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第三章 それぞれの闇と求める希望の光
【15】
しおりを挟むそうして気づけば何とさっくりと五回目の転生を迎えておりました。
当然の事の様にわたくしはヴィヴィアン・ローズとして、また22歳の誕生日で全ての記憶を取り戻したのは言うまでもありません。
ただ今回の転生に置いてわたくしはある決意を致しましたの。
ふふ、その決意とは何時終わるやもしれないこの呪いと化した繰り返しの転生に御座いますが、今回よりは今までのヴィヴィアン・ローズではない生き方を、そして日本でもう二度と結人さんに逢えないのであればせめてこの無間地獄と化した転生を、いえ最初から高望みをしてはダメですわね。
そう最初はほんの少しでもいいのです。
今までの様に全てを抗う事なく享受するばかりの人生ではなく、譬えどの様に遠くとも一条の光と言う希望を追い掛けてみたくなりましたの。
ただの思いつきなのかもしれません。
若しくは昔のおっとりとした性格が戻ってきたのやもしれないのでしょうね。
ですのでほんの少しでも可能性と言うものがあるのであれば、わたくしは全てを終わらせる為に抗いたいと思ったのです。
何故今になって……と思う方もいらっしゃるでしょう。
それはですね、きっと日本で結人さんと出逢ったからなのだと思いますわ。
『華ちゃん、僕は君の病気を治せないのかもしれない。でも僕は決して諦めたりはしないよ。医療は日進月歩と言って日々変わるものなんだ』
あの時の、あの言葉は今も決して忘れはしません。
多くの先生が匙を投げ出したわたくしの病に、結人さんは最期まで諦めずに沢山の努力をして下さったのですもの。
結果は……最期の方は残念ながら記憶は酷く曖昧で、詳しい事は何一つとして覚えてはいません。
あら、珍しいですわね。
過去の転生後の最期はとてもはっきりと覚えていると言うのにどうしてあの時の記憶だけ……。
もしかすれば転生先が異世界だったのからなのかもしれないですわね。
譬えもう二度と逢えない世界の御方でも、結人さんは諦めずに困難と立ち向かう勇気をわたくしへ示して下さいましたもの。
それだけでわたくしはもう十分なのです。
三回目の転生で結人さんに出逢えたわたくしはこうして今……時間を要しましたけれども運命と向き合う勇気を得たのです。
とは申しましても一体何を、どうすればこの呪われた運命へ抗えられるのかは今のところ全くと言っていい程分からないのですけれどもね。
取り敢えずはまぁ皇帝陛下に命じられる前に、さっさとどなたかと結婚でもしてみましょうか。
えぇ腐ってもわたくしは侯爵家の令嬢ですもの。
きっと今までよりも頑張れば結人さんの様な方とは巡り合えなくともです。そう一人くらいは名乗りを……いえいえこちらより積極的に婚姻を結んでみようかと思います!!
あぁでも、でもですよ。
不美人ではないにしろわたくしは少しばかりぽっちゃりさんなのです。
兎に角先ずはダイエットへ勤しむ事に致しましょう。
そうして見事スレンダーな身体をゲットし、何が何でも35歳までに……いいえ34歳の社交シーズン前までには何としても結婚相手をモノにしてみましょう。
ですので結人さん、遠い世界よりどうかわたくしを応援して下さいね。
何時かこの運命に見事打ち勝ってみせますわ。
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