13 / 42
13
しおりを挟む
「クスクス、私はお兄様……いいえエセルの事なら何でも知っていてよ」
それは双子の妹キャサリン。
同じ顔の性別の違うもう一人の――――俺だ。
「エセルが誰を愛しいと想っているのかも、そしてその娘を何としても護り抜きたいと思っている。またそう遠くない将来エセルが何を企てているのかも全て私は知っているわ」
「キャシー……」
血を分けた美しい妹。
だが俺自身幼少より肉親より余り愛された記憶がない故なのか、キャシー程に肉親への情を追い求めてはいない。
そう両親とはただ単に俺とキャシーをこの世へ生み出した存在。
それ以上でもそれ以下でもない。
愛されぬのであれば最初から求めなければいいのだ。
幸い俺はこの国の王子として誕生した。
それ故生きる為に必要なモノは全て必要以上に与えられてはいる。
肉親の情以外は……。
だが妹のキャシーは俺とは違う意味での強欲だった。
俺が俺の唯一であるエリザベス、貴女と言う存在と出逢いそして貴女を護る為にあらゆる事へ強欲になるのであらばキャシーは肉親の情へ凄まじい執念を見せたのである。
まあキャサリン自身今更両親の愛を強請ろうとは思ってはいない。
それについては彼女も幼い頃よりそれなりに理解をしていたのだ。
赤子だった俺達が必死に待ち望んだ両親の愛情を得る事は出来なかったと言う現実。
だからキャシーは両親ではなくこの世で自身に誰よりも近い存在――――つまり双子として誕生しその片割れであるこの俺を欲したのである。
はっきり言って6歳くらいまでは何時も一緒の寝台で眠っていた。
何をするのも常に一緒で、この頃までは特に男女の差も大きく変わる事もないしまた何と言っても血を分けた兄妹なのだ。
乳母や城へ仕える者達も万が一の事なんて、そうこの俺自身もそこまでは考えが及ばなかった。
だが6歳を迎えてそろそろお互いが個人に与えられた私室で過ごす様になりそれと同時に俺は10歳で立太子をし、行く行くは未来の国王としての帝王学を始めありとあらゆる学問に剣術や魔術等へ費やす時間は多くなっていく。
それに未来の側近候補達との選別から始まり交流も深めなければいけない。
一方キャシーの将来は自国の有力な高位貴族若しくは他国の王家への輿入れをし、我が王家との絆をより強固なものとする。
それが王女として生まれた者の宿命。
当然キャシーもそうなるべくそれまでに何処へ出たとしても輝ける程の立派な淑女として日々学びを深めているのだと、俺も兄として妹に恥じない様に頑張らなければいけないと思っていた。
キャシーは最初から何処へも嫁ぐ意思等なかったのだ。
何故なら彼女の欲しいモノは何時でも彼女の目の前に存在していたからである。
その欲しいモノがこの俺自身。
お互いの寝室で別れて眠る様になってもだ。
真夜中になればキャシーは必ずと言っていい程俺の寝台へ潜り込んできた。
まあ最初の数ヶ月は双子と言えども妹は妹なのだな……何て今にして思えば実に可愛い事を考えていたであろう俺は思いっきり愚かでしかない。
夜が明ければ乳母達が一緒に眠る俺達を見て『駄目ですよお兄様の寝所へ何て淑女がする行動ではありませんわ』そう苦言を呈してはいても俺も含めて皆心の中では微笑ましいものと高を括っていたのだ。
だがそれが一体何時からなのだろう。
普通に離れて眠っていれば気が付くと何時の間にがキャシーが俺の身体へ抱き着くようになったのは……。
そして彼女の行動はそれを皮切りにどんどんとエスカレートしていく事となる。
眠っている間とは言え俺の頬だけでなく唇や頸へとキスをしてみたり、俺の手を引き寄せては自身のまだささやか過ぎる胸へと押し付けていたのである。
『おいキャシー俺達は血を分けた兄妹なんだ。余り変な事をするなよ』
それから俺は適当な理由をつけて扉の前に騎士を配備した。
すると今度はバルコニーから侵入するキャシーに俺は頭を悩まされてしまう。
『私はエセルが好きなの!! エセル以外私はいらない。エセルだけがこの世にいて私を愛してくれればそれでいいの!!』
キャシーの心の底よりの悲痛な想い。
理由は分からなくもない。
親に愛されない子供故にその代わりを欲せば何としても手に入れたいと望む行動を……。
『それでもだ。俺達は兄妹だから、俺は妹としてキャシーを愛してはいるがそれ以上には愛せはしない』
将来他人を愛せるかと聞かれればそれもまだわからない。
何しろ愛情を受け取りそこなったのだからな。
でもだからと言って実の妹とどうこうなんて考えてはいなかったのだ。
しかし全ては貴女との出逢いで俺達兄妹は決定的に変わらざるを得なくなった。
そして俺は何としてもあらゆるものよりエリザベス、貴女を護りたかったのだ。
それは双子の妹キャサリン。
同じ顔の性別の違うもう一人の――――俺だ。
「エセルが誰を愛しいと想っているのかも、そしてその娘を何としても護り抜きたいと思っている。またそう遠くない将来エセルが何を企てているのかも全て私は知っているわ」
「キャシー……」
血を分けた美しい妹。
だが俺自身幼少より肉親より余り愛された記憶がない故なのか、キャシー程に肉親への情を追い求めてはいない。
そう両親とはただ単に俺とキャシーをこの世へ生み出した存在。
それ以上でもそれ以下でもない。
愛されぬのであれば最初から求めなければいいのだ。
幸い俺はこの国の王子として誕生した。
それ故生きる為に必要なモノは全て必要以上に与えられてはいる。
肉親の情以外は……。
だが妹のキャシーは俺とは違う意味での強欲だった。
俺が俺の唯一であるエリザベス、貴女と言う存在と出逢いそして貴女を護る為にあらゆる事へ強欲になるのであらばキャシーは肉親の情へ凄まじい執念を見せたのである。
まあキャサリン自身今更両親の愛を強請ろうとは思ってはいない。
それについては彼女も幼い頃よりそれなりに理解をしていたのだ。
赤子だった俺達が必死に待ち望んだ両親の愛情を得る事は出来なかったと言う現実。
だからキャシーは両親ではなくこの世で自身に誰よりも近い存在――――つまり双子として誕生しその片割れであるこの俺を欲したのである。
はっきり言って6歳くらいまでは何時も一緒の寝台で眠っていた。
何をするのも常に一緒で、この頃までは特に男女の差も大きく変わる事もないしまた何と言っても血を分けた兄妹なのだ。
乳母や城へ仕える者達も万が一の事なんて、そうこの俺自身もそこまでは考えが及ばなかった。
だが6歳を迎えてそろそろお互いが個人に与えられた私室で過ごす様になりそれと同時に俺は10歳で立太子をし、行く行くは未来の国王としての帝王学を始めありとあらゆる学問に剣術や魔術等へ費やす時間は多くなっていく。
それに未来の側近候補達との選別から始まり交流も深めなければいけない。
一方キャシーの将来は自国の有力な高位貴族若しくは他国の王家への輿入れをし、我が王家との絆をより強固なものとする。
それが王女として生まれた者の宿命。
当然キャシーもそうなるべくそれまでに何処へ出たとしても輝ける程の立派な淑女として日々学びを深めているのだと、俺も兄として妹に恥じない様に頑張らなければいけないと思っていた。
キャシーは最初から何処へも嫁ぐ意思等なかったのだ。
何故なら彼女の欲しいモノは何時でも彼女の目の前に存在していたからである。
その欲しいモノがこの俺自身。
お互いの寝室で別れて眠る様になってもだ。
真夜中になればキャシーは必ずと言っていい程俺の寝台へ潜り込んできた。
まあ最初の数ヶ月は双子と言えども妹は妹なのだな……何て今にして思えば実に可愛い事を考えていたであろう俺は思いっきり愚かでしかない。
夜が明ければ乳母達が一緒に眠る俺達を見て『駄目ですよお兄様の寝所へ何て淑女がする行動ではありませんわ』そう苦言を呈してはいても俺も含めて皆心の中では微笑ましいものと高を括っていたのだ。
だがそれが一体何時からなのだろう。
普通に離れて眠っていれば気が付くと何時の間にがキャシーが俺の身体へ抱き着くようになったのは……。
そして彼女の行動はそれを皮切りにどんどんとエスカレートしていく事となる。
眠っている間とは言え俺の頬だけでなく唇や頸へとキスをしてみたり、俺の手を引き寄せては自身のまだささやか過ぎる胸へと押し付けていたのである。
『おいキャシー俺達は血を分けた兄妹なんだ。余り変な事をするなよ』
それから俺は適当な理由をつけて扉の前に騎士を配備した。
すると今度はバルコニーから侵入するキャシーに俺は頭を悩まされてしまう。
『私はエセルが好きなの!! エセル以外私はいらない。エセルだけがこの世にいて私を愛してくれればそれでいいの!!』
キャシーの心の底よりの悲痛な想い。
理由は分からなくもない。
親に愛されない子供故にその代わりを欲せば何としても手に入れたいと望む行動を……。
『それでもだ。俺達は兄妹だから、俺は妹としてキャシーを愛してはいるがそれ以上には愛せはしない』
将来他人を愛せるかと聞かれればそれもまだわからない。
何しろ愛情を受け取りそこなったのだからな。
でもだからと言って実の妹とどうこうなんて考えてはいなかったのだ。
しかし全ては貴女との出逢いで俺達兄妹は決定的に変わらざるを得なくなった。
そして俺は何としてもあらゆるものよりエリザベス、貴女を護りたかったのだ。
11
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【完結】初恋の彼が忘れられないまま王太子妃の最有力候補になっていた私は、今日もその彼に憎まれ嫌われています
Rohdea
恋愛
───私はかつてとっても大切で一生分とも思える恋をした。
その恋は、あの日……私のせいでボロボロに砕け壊れてしまったけれど。
だけど、あなたが私を憎みどんなに嫌っていても、それでも私はあなたの事が忘れられなかった──
公爵令嬢のエリーシャは、
この国の王太子、アラン殿下の婚約者となる未来の王太子妃の最有力候補と呼ばれていた。
エリーシャが婚約者候補の1人に選ばれてから、3年。
ようやく、ようやく殿下の婚約者……つまり未来の王太子妃が決定する時がやって来た。
(やっと、この日が……!)
待ちに待った発表の時!
あの日から長かった。でも、これで私は……やっと解放される。
憎まれ嫌われてしまったけれど、
これからは“彼”への想いを胸に秘めてひっそりと生きて行こう。
…………そう思っていたのに。
とある“冤罪”を着せられたせいで、
ひっそりどころか再び“彼”との関わりが増えていく事に──
君はずっと、その目を閉ざしていればいい
瀬月 ゆな
恋愛
石畳の間に咲く小さな花を見た彼女が、その愛らしい顔を悲しそうに歪めて「儚くて綺麗ね」とそっと呟く。
一体何が儚くて綺麗なのか。
彼女が感じた想いを少しでも知りたくて、僕は目の前でその花を笑顔で踏みにじった。
「――ああ。本当に、儚いね」
兄の婚約者に横恋慕する第二王子の歪んだ恋の話。主人公の恋が成就することはありません。
また、作中に気分の悪くなるような描写が少しあります。ご注意下さい。
小説家になろう様でも公開しています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる