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第四章 指し示される道
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しおりを挟む「さぁこちらへエルネスティーネ」
私を呼ぶルルさん。
そして私は未だジークヴァルト様の腕の中にいたりすると言うかジークヴァルト様、これって貴方全く降ろす心算はありませんよね。
ジークヴァルト様的にはご自分も一緒に移動する気が満載って感じ。
そうして私を抱えたまま普通に歩き始めるジークヴァルト様。
「エルネスティーネのみこちらへ来るのじゃ」
優し気な笑みを湛えたままのルルさん。
でも発した言葉は明らかな命令。
然も誰にも拒む事を許さないと発せられた言葉の端々には言霊が宿っている?
それでも――――。
「貴女をっ、これ以上危険な事に遭わせたくはない!!」
苦悶な表情を滲ませそう発したのはジークヴァルト様。
「ジーク逆らうな。俺達の目的を忘れてはいけない」
「これは決定事項だジーク。俺達には従うしかないよ」
そう私にも目的があったからこそここへ来たのだもの。
私だって本音を言えば物凄く胸がどきどきして怖い。
本音を言えばここに来ず、皆と一緒にいたいわ。
第一私はまだ9歳のお子様だもの。
何かを成す前に、まだ何も出来ない子供なの!!
許されるのであればお父様やお母様にずっと甘えていたい。
アルお兄様にそれからテアとも一緒にいたい。
でも、でも私は約束したの。
大神官長様の最期のお言葉。
ご自身の命を賭してまで私を助けて下さった大神官長様の最期のお言葉を護る為に、その後に聞かされた私の奇病の事もだけれど、きっと何か、ううん絶対にこれは繫がりがあるのだと思ったからこそ信じてここへ来たの。
だから――――。
「降ろして下さいませジークヴァルト様」
私は怖いのを必死に我慢して満面の笑みを浮かべてお願いをする。
「い、いやだが、私はエル、貴女を……」
どうしてこの人はこんなにも必死なのだろう。
何故7歳も年下の、ジークヴァルト様にしてみれば何処にでもいる子供の一人でしかない筈の私なのにどうして?
一侯爵家の令嬢である私に比べジークヴァルト様は公爵家の当主、普通に偉ぶっていても可笑しくはない。
なのにこの人はどうしてこれ程までに私を気遣うのかしら。
何時も真摯で、こちらの胸までも痛くなるくらい切ない眼差しと優しい物言い。
子供相手にそこまで必死になる必要が一体何処にあるのだろう。
今だってそうよ。
お兄様の仰る通りルルさんの指示に従い、素直に私を降ろしてくれれば何も問題はない。
ルルさんは王子であるお兄様でさえ逆らえないのよ。
幾ら公爵家の当主だからって王子様が出来ない事をジークヴァルト様がどうこう出来る筈はない。
そして私もそれをさせはしない。
理由なんてわからないわ。
ただルルさんの指し示す所へ行かなくてはいけないと、私の心の奥の更に奥よりそう語りかけてくるの。
この先へ進むのは私だけだってね。
心配してくれてありがとう。
どうしてここまで心配をしてくれるのかは本当に皆目見当がつかないのだけれどもね。
まぁそこは奇病絡みって事にしておきましょうか。
あ、そうそうジークヴァルト様。
全てが、うん全てを終えた先で私の中にある疑問について沢山お話をしたいわ。
お話をした先に何が待っているか何てわからない。
それこそジークヴァルト様の変態ぶりがこれ以上明らかになるのであれば、そこは私の持てうる全てのコネと力を余す事無く……って、所詮9歳児の使えるものは高が知れているわね。
まぁそこは最終的には王陛下へ可愛く、そしてあざとくお願いをしてでも婚約をなかった事にする心算よ。
「大丈夫です。直ぐに戻ってきます」
私は晴れやかに微笑みそうしてルルさんの許へと歩き出す。
「さぁエルネスティーネ」
差し伸べられる手へ自身の手を重ねた瞬間目が眩む様な眩い光へと包まれていく。
「「「エル!?」」」
お兄様達の声の方へ咄嗟に振り返れば空間がまた変わっていた。
嘘、これってまさかのお一人様ですか?
そう手を繋いだ筈のルルさんの姿もなかったの。
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