエの才能なら、おそらく来週にはそれなりのものを仕上げてくるはずだ。
しかし、このペースで上達をしていったら、あっという間にラディムを追い抜いてしまうのではないかと、少し不安になった。師匠が弟子に抜かれるだなんて恥ずかしい。
「はい! 殿下をうならせるようなものを、作って見せます!」
褒められてまんざらでもないのか、マリエは自信満々に胸をそらした。
「うん、その意気だ。私も負けないぞ」
マリエの様子に、ラディムは微笑を浮かべる。
追い抜かれないように頑張らねばと、ラディムも気を入れなおした。
育成プログラムに沿った、火の魔術の第二段階の修練だ。
ラディムはポケットに入れた小石を取り出した。以前も作った、『生命力』を詰め込んである小石だ。
赤に色付けてある小石が、発動に『生命力』を要するもの。青に色付けてある小石が、誰でも発動できるもの。色を塗り分けて、一目でどちらがどちらかわかるようにしていた。
「ば、爆薬ですか!?」
ラディムの口から物騒な響きが飛び出したので、マリエは目を丸くしている。
「そう、これだ。これを造れれば護身用のアイテムにもなるし、いいと思う」
マリエに二色の小石を見せる。マリエは興味深そうに、ラディムの手のひらに載った小石を眺めていた。
「威力の調節が難しそう、ですね」
「火の魔術は生命力の調整が難しいよな。私もまだまだ修行中だ。一緒に頑張ろう」
マリエの言うように、火の魔術は『生命力』の調節が難しかった。放出する生命力が少なすぎれば発火せず、多すぎればあっという間に大惨事だ。
この爆薬についても、火力が足りなければ起爆しない不発弾になるし、多すぎれば生命力を注入した瞬間にその場で爆発してしまう。慎重に慎重を重ねなければ、術者自身が傷つくことになる。
だが、ラディムは確信していた。マリエの魔術制御の巧みさを見れば、それほど苦も無く成功するだろう、と。
「は、はいっ」
爆薬を前にマリエは少し身体をこわばらせていた。声が上ずっている。
「今日はこの辺にしておくか」
『生命力』を大分使ったのか、ラディムは疲労感と眠気を覚えた。これ以上は事故のもとになる。辞め時だった。扱う物が物だ、暴発させかねない。
「殿下、ありがとうございます。おかげさまで小さな爆薬程度なら何とか作れるようになりました」
ラディムの言葉を受け、マリエも手を止めた。やはり『生命力』の使い過ぎで疲労を感じているのだろう。少し笑顔に力がない。
特に、マリエはまだラディムほどの『生命力』量はないはずだった。ラディム以上に疲れていてもおかしくはない。
ただ、その成果は上々だった。最初は震える手つきで小石を扱っていたマリエも、二時間もするとすっかり慣れたのか、自分なりにいろいろと『生命力』の注入のタイミングなどを試しているようだった。いくつか納得のいく完成品も出来上がっている。
「本当に、マリエは筋がいいな。じゃあ、来週までにしっかりと爆薬を造れるよう練習しておいてくれ。発動に生命力が要るものと要らないものを、ね」
マリエの成果品を眺め、ラディムは感心した。やはり、初めて作った時のラディムの爆薬よりも、質が良い。
これなら少し難しい課題を与えても大丈夫と踏んだラディムは、二種類の爆薬を作成するようマリエに指示をした。マリエの才能なら、おそらく来週にはそれなりのものを仕上げてくるはずだ。
しかし、このペースで上達をしていったら、あっという間にラディムを追い抜いてしまうのではないかと、少し不安になった。師匠が弟子に抜かれるだなんて恥ずかしい。
「はい! 殿下をうならせるようなものを、作って見せます!」
褒められてまんざらでもないのか、マリエは自信満々に胸をそらした。
「うん、その意気だ。私も負けないぞ」
マリエの様子に、ラディムは微笑を浮かべる。
追い抜かれないように頑張らねばと、ラディムも気を入れなおした。
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