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第一部 第三章 それぞれの闇と求める希望の光
6 無自覚無意識であるからこその罪 リーヴァイSide
しおりを挟むそれからの俺は初めての恋……いや断じてその様な軽いモノではない。
抑々恋と言うモノを一言で言い表せば、相手を想うだけで心が熱くまた切なく焦がれる様なもの。
対象者へ好意を抱き何時も共にいたいと願うものなのだと、バートが何故か冷めた表情で説明してくれた。
だとすれば俺の抱くヴィーへの想いは恋と言うモノではないのかもしれない。
何故なら俺のヴィーへ対する想いはバートの言う恋を遥かに凌駕していた。
まだほんの六年しか生きてはいない――――けれどもだ!!
ヴィーの愛らしいくも可愛らしい微笑み、そして柔らかく口に入れれば直ぐに蕩けてなくなってしまう様なチョコではない。
ふわふわのマシュマロの様な身体でふわりとい甘い香りと共に幼い俺を毎回逢う度に優しく抱き締めてくれる彼女。
ほんの一瞬だがヴィーより仄かに匂い立つ香りは決し不快な香水ではない。
爽やかな花々そして甘い菓子の匂いが彼女より感じられるだけで、その匂いを一度嗅いでしまえば俺はどうしようもないくらい全身の血液が逆流と同時に沸騰寸前になってしまいそうになる程の劣情をだ!!
まだ幼い子供であるにも拘らず流石は雄の本能と呼ぶべき慾を否が応にも自覚してしまう。
そうして全身全霊いや、魂レベルでヴィーを誰よりも強く熱く求めてしまう。
ただそれは身体を奪うとか何か物理的な慾ではない。
魂同士の結びつきをより強く、永遠に解れる事のない鎖で以って彼女と俺を繋ぎ留めたい。
そう今世だけでなく来世、来来世に置いてでも俺はヴィーと共にありたい。
確かにこれは6歳児が抱く想いなのか……と、最初は自分自身でその狂った想いに恐怖すら感じてしまった。
だがこうして父上や皇帝である伯父上そして后妃である伯母上、他にも使えると思えば何でもだな。
明らかに俺へ好意を抱いているだろう令嬢や皇族と姻戚関係を結びたいと虎視眈々と狙う貴族達を上手く手玉に取れば舞踏会は年齢的にまだ出席は出来ないものの、子供であっても参加の出来る茶会や慰問、それら全てを大前提としてヴィーが参加または彼女自らが主宰し催すだろうものの全てをだ。
俺は皇族と言う立場と同時に可愛らしくも母親を亡くした哀れな子供と言う看板を引っ提げ……母上、母上を利用する愚かな子供をどうか許して下さい。
その代わりと申してはですが、どうか天上国で何時までも健やかに俺の想いが無事成就する事を願って下さい。
等と勝手に身罷られた母上にまでにこのどうしようもない願いを押し付ければである。
そうして利用出来るモノは何でも上手く利用する事でヴィーへの接近を確実に図っていく。
またヴィーへの想いだけに日々現を抜かしている俺ではない!!
寧ろそこは愛すべきヴィーへの想いと並行して俺は勉学と剣や魔導の鍛錬怠らず、いやいやそこは全力で集中してしっかりと研鑽を積み重ねていったのだ。
勿論全てはヴィーへの想いと素晴らしい彼女へ釣り合いの取れる立派な男になる為だけなのだからな。
何しろ俺の命よりも大切なる女性は最近祝福の姫巫女と呼ばれし至上なる存在なのだ。
祝福の姫巫女――――実に響きが良いだけではない。
ヴィーを現すには十分過ぎる訳でもないのだが、ただの職業聖女ではなくそう、何と言うか唯一なる存在的なものなのだろうか。
可愛らしいだけではなくそこへ神々しさが加味された様な、何とも俺だけの女神に似合うネーミングだと、この時の愚かな俺はただただその呼び名に満足し喜んでいたのだ。
本当に今時を遡る事が出来るのであれば、過去の自分自身をフルボッコしていただろう。
しかしどの様に魔動力が優れていたとしても人間は過去や未来へ飛ぶ事は出来ない。
またこの頃ヴィーへの逢瀬が叶う度に不思議と勉学だけでなく色々な面においてとんとん拍子に上手く、そう驚く間のないくらいに全てが良い方向へ運んでいくのを一度たりとも不思議だとすら思わず、愚かにもこれは自分の努力の賜物だと信じきっていたのだからな。
まあ確かに日々努力をしていた事に否定はしない。
俺自身ヴィーへ逢いたいが故に、彼女を見る度に心が満たされ益々幸せになっていく様な多幸感に包まれる……そんな感覚へ溺れたいが為に俺は色々と努力を積み重ねてきたのも事実。
しかしそれこそが俺の愛する女性を苦しめているなんて俺は16歳になるまで一つも、いや……本当は薄々気づいていたのかもしれない。
ただその事実より目を逸らしていたかったのかもしれない。
愚かな子供は愛される事、幸せをまだまだ享受されたいがだけだったのである。
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