10 / 120
第一章 突然の訪問者
【8】
しおりを挟むまぁ私は一般的な子爵家の子女で特に私は三女と言う余り者要員に過ぎませんが、しかし我がジプソン子爵家は武門を尊ぶ家柄でもあります。
その辺りにいるだろう軟弱な子息達よりも私は毎日心身共にがっつりと鍛えているのです。
万が一ターゲットに選ばれようものならば完全に返り討ちにしてくれると言う自信はしっかりとありましてよ。
その気概が伝わったかどうかはわかりませんが、この手の問題に私は直接関与された事は未だ一度たりともありません。
また普段よりこういう陰湿系のお茶会には体質的に合わず今までやんわりと避けてきたのですが、あの時はちょっとした手違いで参加する事となったのも偶然その日で御座いました。
最初から半ば無理やり参加させられたものでしたから私は到着早々何やら居心地の悪さを感じ、適当に挨拶だけを済ませればそのまま伯爵家の庭を優雅に一人散策へと向かっておりました。
何しろアップソン家の奥にあるバラ園はとても美しいと定評がありましたからね。時間を潰すにはもってこいなのです。そうして気分良く散策を終えた私が戻れば、場の雰囲気は最初の頃よりも明らかに悪い方へと変わっていたのです。
周囲にいる子息や令嬢達は完全に怯え、件の令嬢を救う事も出来ずにただただ次のターゲットになりたくないと必死に息を殺し、この狂ったお茶会の終了を今か今かと待っていましたよ。
何しろ彼等もまた年端のいかない子供達なのです。
まぁ何の因果なのかその日の年長者は私だけでしたから……。
そうして会場のど真ん中で――――とは言いましても高が子供の集まりなので広さはしれています。
しかしまさか目の前でこんな事が堂々と行われているとは本当に信じ難いとしか言えませんが、でも知ったからには目を逸らさず問題と向かい合うと言う姿勢は、これぞジプソンの血のなせるところなのでしょう。
本当に迷惑極まりないと思いつつも私はゆっくりと深呼吸すると共に今一度しっかりと己自身へ気合を入れ直しましたの。
サブリーナとその取り巻き達は件の男爵令嬢を囲い込めばです。何故か決して周りには悟られていない……と強く思い込んでいる様な愚か者達。
これだけ開けっ広げに行動していれば、譬え気付きたくなくとも普通に気づいてしまうと言うものです。
何と言っても子供の声は男女問わず大きく甲高く、また煩いもの。
またこそこそ……とは違いますね。
誰がどう見ても隠れているとは言い難く、普通に考えてもある意味堂々とお茶会のど真ん中で愚行を行っていたのですからね。
本当に色々と突っ込みどころ満載なのですが不思議とこの愚か者達は――――。
『きっと自分達以外に他の誰にも気づかれてはいない!!』
なんて馬鹿の一つ覚えの様に思い込んでいるからこそ、最初は小声だったものも次第にその声は徐々に大きくなっていくものなのです。
あろう事かここにいる阿呆者達はその事に全くと言っていい程気づかず、秘密でない秘密のいけない遊びとやらにかなり興奮しきっていたようですね。
このドぐされ根性腐れクズ共が!!
コホン
申し訳ありません。
つい昔語りに感情移入をしてしまい、少しばかり本音が漏れてしまいましたね。
そうして阿呆者達は周りを囲い込んでの悪口から始まり、相手が子供ながらに嗜虐心を煽る様な行動をとればとる程、ターゲットの令嬢に対する虐め……いえ、あれはもう虐めの域を当に超えていましたよ。
40
お気に入りに追加
3,410
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる