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第六章 壊れ失うもの
1 処方薬
しおりを挟むあれは恐らく12月に入った頃だと思う。
冷たくも寒い風の吹く中へ私は毎日……そうリーダーの時は必ずお昼前になると院外へと出て行く。
病院から出て北へ向かって2分くらい歩けは処方箋薬局が数件あり、その中で病院と直接契約しているのだろう薬局へ行けばである。
これも普通一般的にはあり得ないのだが、患者さんへの処方箋を詰所でFaxするまでは善しとしよう。
しかしこの透析センターではどんなに忙しくともだ。
リーダーが院外の処方箋薬局へと赴きそこで薬剤師さんと確認を行えば処方薬の入っているスーパーのレジカゴを持ち患者さんの代わりに薬を受け取れば各個人個人へと配布しなければいけない。
勿論定期の処方薬はその調剤される薬の量も多いが為に院外の処方箋薬局の薬剤師さんが態々透析センターまで出向けばまた個別に説明と配薬を行ってくれている。
ぶっちゃけ患者さんは透析を受けて横になっている間に希望した薬が処方されるだけではなく、家へ帰るまでにしっかりとお薬を届けて貰えると言う訳だ。
これは普通に有り得ないでしょ。
前職の透析センターでも行っていないと言うか、透析は障害者1級に該当する病だけれどもだ。
他の病気を患っている患者さんだって自ら処方箋を持って院外薬局へ行けばである。
お薬が調剤出来るまでの時間を静かに待っているのだ。
因みに私の狭心症の薬だが病院で普通に処方箋を受け取れば、凡そ約二ヶ月分を調剤して貰うまでざっくりだが約30分以上……時には検査疲れで狭心症の発作が出ていようとも、そこは静かにじっと我慢をして待っているのである。
そう思えば何この好待遇。
幾ら透析後はしんどいからって……ね。
病気は人それぞれにしんどくまた辛いものなのですよ。
なのにである。
中には他の病院より処方された処方箋を態々透析センターへ持ってくればそれをリーダーへと渡し、何故か普通にFaxで処方箋薬局へ送れと言う。
そしてその薬の受け取りは勿論リーダーである。
もう本当にあり得ないだろうって思った私は藤沢さんへ確認したよ。
これは拒否してもいい案件ですよねって心でそう思っていた。
しかし淡い期待は悉く打ち砕かれてしまうもの。
「ああ、Faxで送ったら他のと一緒に受け取って、ちゃんと本人へ渡してあげてな」
あり得なーい!!
そんなの聞いた事もない。
しかしこれにはまだ続きがあり、然も私以外にもこの事実を知らない人物が存在した訳で……。
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