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第一章 不可思議な現実?
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しおりを挟む「お前はどうしてそう狭量なのだ。ほんの僅かなエルとの逢瀬をゆっくり楽しませてくれても良いではないか」
仏頂面で文句を仰られている王陛下よりぶんと力づくで私を奪い返すお父様。
これって普通に不敬罪だと問われてもいい案件だよね。
しかし何故か王陛下もだけれど、お父様をはじめ周囲の人達は何も言わない……ってもしかしなくとも言えないの?
「ふん、逢瀬等と稚い子供の前でよくも言えたものですね、この破廉恥国王!!」
「ぁあ゛? 逢瀬の何が悪い。王子達とは違いエルは幾つになっても赤子独特のミルクの様に甘く、マシュマロの様に柔らかい女の子なのだぞ。こうして何時まで触っておっても飽きる事のない可愛らしさと愛らしさ。お前は本当にいいよなぁ。実の娘だから何時でもお触り放題ではないか!! せめて登城した時くらいわしが伯父としての権利を主張したとしても構わぬだろうが!!」
ここでスルっと私はお父様から陛下へと抱き抱えられてしまう。
抱っこちゃん人形ですか私は⁉
「その言葉!! その全てがが変態国王とたらしめるのですよ。何処の国の王が幼い少女に頬擦りからの抱っこ移動をして愉しむ変態がいるのですか!!」
「……ここにおるわ!!」
のう、可愛いエルよ……って私をこの痴話喧嘩に巻き込まないでぇぇぇぇぇ。
はぁ、こうなると幼馴染兼親友でもある二人はいい年をした大人で、この国のトップクラスの権力を持っているのに何故かまるで子供にしか見えない。
この様子を見るにつけ何時も思ってしまう事がある。
私の国って本当に大丈夫……なの?
「さぁエル、どうしようのない男達は放っておいて私と一緒に陽当たりの良いサロンでお茶にしましょう。ほらテアも一緒にお茶をしてくれるわね!!」
こちらはこちらで色々な意味で瞳をギラつかせ有無を言わせないオーラ満載だけれど、とは言え優し気な笑みを湛えておられる王妃様。
「うふふ、エルのお陰でテアまでよ。あぁ可愛らしい女の子達に囲まれる時間って本当に幸せよね。さぁこの様なむさ苦しい男達は放って置いて向こうへ行きましょう」
「「は、はいっ」」
一番逆らえないのはもしかしなくとも王陛下でもなくお父様でもない。
そうこの国で逆らえないのは絶対に王妃様と王妹であられるお母様のお二人だろう。
私は生まれた時からこの環境だったから特に何も感じないけれど、流石のテアでもこの状況に慣れるまで少し時間が必要だったみたい。
だって国のトップがこれではね。
それに何も両陛下と両親だけではないのもの。
アルお兄様とお兄様達も色々とややこしい。
まぁ言い換えればこれだけ愛されているって事は本当に幸せなのよね。
世の中には私の様に愛されてはいない人もいた訳で……。
だから余計に惹かれたのかもしれない。
ううん、押し付けとかそう言うものではなく、ただ純粋に傍にいたいと思えたの。
でもあの御方にしてみれば私の存在は最後まで疎ましかっ……んん、なんか変?
愛されている筈なのにどうして愛されてはいない、どうしてそんな想いが過るの?
胸の奥?それとも頭の中がまた霞始めてしまう。
あぁ王命による婚姻をあの御方へ問題なく破棄する為に、全ては乱心した私が引き起こした問題として、私から永遠に解放される様にと思っての行動だった。
想いが報われないのは悲しくて辛い。
憎しみさえも抱いてしまった。
それでも最終的に望んだのは自身の幸せよりもあの御方の幸せ……だった。
断片的に沈んでは浮く、浮いては沈む16歳の記憶。
少しだけ思い出したわ。
そうあれは断じて夢ではなく現実に起こったものよ。
そしてあの日私は……ジーク様の目の前で死んだ。
でも現実は今こうして私は生きている。
理由はわからない。
時間が巻き戻ったのかそれとも違う何かがあるのかもしれない。
だとしても何故態々ご丁寧にもジーク様と出逢う前ってどうなのよ。
何れにしても16歳だった頃も現在の私もここにこうして生きていると言う実感が乏しい。
何故そう思うのかも、そんな考えに至る理由すらわからない。
ただ――――……。
私の頭の中で更に霞が濃くなっていく。
きっとこれから先何度もこの不可解な現象が続くのは正直に言って余り宜しくない。
でもこれは私の意志で操作できな……。
※何時も拙作を読んで下さり有難う御座います。(o^―^o)ニコ
Hotランキングに入っていてΣ(・ω・ノ)ノ!です。
これも偏に皆様の応援の賜物です。
体調の許す限り更新を頑張っていきますね。
((*’∇’*)ヨロ((*・v・)シク( _ _)デス♪
Hinaki
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