15 / 120
第一章 突然の訪問者
【13】
しおりを挟む旦那様はその伯爵邸であの害悪令嬢と初めて会ったそうです。
『私、貴方のお嫁さんになって差し上げるわ!!』
突如何故か身分的に下の立場である害悪令嬢よりの上から目線発言と同時に、旦那様とはまた違う意味合いの拗らせと申しましょうか、はたまた迷惑な付き纏いが始まったのです。
然も相手は11歳も年下の害悪令嬢。
一方はあらゆる力と権力をフル活用し捲る年季の入ったストーカー……げふんげふん旦那様とは違い、令嬢の付き纏いとは申せまだ幼かった事もあり社交シーズンで、帝都にいる間だけと言う限定的でささやかなモノでした。
まぁこのささやかと言う判断自体が既に間違いで、その結果此度の件を招いてしまったのでしょう。
きっとこれも全て旦那様の奥方様に対するストーキングと言う名の護衛のお陰で、私達の精神もかなり病んでいたのかもしれません。
ですが害悪令嬢のストーキングも旦那様のご結婚前夜まではある意味大変でしたがその後はぱったりとなくなり、最近になって漸く諦めたのかと安堵していたのがこれまた問題でした。
まさかこの様な策に出るとは、そして懐妊が真実なのであれば害悪令嬢の胎の中には次代の……いいえっ、そのような事等決してあってはなりません!!
旦那様は本当に心より奥方様を愛しておられるのです。
奥方様が当家へ嫁してこられ早五年、いえそのずっと前より私共は奥方様を想われる旦那様を見ておりました。
また旦那様を真実の意味で幸せに出来得るのは奥方様ただお一人だけなのです。
故にお二人の幸せの為にも此度こそ害悪令嬢を完全に闇へと葬りましょう。
えぇ今まで放置していた事が全ての間違いだったのです。
幾ら伯爵令嬢とは言えこの大陸のほぼ全土の幸せを比べれば、害悪令嬢の命一つ等些末でしかありません。
奥方様、私はお二人のお幸せの為に此度こそ動かせて頂きます。
ですからどうか早まったお考えと軽はずみな行動だけはしないで下さいませ。
このダレン・バーナード・フィンドレイ、衷心よりお願い申し上げます。
しかし旦那様、本当にこの害悪令嬢の妄言は真実ではありませんよね?
私も男の端くれです。
何か突発的――――なご事情で一夜の過ちと言うモノが本当にありましたらその時はです。
私は、いえ私を含め屋敷内で仕える者達は全力で以って旦那様を屠らせて頂きます。
そう熱く心の中で語るダレンの右腕にも隣にいるシンディーの右腕と同じ腕輪が嵌められている。
だが生憎ながらきちっと一部の隙もなく燕尾服を着こなしている故にそれは誰にも気づかれてはいない。
それを身に着けているダレン自身がこの腕輪へ静かに誓いを立てていたのだ。
全ては奥方様のお幸せの為に……。
52
お気に入りに追加
3,410
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる