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第一部 第五章 拗らせとすれ違いの先は……
2 後悔と言う名の懺悔 リーヴァイSide Ⅱ
しおりを挟むだが生まれた世界はどれもこれも初めて見るものばかり。
いや、この世界の文明の高さを知れば知る程何処か、そう酷く懐かしくも切なさを感じてしまうそんな世界。
俺はこの世界で医師として日々働く中ある一人の少女と出逢った。
華、俺は貴女に逢った瞬間これまでの全ての記憶を思い出したのと同時にまたも貴女へ恋をしたよ。
幼い頃より病に侵されながらも今の両親と共にきっと数え切れないくらい、そう一縷の希望を懸けて訪ね歩く度に絶望へと突き堕とされたのだろうね。
俺も貴女の主治医として、また一人の医師として自分の力量のなさと共に医学がまだ貴女の病へ追い付いていない現実への苛立ちに眩暈を覚えると同時に、何とも言えない遣り切れなくそして悔しい想いを抱いてしまった。
漸く愛する貴女の前で然も普通に人間として、同じ時を共有する事の出来る者として生まれ変われたと言うのにだ!!
幾度となく転生を繰り返す中で次こそは必ず愛する貴女を護り切ると、最早呪いにも等しい程に強く願ってきたと言うのにだ。
どうして運命とはこうも残酷なのだろうか。
目の前の貴女はそんな俺の気持ちを何か察したのだろうか。
それとも既にもう人生そのものを諦めていたのかもしれない。
今にも泣き出しそうな表情なのに、それでも貴女は泣きたい気持ちをぐっと堪えたまま微笑んでいたね。
そんな貴女を俺は何としても助けたいと、ただそれだけを思い忙しい仕事の合間を縫ってあらゆる文献を徹底的に調べ上げた結果――――残念ながら治療方法は一つも見つからなかったんだ。
落ち込む気持ちを抱えたまま実家へ戻った時だった。
普段は素通りする筈の庭を何気に見て、そうして自然に俺の視線がその先を捉えていたんだ。
母親が育てていたらしい色味の濃い緋色の鮮やかで美しい薔薇。
花に対して造詣が深いとはお世辞にも思わない。
ただその薔薇を見ていると不思議な事に華、貴女の笑顔ばかりが浮かんでくるんだよ。
そうなると居てもたってもしておられず直ぐに母へ許可を貰えば、その薔薇の花を持ったまま駆け足で貴女の許へときてしまった。
現状は病で苦しんでいる筈の貴女へ一方的に恋焦がれ、そこには大きな年齢差や当然色々な問題をクリアしなければいけない――――がそれがどうしたと言うのだ!!
俺は貴女をっ、今の華と言う女性を愛している!!
先ずはこの想いを聞いて貰いたい。
そして決して多くはそうだな、最初から多くは求めたりしない。
何故なら貴女は俺をまだ知らないのだからね。
これはあくまでも俺の転生を繰り返した中での重い、そう重過ぎるなんて言葉が軽く聞こえるくらい俺の、貴女への想いは深くて重いもの。
それでも何としても俺の想いに気づいて欲しいだから――――。
「華ちゃん、僕は君の病気を治せないのかもしれない。でも僕は決して諦めたりはしないよ。医療は日進月歩と言って日々変わるものなんだ。だから、その何て言うか僕はね、何時か華ちゃんの病気が治ったら僕は……」
くそっ、いざ告白なんてモノは想像とは違い現実では中々思う様に上手くいかなくて……。
俺はしどろもどろしつつも何とか貴女に俺の気持ちを、そうして病気へ共に立ち向かいたいと、それこそ生涯をかけて……。
「華ちゃんと初めて逢った瞬間に僕は情けないけれど華ちゃんに惹かれ……いや、一目惚れだったんだ。12歳も年上のおじさんから言われて気味が悪いよね。勿論治療は一生懸命、うんそこは他の患者さんと変わらず全力で取り組むよ。だけど……かなり重いのかもしれない」
「重い?」
「うん、僕が君を想う気持ちがね。今直ぐ返事なんて言わなくてもいい。嫌なら主治医だって変更――――本音を言えばしてそれはして欲しくはない。何があろうとも公私共に僕は生涯君を支えていきたい。そのくらい僕の、君への想いは真剣なんだ。本当に不思議だと思うかもしれない。どうか華ちゃんの心の隅っこでもいいから、病気でしんどくない合間に……ほら入院って退屈だろ。だからその退屈な時間だけでも僕の事を考えてみて欲しい」
じーっと俺を真っ直ぐに見つめる貴女を前にして俺は正直に思ったよ。
やらかしてしまった〰〰〰〰。
出来る事なら思いっ切り、ああ地球の裏側まで掘り捲ってその中へ入り込みたいと思う反面、貴女を諦めきれない想いがそーっと窺う様に貴女を見つめてしまえばとある変化に気づいてしまった。
「華……ちゃん、顔、めっちゃ赤いよ」
もうそれはあからさまに熟した真っ赤なリンゴの様に、でも熱が出た所為じゃあないよね?
少しは自惚れてもいいのだよね?
ああっ、可愛いっ、可愛すぎるだろう何だこんな生き物を俺は今っ、生まれて初めて……いや、俺は遠く遥かな昔より既に知っていた。
でもそれよりも何よりも今は――――!!
「期待、してもいい?」
「――――……は、はいっ、うひゃあっ⁉」
「嬉しいっ、僕の、僕だけの華っ!!」
「う、あ、せ、先生っ」
「絶対一生大事にするっ。うん、何があっても絶対に離さないし逃がさない!! 華を絶対に幸せにするからね」
本能の赴くままに愛する貴女をぎゅうぎゅうに抱き締めてしまった。
思えばこの瞬間が幸せ過ぎたのだと思う。
そして華、まさかあの様な悲しい別れが待っているなんて、この時の俺は夢にも思わなかったんだ。
それくらい俺は本当に幸せで心だけではなく魂レベルで舞い上がっていたんだ。
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