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第二章 五日後に何かが起こる?
【1】
しおりを挟む最近色々と悩み多きお年頃……らしきものに何時の間にか突入していたヴィヴィアン。
だが悩みがあろうとなかろうと関係なく今日もプライステッド公爵夫人としての務めが彼女を待っている。
勿論彼女自身この五年もの間一日足りともその務めより逃れようと思ってはいない。
そう公爵家の妻である限りは……。
そんな中諸事情によりヴィヴィアンは未だ残る全身の気怠さと秘所に残る異物感らしき存在を引き摺りつつも、何時もより気持ち重い身体をよいしょと小さな掛け声と共に奮起して起き上がる。
「「「お早う御座います奥方様」」」
ヴィヴィアンの目覚めと同時に寝室へと入ってきたのは、シンディーの代理として彼女付きを兼務するメイド長のナタリーとチェンバー・メイドのリラとエイミーの三人であった。
急遽決められたとはいえ彼女達は一切無駄のない動きで、女主人であるヴィヴィアンの支度を素早く整えてくれる。因みに今日の外出予定がないヴィヴィアンの装いは深い青い色の飾りの少ないシンプルだけれど上品で落ち着きのあるデイドレスである。
「ねぇナタリー、あなた自身もヘッド・ハウスメイドとして色々忙しいでしょうから、何も態々シンディーの代わりにあなたまでわたくしへ付かなくともいいのよ。わたくしの相手はここにいるリラとエイミーの二人でも十分足りているのですもの。あ、も、勿論シンディーが要らない娘だなんて事はないのよ。あなたを含めて皆わたくしにしてみればとても可愛い娘達なのですもの。ただ、ね……」
一瞬仄暗い表情を見せるヴィヴィアンの様子に三人は思った。
優しい奥方様にこんな表情をさせるだなんてっ、あの阿婆擦れ令嬢絶対に許すまじ!!
それから旦那様も一度……うーん、そうだわ使用人全員で説教大会でも開いてやるわ!!
「奥方様どうかお心落しのなきようにして下さいませ。私達を含め、プライステッド公爵家へ仕える者達は皆何があろうとも奥方様の味方です!!」
「ナタリー?」
支度が整い鏡に映る自身の姿をぼんやりと見つめていたヴィヴィアンは、気が付けば傍近くで鼻息荒くまた若干興奮気味のナタリー達のその様子に思わず当惑してしまう。
「「そうですわよ奥方様っ。当家の女主人は奥方、ヴィヴィアン様ただお一人だけですもの!! あの様な伯爵家風情の、然も昨日のあれは本当に今でも信じられませんわっ。公爵家に対する礼儀や礼節全てにおいて問題のある女等絶対に問題外です!!」」
「皆……有難う。あなた達の気持ちはとても嬉しいけれど駄目よ。その様な事を言ってはいけないわ。それにどの様な方だとしても今サブリーナ嬢のお胎の中には旦那様、の……」
そうこれは避けては通れない運命。
これまでこのルートだけは何としても避けたいとヴィヴィアン自身何度も運命に抗ってきたと言うのにだ。
だがどれ程彼女が足掻いた所で結局何故かこのルートへと辿り着いてしまう。
おまけに今回はそれだけではない。
まさかの腹ボてエンドに加え何か訳のわからない病気疑惑まで浮上しているのである。
確かにサブリーナの登場に全く動揺はしなかった訳ではない。
12歳と言う年の差がある夫婦なのだから何時かは浮気や愛人問題の一つや二つはあっても不思議ではないと、ヴィヴィアンは婚前より覚悟をしていたのだ。
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