172 / 197
第二部 第三章 それぞれの真実と闇
6 エウレテリオの後悔と掛けられた呪いの真実 エレウテリオSide Ⅱ
しおりを挟む神でなくなり人間として輪廻の輪へ入る事も許されず、また脆弱過ぎる肉体で短い生を永遠に繰り返す。
最終的には繰り返すだろう短い転生においても決して幸せを得る事はない。
枠に外れた人間として汚泥の中で汚辱に塗れ、凡そ普通の人間として扱われる事のない屈辱の中で与えられた生を全うしなくてはいけない。
逃げる事も抗う事すら許されない最低最悪の人生。
また自死は許されず自らの内包された御力に生命が尽きるまで吸収されていく。
それが鍛冶の神としての俺が出来得るだろうの最悪最低な復讐。
熾火の神アーマトの為だけの剣。
愚かにもあの時の俺は正常な判断は全く出来ずいや、普通に少し考えればわかる筈だ。
サヴァーノと特にあの女っ、インノチェンツァが神殺しの剣を手にすれば俺のダーリアを想う純粋なる復讐を優先する筈がないと言う事を!!
そう確実に自分達の利の為だけにこの恐ろしい剣をアーマトではなく第三者へ何の躊躇いもなく振るう事を予見出来た筈だった。
だからこそ微かに、ほんの僅かに残っていただろう俺の良心が右手に宿っていたからこそだ。
何があろうとも決してあの二神へ渡さず自分自身の手で握り締めていたと言うのにだ。
しかし俺の抵抗はそこまでだった。
出来得る事ならばガイオ……貴方にこの呪われた剣を託したかった。
この世で誰よりも強大なる力を有しまた誰よりも厳しく己を律してきた貴方だからこそだ。
この呪われし剣を託せると言うのに俺は貴方へ一言の相談をする事もせずっ、譬え貴方に会う為に冥界へ行けなくともだ。
こんな俺を心より心配し何度も会訪ねてくれていたローザへ相談する事も出来たと言うのに何故なんだっ!!
俺は決して手を上げてはいけないガイオへ、いやローザをこの剣で突き刺してしまった!?
誰よりも慈愛に満ち穢れのないこの世で最も美しい女神を俺は〰〰〰〰っ⁉
『――――それで何時までお前は己が自身を責め続ける』
が、ガイオ……貴方なのかっ⁉
俺は周囲を見廻した……が何もない。
そう気づけば俺の周りには何も……なかった。
大神殿であった場所も。
大理石で作られし床やぶっとい柱に派手好きな……いや、アレはもう悪趣味だな。
キラキラとした眩しいばかりの装飾品。
同じ鉱石をと言えもだ。
サヴァーノとインノチェンツァが好むものは輝石と言った宝石の類であり、俺の愛した素朴で頑丈な石はどうやらお好みではなかったらしい。
匂いのきつい花ばかりを集めればだ。
素朴で可憐な――――と言うものは先ず必要とされない。
またここには到底俺の住処にはないモノばかりが所狭し……いやいや決して大神殿は狭くはない。
それは自称最高神を名乗るサヴァーノの住まいなのだ。
荘厳華麗をアレだと言うならばそんな感じの住まいがって、抑々大神殿だけではないっ!!
バルディーニの楽園も然り。
この様子では楽園だけではなく俺の住処のある山も当然、いやこの世界に存在していただろうあらゆるモノの全てが無へと帰したのだろうか。
だからここはこんなにも漆黒よりも尚暗い闇そして一切の音と言うものがない無音と化しているのだろうか。
だとすれば俺はもう神としての肉体を失われ魂として?
そうしてローザが決して入る事を許されない輪廻の輪へと吸収されればだ。
何時の日か俺は人間として何もなかったかの様に転生をし生きていくのか?
ローザをあの様な目に遭わせて俺だけがっ、元凶である筈の俺がのうのうと普通の人間として転生する等許され様筈がないだろうがっっ!!
1
お気に入りに追加
3,453
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる