11 / 120
第一章 突然の訪問者
【9】
しおりを挟む「きゃっ、や、止め……!?」
「煩い黙れっ、この俺様が直々に見てやると言っているんだ!! いいからさっさと足を拓けよ!!」
「あははっ、やだぁこの子ってば泣いちゃっているじゃない。ふーん、もしかしてさ、そ~んなにぃ、カートにあそこを見られるのがもしかしてぇ、本当は嬉しいんじゃあないのかしら」
「ち、違、違いましゅ!!」
「やあだこの子ってこういう時にそんなあざとい言い方するなんて!! 態々嫌がっている振りまでしてさ。まだ私とおんなじ7歳の癖に恐れ多くも伯爵家と縁づく事まで考えちゃっているのかなぁ? 同じ女の子だけれど私はちょっと好きになれないかなぁ。ほらカートもさ、折角色目を使ってくれる子なんだから、もう遠慮しなくってもいいって。それにここには煩い大人は来ないしぃ、私がこのお茶会の女王様なんだもの。ね、だから早く女王様の言う事を聞いてよぉ」
「う、うん。そ、それもそうだな。ははっ、サブリーナ女王様の仰せのままに。さぁ仲良く始めようぜ。俺は以前からお前――――⁉」
ブンっっ
ドカッッ
ぐにゅんっっ
ガラガラガッシャ――――んん!?
もう散々胸糞の悪い会話をだらだらと聞かされてきたのです。
気付けば私は馬鹿共の囲みを問答無用で突破すれば、勿論そこは突破するまでにお馬鹿な子息達へそれぞれの糞みたいな急所をしっかりと一つ一つしっかりと蹴り上げ、中には踏み潰したりもしましたね。ま、あれは軽い事故って事にしておきましょう。
それに〇〇が破裂しようが知った事じゃない!!
私は昔から父と兄様より加減の出来ない事でよく注意を受けていましたが、今回はその匙加減をする必要すらないでしょう。何故ならアレは人間の皮を被った魔獣なのです。言わば私の行為は正当防衛です。
そうして見事囲みを突破した私は貴族令嬢としてでなくっ、一人の女性としての尊厳を失いかけた男爵令嬢へ真っ白なテーブルクロスマジシャン宜しくと言った具合に素早くテーブルより引き抜けば、そっとそれで令嬢の身を包み隠しました。
あぁそうですね。最後の派手な音はお茶会の為にこれでもかとお菓子やフルーツを盛られているだろう大きなテーブルに掛けられていた真っ白なテーブルクロスを引き抜いた時に生じた音です。
当然の事ながら食べ物達には大変本当に申し訳ない事をしたと心より反省をしましたよ。
何故なら私はマジシャンではないのですからね。
また無残にも床へ散乱してしまったそれらを片付ける労力を押し付ける事となったアップソン家の使用人達にも……。
ですが敢えて私は使用人達に謝りはしません。
何故ならこの場にいた使用人は皆立派に成人した者達なのです。
それなのに幾ら仕えるべき娘達とはいえっ、後もう少し私がここへ戻るのが遅ければ――――いえっ、今でも十分問題でした。
そう7歳の稚い少女は力尽くで仰向けに床へ倒されただけではなく、カートと呼ばれし馬鹿子息に馬乗りにされ、レモン色のフリルとリボンをあしらった可愛らしいドレスは膝上まで捲られればです。ほっそりとしたカモシカの様な足を露わにされていたのです!!
実行犯はカークと呼ばれし子息ですけれどもです。それを唆したのが同じ同性だと思えば吐き気だけでなく眩暈まで感じずにはいられませんでした。
ですので私は令嬢へテーブルクロスで包む前にカーク子息の急所を他の誰よりも強く蹴り上げました。
「っ――――⁉」
カーク子息は蹴り上げられた瞬間狂った様に撫でつけられた黒髪を振り乱し、そうして馬鹿みたいに何度もぴょんぴょんと飛び上がった後は床へゴロゴロと勢いよく蹲りながら今もまだ悶絶しています。
ふーむ、どうやらクリーンヒットだったみたいで呻き声すらも上げる事が出来ないようです。
ザマアミロ。
しかし私には存在しない器官故にその衝撃は測り兼ねますね。
まぁ大事な所が将来使い物にならなくとも然して問題はないと言いますか、将来害悪にしかならないモノを今のこの段階で駆除出来たのは僥倖としか思えないでしょう。
そしてただ状況を見つめるだけの使用人と言う大人達の罰として、散らかったものの片づけくらいは何て事のない罰にもなり得ないでしょうね。
「ごめんなさい、気づくのが遅くなって……」
「い、いえっ、あ、あ、ありが……!!」
随分と心細くまた深く傷ついた事でしょう。
私は彼女をそっと抱き上げそのまま連れ帰ろうと思った時でした。
ええっ、アイツがですよ、あの阿婆擦れが更に絡んできたのは……。
41
お気に入りに追加
3,382
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
アラフォー王妃様に夫の愛は必要ない?
雪乃
恋愛
ノースウッド皇国の第一皇女であり才気溢れる聖魔導師のアレクサは39歳花?の独身アラフォー真っ盛りの筈なのに、気がつけば9歳も年下の隣国ブランカフォルト王国へ王妃として輿入れする羽目になってしまった。
夫となった国王は文武両道、眉目秀麗文句のつけようがないイケメン。
しかし彼にはたった1つ問題がある。
それは無類の女好き。
妃と名のつく女性こそはいないが、愛妾だけでも10人、街娘や一夜限りの相手となると星の数程と言われている。
また愛妾との間には4人2男2女の子供も儲けているとか……。
そんな下半身にだらしのない王の許へ嫁に来る姫は中々おらず、講和条約の条件だけで結婚が決まったのだが、予定はアレクサの末の妹姫19歳の筈なのに蓋を開ければ9歳も年上のアラフォー妻を迎えた事に夫は怒り初夜に彼女の許へ訪れなかった。
だがその事に安心したのは花嫁であるアレクサ。
元々結婚願望もなく生涯独身を貫こうとしていたのだから、彼女に興味を示さない夫と言う存在は彼女にとって都合が良かった。
兎に角既に世継ぎの王子もいるのだし、このまま夫と触れ合う事もなく何年かすれば愛妾の子を自身の養子にすればいいと高をくくっていたら……。
連載中のお話ですが、今回完結へ向けて加筆修正した上で再更新させて頂きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる