【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ～彼女の選んだ決断

第二章 干渉と発露する力

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　うん、落ち着いて、兎に角ここはちゃんと落ち着くのよエル。
　パニックになれば助かるものも助からないのだから……。


　とは言え異様な殺気を放つ青い花と言う存在が本当に不気味過ぎる。
　ここは恐ろしい魔獣や猛獣がいない、そう王家が管理をする王宮内の敷地にある、何処よりも安全且つ人工の森。
　王族が住まう庭の一角にある森の中にこんな不気味な植物が今まで存在した事があった？

　いやない!!
　それだけは強く断言出来るわ!!

　庭師のおじさんが、ううん騎士団の騎士様達もこの森の中まで何時もしっかりと巡回しているから、普通に問題なんて……ってただ今絶賛発生中、だわね。

　問題発生中ならば森の入り口にでも立ち入り禁止の看板やロープを張っておいて欲しい。
　幾ら野猿令嬢と呼ばれているからって、流石に立ち入り禁止の場所まで強引に入ったりはしないわよ!!

　何て今はどうでもよい愚痴を零すよりも先ずは無事に森を出る事だけを考えよう。
　それこそが今の私に必要なもの。
　ただ疲弊し過ぎている身体と心の状態で一体何が出来るのかしら。

　はぁ本当に魔法が使えたらよかったのに……。

　どんな属性でもいいわ。
　この際文句何て言わない。
　この状況を打破出来るなら何でもいいの!!

　でも現実に魔法は使えない。
　魔力はあるのにほぼほぼ使えないって、ないわ。
　
　出来るのは蝋燭に灯る様な小さな炎が関の山……って相手は植物、火は有効なのかもしれない。
　ただ小さな炎では花を燃やすのにも時間がかかると言うか、下手に刺激をしてとんでもない結果になりそうだからこれは却下。

　断言してもいい。

　使い慣れない小さな火を出して後悔しながらバッドエンド的な展開なっている私が目に浮かぶ。
　然も大泣きしながら……ね。

　しかし何時までも相手が何も行動を起こさない保証は何処にもない。
　相手が言葉を理解する生き物ならばまだ話し合いって抑々それは可能なのだろうか。
　相手が大量の小さな花だけに、何も解決策が思い浮かばない。

　ん、もしかすれば手で地道に一輪ずつ摘み取ればいいのかな。
　いやいやそれは絶対ダメでしょ。

　何故かはわからないけれどもそれだけは絶対駄目なのだと、脳裏に浮かんだのは16歳のエルネスティーネ。
　では自分で解決出来なければどうすればいいの？
　まさか誰かが私を見つけ――――⁉

　ふとその一瞬思い浮かんだ相手はあろう事か絶対に関わりたくはない相手。
　優しい眼差しで私を見て微笑むジーク様だった。

　
　アルお兄様でもなく。
　お父様でもない。
　王陛下や四人の優しいお兄様達でもなくジーク様だったの。

　一体何故？

　自分から距離を置こうって決めたばかりなのになんでジーク様を想ってしまうの？
　私の事なんてどうでもいいと思っている筈なのに、それにしてもあの優しい眼差しは何？

　駄目よエル、先程優しくされたからと言って簡単に絆されてどうするの。
　はぁ、本当に自分の心がわからない。
　
　それよりもジーク様が何を考えていらっしゃるのかなんて全くわからないよ。