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第二章 五日後に何かが起こる?
【21】
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嘘っ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘よぉぉぉおおおお⁉
こ、こんな事って絶対にないしあり得ない!!
だって、だってあたしは――――っ⁉
「ほぉ、まだその様に元気があるとはな。だがまだ償いは始まったばかりだ。お前の犯した大罪に見合う罰をこれよりその身体で以って償わなければならぬ。果たしてその貧相な身体で何処まで償いきれるか見ものだな」
ひ、貧相?
し、失礼なっ。
幾ら愛しのリーヴァイだからって言っていい事と悪い事がある。
それに私の身体は確かにリーヴァイの言う通りスレンダーだけれど、これでもちゃーんと出ているところは出て、引き締まっているところは引き締まっているし、何処かのワイン樽の様な見苦しい身体なんかと一緒に――――ひぃぃぃぃぃぃ!?
「あがががっ!?」
「黙れ、聞くに堪えぬ声を一切出すのでない」
だ、だけどリーヴァイ……いっ、あんたたった今私の左の太腿へ氷の塊を突き刺したじゃんっ!!
それも嗤いながら――――あがぁ!?
「反抗的な目は邪魔」
「い、ぃいいいいぃぃぃ……っ⁉」
こ、殺されるっ!!
間違いなくリーヴァイは今ここであたしを殺す気満々だっ!!
仄暗い狂気に満ちた綺麗過ぎる表情に緋色の瞳が……あぁ今はそれが黒か赤かなんてわからない。
ただ分かるのは、どす黒い闇に染まりつつあるだろう深みの、ダークレッドを思わせる血の様な赤い瞳がっ、私の全てを射抜いて、いる。
い、今直ぐにでも逃げなければあたしはきっとさっきの様に指先一つで簡単に、愛するリーヴァイによってあたしは惨たらしく殺される!!
その証拠にリーヴァイの口の端は綺麗な弧を描く様に吊り上がりればよ。
息も絶え絶えにならんとしている獲物を嬲り殺す事をめっちゃ愉しむ獣の様に、ほら……今も絶賛愉し気に右の人差し指を動かし――――ってダメぇぇぇぇぇ⁉
「ぎゃっ、ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃ〰〰〰〰っ⁉」
やや細めの氷柱があたしの右の拇趾の爪上からぶっすりと、然も一瞬ではなくじっくり時間を掛けてぐりぐりと貫いていった!?
地味に、いやいや結構な激痛で、あたしは細い氷柱を何とか抜きたいと思いつつも、既に右肩と左の太腿をぶっとい氷柱で床に固定されている為に足先へなんて手を伸ばす事が出来ない!!
そして身体の三か所からは激痛だけじゃあない。抑々氷柱って普通に冷たい氷の塊なのよ。
だから貫かれた痛みと一緒に氷柱の余りの冷たさでじんじんと、痛みにも似た痒みと傷口からは血がどくどくと鼓動を打つ毎に駄々洩れ状態だし、暫くすれば普通に頭の芯がぼーっとしていく。それに段々痛みもわかん、なくなってきた?
ああもしかしてこれは夢?
ただの悪夢……そう思えぎゃあっ、ぁ、あ、ああぁあああぁぁぁぁっ⁉
「何処へ脳みそを散歩させている。抑々お前に散歩をさせられる程の脳みそはもとより存在してはいないだろうが。大体こんなものは前菜にもならん。ふ、喜べ糞虫よ。お前にはこの俺が腕によりをかけ当家の客人として正餐で持て成してやろう」
仄暗い笑みをあたしだけに向けてくれるリーヴァイに、一瞬心臓が鷲掴みにされたのかと思うくらいぎゅっと胸が苦しくなった途端、あ、ぁ、ああっ、熱い!!
「いやああああぁぁぁぁっ、あ、あ、頭がっ、髪が熱い熱い熱い熱い熱い熱いぃぃぃぃぃ!?」
「なんと氷で冷えた身体を温めてやろうと、これでもささやかながら温情を掛けた心算なのだがな。しかしこうも煩くてはかなわん」
むっとした表情のままリーヴァイは水魔法であたしを全身水浸しにしやがった。
頭の火が消えたのは良かったけれど、こ、こいつめっちゃヤバくね?
確かに闇を抱えたリーヴァイはあたしの最推しのキャラだ。
でもだからと言ってその攻撃対象が何であたしなのっ!!
あたしはこの世界で唯一リーヴァイと心を通わせられるヒロインなんだよっ。
あんなワイン樽女なんかじゃあなく、華奢でめっちゃ可愛いあたしがリーヴァイの……っ⁉
「お前の思考は訳が分からん上に迷惑極まりない。だがそんなお前にもわかる事を教えてやろう。愚かで糞虫以下の娘を持ったアップソン伯爵……つまり俺の学生時代からの心優しい親友は、今回ばかりはお前のやらかし過ぎたその責を負うと言いつい先程妻を殺し自らも自害したのだ。そして死の間際まで血の繋がらぬお前の助命嘆願をしていた」
「え? ぅ、そ、嘘、嘘でしょ? だ、だってお義父様とお母様がどうし……」
なんでお義父様とお母様が?
どうして?
なんでよっ!!
優しいアルは兎も角あのお母様がどうしてっ!!
あたしには到底理解が出来なかった……って言うか、理解したくはなかったのだ。
だってあのお母様だよ。
あたしくらいに我儘で自由奔放で、何時もアルを困らせていたお母様が何で、何でアルと、アル一緒に……ぁ、アルが無理やり殺し――――。
「ぎゃあああああああっ⁉」
何の前触れもなく行き成り氷柱があたしの右眼を、眼球を鈍い音と共に貫いていった。
あたしの身体は受けた傷口より血が、強烈な激痛で意識が徐々に薄らいでいく。
その証拠に口の端よりだらしなく涎が、瞳からは血と涙がだらだらと流れていく。
だけどリーヴァイはまだまだ満足はしてはいない。
あたしにはわかる。
だってそのくらいあたしは彼の事を愛していた――――けれども今は何故かそんな愛情よりも恐怖が上回っていた。
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