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第三章 それぞれの闇と求める希望の光
【10】
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♡ ◇ ♡
あれは今より約十八年前の事でした。
わたくしミルワード侯爵家が息女ヴィヴィアン・ローズ・コッカーは本日を以ってついに22歳となりましたの。
また昨夜の就寝前までのわたくしと今のわたくしはこの数時間で大きく変わってしまったのです。
えぇ勿論表面的な、その……ぽっちゃりさんなわたくしの体型は昨夜のもの、いえ以前と全く寸分違わず変わりはしませんよ。
本音を言えばほんの少しだけスリムな体型に憧れているのはここだけの秘密……です。
あぁ今はその様な体型なんて些事はどうでも良いのです。
それよりも何よりもわ、わたくしは昨夜、えぇ夢の……いいえあれは決して夢ではないのです!!
あれは、そう世にも恐ろしい現実と言う名の過去世をわたくしはまたしても思い出してしまったのです。
朝になり前世を思い出したわたくしは寝台より飛び起きればです。直ぐに支度部屋の奥にある姿見の前へと向かえば、やや緊張した面持ちでわたくしは自分自身の姿を繁々と興味深げに見つめます。
あらまあ。
まあまあ、やはり毎回の事とは言え二十代の若いお肌にはしっかりと張りがありますわっ。
それにシミ……いえ前も今と変わらずシミなんてものは最初から存在してはいませんでしたわね。
そして残念ながら体型は相変わらずのぽっちゃりさんにほんの少し気分が下がりました。
でも肌には艶もあり全体的に若々しさが漲っているのは正直に言ってとても嬉しいのですが……。
「あぁこれが後二十年もすれば、いえ正確には後十九年で何もかもボロボロになってしまうのね」
見た目の身体だけではなくわたくし自身の心の何もかも全てがボロ雑巾の様な無残な姿へと変貌してしまうのです。
このわたくしの記憶が正しいのであれば恐らく今回で六度目となるのでしょう。
そしてこの忌まわしくも悍ましい全ての過去世に置いてわたくしはとある御方と政略結婚をしておりました。
お相手は現大公殿下の嫡男であらせられるプライステッド公爵様。
皇家に名を連ねられ皇位継承は第三位と言う尊い身分だけでなく、その傍らで魔導省長官を立派に務められておられるとても優秀な殿方です。
ですが旦那様はとても若く……えぇ何とわたくしとは12歳も年齢差がありましたの。勿論わたくしの方が年上ですよ。
だから最初の、一度目人生での皇帝陛下より婚姻を命じられた際に不敬にも思ってしまいましたのよ。
何故この様な年増の女であるわたくしを若くも未来ある殿方の伴侶となされるのだろうかと。
また婚約期間そして婚姻後に置いても男女の年齢差が逆ならばどれ程良かったのだろう……と何度思った事でしょう。
ですが何と申しましてもわたくしと旦那様は貴族なのです。
自由恋愛による婚姻等認められよう筈なんてありませんもの。
陛下がお命じになられれば譬え意に添わなくとも否とは口が裂けても申せません。
それを唱えれば待っているのは自らの死――――だけではなく、わたくしの我儘によって我が侯爵家だけでなくミルワード家に連なる者全ての未来を永遠に絶つ事となるでしょう。
また当然の事ですがお互いに愛情なんてものは存在しませんよ。
御覧の通りわたくしは旦那様よりも随分と年上なだけではなく、社交界の華となる事も出来ない冴えない娘ですもの。
若く容姿端麗で、地位や身分と何から何まで完璧な旦那様にしてみればきっとわたくしと言う妻は邪魔者以外の何物でもなかったのでしょう。
あ、何もいじけている訳ではないのですよ。あくまでもわたくしはこれまでにあった事実を述べているだけなのですからね。それにわたくしと旦那様の婚姻の経緯は貴族間の派閥の均衡を保つ為だけのものでしたから……。
あれは今より約十八年前の事でした。
わたくしミルワード侯爵家が息女ヴィヴィアン・ローズ・コッカーは本日を以ってついに22歳となりましたの。
また昨夜の就寝前までのわたくしと今のわたくしはこの数時間で大きく変わってしまったのです。
えぇ勿論表面的な、その……ぽっちゃりさんなわたくしの体型は昨夜のもの、いえ以前と全く寸分違わず変わりはしませんよ。
本音を言えばほんの少しだけスリムな体型に憧れているのはここだけの秘密……です。
あぁ今はその様な体型なんて些事はどうでも良いのです。
それよりも何よりもわ、わたくしは昨夜、えぇ夢の……いいえあれは決して夢ではないのです!!
あれは、そう世にも恐ろしい現実と言う名の過去世をわたくしはまたしても思い出してしまったのです。
朝になり前世を思い出したわたくしは寝台より飛び起きればです。直ぐに支度部屋の奥にある姿見の前へと向かえば、やや緊張した面持ちでわたくしは自分自身の姿を繁々と興味深げに見つめます。
あらまあ。
まあまあ、やはり毎回の事とは言え二十代の若いお肌にはしっかりと張りがありますわっ。
それにシミ……いえ前も今と変わらずシミなんてものは最初から存在してはいませんでしたわね。
そして残念ながら体型は相変わらずのぽっちゃりさんにほんの少し気分が下がりました。
でも肌には艶もあり全体的に若々しさが漲っているのは正直に言ってとても嬉しいのですが……。
「あぁこれが後二十年もすれば、いえ正確には後十九年で何もかもボロボロになってしまうのね」
見た目の身体だけではなくわたくし自身の心の何もかも全てがボロ雑巾の様な無残な姿へと変貌してしまうのです。
このわたくしの記憶が正しいのであれば恐らく今回で六度目となるのでしょう。
そしてこの忌まわしくも悍ましい全ての過去世に置いてわたくしはとある御方と政略結婚をしておりました。
お相手は現大公殿下の嫡男であらせられるプライステッド公爵様。
皇家に名を連ねられ皇位継承は第三位と言う尊い身分だけでなく、その傍らで魔導省長官を立派に務められておられるとても優秀な殿方です。
ですが旦那様はとても若く……えぇ何とわたくしとは12歳も年齢差がありましたの。勿論わたくしの方が年上ですよ。
だから最初の、一度目人生での皇帝陛下より婚姻を命じられた際に不敬にも思ってしまいましたのよ。
何故この様な年増の女であるわたくしを若くも未来ある殿方の伴侶となされるのだろうかと。
また婚約期間そして婚姻後に置いても男女の年齢差が逆ならばどれ程良かったのだろう……と何度思った事でしょう。
ですが何と申しましてもわたくしと旦那様は貴族なのです。
自由恋愛による婚姻等認められよう筈なんてありませんもの。
陛下がお命じになられれば譬え意に添わなくとも否とは口が裂けても申せません。
それを唱えれば待っているのは自らの死――――だけではなく、わたくしの我儘によって我が侯爵家だけでなくミルワード家に連なる者全ての未来を永遠に絶つ事となるでしょう。
また当然の事ですがお互いに愛情なんてものは存在しませんよ。
御覧の通りわたくしは旦那様よりも随分と年上なだけではなく、社交界の華となる事も出来ない冴えない娘ですもの。
若く容姿端麗で、地位や身分と何から何まで完璧な旦那様にしてみればきっとわたくしと言う妻は邪魔者以外の何物でもなかったのでしょう。
あ、何もいじけている訳ではないのですよ。あくまでもわたくしはこれまでにあった事実を述べているだけなのですからね。それにわたくしと旦那様の婚姻の経緯は貴族間の派閥の均衡を保つ為だけのものでしたから……。
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