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第五章 拗らせとすれ違いの先は……
【5】
しおりを挟む三回目の人生を終えた俺が新たな転生で最初にあげた声は――――。
「ふ、ふぇ、お、おぎゃあ、おぎゃあ……」
おいおい。
これは一体どういう状況なのだろうか。
俺は暫く理解が出来ないと言うよりもだ。
したくはない……と言った方が正しいのだと思うと同時に俺の身体はただ何とも情けない声を上げて泣く事しか出来なかった。
今回俺が転生したのは生まれたばかりの赤ん坊。
母親の胎内より出てきたばかりの、まだ目もよく見えもしない何の情報すらも得られないだけの赤ん坊だった。
そんな俺に出来た事はと言えば腹が空けば泣く。
すると母親ではない、恐らく乳母らしき者より乳を含まされ腹が満たされると寝る。
あるいは排泄した不快感で泣き出せば、やはり母親でない者達より色々と甲斐甲斐しく世話をされていた。
両親らしい者の存在は全くと言っていい程に感じられない。
だからと言ってそれに寂しさを感じる訳でもない。
しかし一般的な赤ん坊にしてみれば、これはこれで問題なのだと思うな。
暫くの間はこの様な繰り返しの毎日だった。
また今までの転生とは違い今度は最初から前世の記憶を持ってはいたけれども、情けない事に自分自身では何も出来ない。そんな日々を悶々と過ごしながらも想うのはやはり貴女の存在だった。
愛おしい貴女は今何処にいるのだろうか。
貴女は今何をしているの。
そして何を思っているのだろうか。
幸せの中で笑っているのだろうか。
不幸な目に遭っていないのだろうか。
願わくば今世でも結人と華の様に同じ時間を共有したい。
出来得る事ならば貴女の隣に立ち、貴女をあらゆるモノより全力で守りたい!!
こうして赤ん坊だった俺は特に問題もなくすくすくと、健やかに成長していった。
「クリスティアン、いい子にしていたかな?」
「ぶぅ、じ、じぃじ、ぃ?」
「おおそうかそうか、わしをじいじと呼んでくれるのか。クリスは可愛らしいのぉ」
よう祖父さん……俺はそう返事をした心算だったのだがな。
それにしても一歳と十ヶ月、もう直ぐ二歳になると言うのにだ。
何故か俺は周囲よりも少しだけ成長が遅かった。
いやそこは身体的な問題は何もない……と思う。
ただ育児放棄をした両親の傍で暮らしていた故に精神的なものからであったらしい。
そこは幾ら前世の記憶があれども身体と心の一部は幼子のもの。
抑々俺の両親は毎夜遊び歩くかはたまた久しぶりに顔を合わせれば喧嘩三昧だったらしい。
然も態々見せ付けるかの様に自分達の子供の前で――――だ!!
そこに俺への関心や配慮等は一切なかった。
ただ両親……いやクズな人間達にとって見物客が欲しいだけなのだろうな。
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