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第一部  第二章  五日後に何かが起こる?

15  出発は突然に⁉  ヴィヴィアンSide

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 今夜は夕食後直ぐに入浴を済ませれば今は私室で一人まったりと寛いでいるところです――――と言うのは表向き。


 細々と世話をしてくれるだろうメアリー達に無理を言い今夜は早くに休むからと、最期の最後で我儘を言ってしまう私はとても傲慢だと思います。


 それでも此度ばかりはどうかこの我儘を許して欲しいのです。

 何故ならそれは……そう全てはこの時の為に私は頑張ってきたのですもの!!

 

 さて――――と、小さな掛け声と同時に私はソファーより立ち上がります。

 そして今この瞬間までゆったりと寛いていただろう公爵夫人のヴィヴィアン・ローズはもう何処にもいない。


 ええ、私は今この瞬間を以ってとなるのです。


 そうして立ち上がれば寝室の、クローゼットの最奥へ密かにこの日の為に隠しておいた……とは言えこればかりは誰も見つけられはしません。

 ふふ、何故ならこれこそ私のチート能力が作り出しるマジックアイテムなのですもの。


 その名もステルス・マジック収納バック。


 少しばかり名前のセンスが今一なのはご愛敬ですわ。

 またこのバックの中には今までこつこつと隠れて作り出した様々な私のオリジナル魔道具、それから私個人の宝飾品……当然の事ですがプライステッド家の名の下に購入した物は一切入れてはおりません。

 それらは以前私の為にと旦那様が宝石商を呼び寄せ、態々わざわざ一点物の宝飾品をデザインから始まりそれに見合う石までも、ええどの宝飾品もじっくりと時間を掛けて作って頂いた素晴らしいものばかり。

 この様な私にでも不思議とよく似合うもので、きっと普通ならば『これら全ては私のものよ!!』と言う感じで持って行くのでしょうが、生憎ながら私にはそれらへ余り魅力を感じないのです。


 しかしながら私個人名義で購入した宝飾品をこの中へ入れたのはひとえにそれらが全て現金へと問題なく換金出来るから!!


 ズバリこれに尽きます。


 そう、旦那様のプレゼントは全て一点物で石自体もかなり大きいものばかり。
 この様なものを持って換金所へ赴けばたちまち出所が知られてしまうでしょ。


 その様な事は私の望むところではないのです。
 だから私の持っている宝飾品は確かに質には拘りましたが、デザインや大きさは何処にでもある平凡なモノを選びましたよ。

 後は現金と通帳。

 通帳は勿論偽名……ではなく私の新しい名前で作りましたわ。


 ローズ・リリー。


 この名が今より私の名前となるのです。


 あらあらお話ばかりに夢中になってはいけないわ。

 私はステルス・マジック収納バックを手に取り荷物を確認すれば素早く着替えを済ませます。

 髪は何時もの様に結い上げず、後ろで一つに束ねるだけのシンプルなもの。
 

 行動は何事も迅速に。

 大丈夫よヴィ……じゃあなくローズ。


 これまで何度も頭の中でシュミレーションをしてきたもの。

 だから絶対に失敗しないしさせないわっ。

 用意が出来ればバックの中より木製の、それこそ何処にでもあるのだけれどもこれは木製ではなく、見せかけだけの伸縮自在なゴム製の扉。


 ええ、賢明な方々ならばもうお分かりになられていますよね。


 そう私はかつて日本と言う国で生きてきた人間。
 

 ただし単純な転生者でもないのです。

 詳しい話はまた後日。

 何故なら私は今とても急いでいるのですもの。
 

 誰にも気づかれず、そして穏便に、公爵邸より遠くへと脱出をする為に!!


 でももう半分は成功と言ってもいいわ。
 何故なら後はこの扉の向こう側へと行き、そして素早く扉を回収すれば万事OKなのだもの。


 かちゃり


 かちゃり?


 かちゃり……⁉

 
 可笑しいです。

 どうしてほぼ同時に三度も扉の音が……?

 私は一度だけノブを回した筈なのに……。


「お、奥方様っ、そ、これは一体⁉」
「ヴィー、貴女は一体何をしているのかな?」
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