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 明日はようやくエリザベス、貴女との記念すべき婚姻の儀を迎える。

 
 ああここまでの道のりは本当に長かったよ。
 未だキャシーとの間に子を儲ける事は出来ないけれどもである。
 それ故に妹との関係を清算出来ずにいる事実は如何ともし難いがだっっ。
 まあその件に関しては取り敢えず棚へと置き、いや出来得る事ならば生涯に渡り厳重な鍵を取り付ければ、地中深くへ決して誰にも掘り起こせない場所へとキャシー諸共葬り去ってしまいたい想いは俺の心の中だけとする。


 それにしてもだ。
 婚姻前夜と言うのにも拘らずエリザベス、愛する貴女へほんの少しだけでも触れる事が許されないとは……。

 ほんのひと時とは言え愛する貴女の心が幻夢の世界へといざなわれている間の毎日は俺にとって至福の日々だったよ。

 何と言っても降嫁したキャシーは元王女とは言えだ。
 子を生す目的があると言うもののやはり頻繁に王宮へ留まる事も出来ず、キャシーの頼みの綱であった咲弥はリドゲート公爵のモノとなったらしく彼女の思う通りに動いてはくれないらしい。
 まあ王宮へ来れば公爵邸で抱えている鬱憤を慾と共に吐き出すキャシーへ、俺はよくも悪くも己自身を萎えさせる事無く勃足せる事が出来ていると感心してしまう。
 いや、それもこれも妹との行為の全てをエリザベス、貴女としているものだと思い込んでいるからこそなのだろう。

 きっと貴女がいなければ俺は公爵同様男としては不能へ陥っていただろうと断言出来る。

 
『慣例に御座いましては婚姻前夜は何があろうともお妃となられまするエリザベス様へ男性は近づく事は出来兼ねます。ええ、たとえご婚約者であり明日ご夫婦となられる殿下であろうともですわ』

 そうして俺は昔から仕えてくれる女官長より部屋を追い出されれば情けなくも暫くの間貴女の部屋の扉を睨みつけ、侍従へ促されるまま執務室へと向かったのだ。

 貴女へ触れる事の出来ない分そして明日より二週間は夫婦となって初めての旅行へも出掛けるのだからな。
 寂しい気持ちを抱えるも俺は明日から続く幸せに胸を躍らせながら何時もの倍速で執務をこなしたのだった。


 愛いている――――。
 貴女が眠りについた日よりずっと毎日俺は思いつく限りの愛の言葉を、八年間言い足りなかった分を補う様に昏々と眠り姫となった貴女へ語りかけてきた。
 
 でも明日になれば今度は貴女が幸せ過ぎて怖いと言うまで、いや怖いと言ってしがみ付いても尚貴女を愛しするよ。

 愛しい愛しいエリザベス。
 
 明日の今頃はもう貴女は俺の腕の中で幸せの涙を流しているのだろうね。
 今まで外の世界を見せられなかった分今度は俺の隣で今まで与えられなかった幸せを与えてあげるよ。

 ああ、今夜が最後だね。
 一人で眠るのは今宵が最後だ。
 明日からは決して貴女を放しはしない。
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