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第二章
5 カオスです
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「ご機嫌ようエルネスティーネ嬢」
目の前には焦げ茶色の髪と煌めくエメラルドグリーンの瞳を持つ眉目秀麗筋骨隆々なイケメン。
決して忘れられない、忘れようとしても忘れられっこない御方。
そうこの御方こそ七年後の世界で私の婚約者であり、二日後の結婚式を控えていたと言うのに私達が使うであろう寝室で、同僚の女性騎士であられるアーデルトラウト様と愛し合われていた。
私は何故かその現場に呼び出されればしっかりとこの目に焼き付けてしまったわ。
そのショックで私の心は壊れてしまいこの御方の執務室のバルコニーより身を投げ……た。
シュターデン公爵家当主、ジークヴァルト・アロイス・ラッツェル様。
叶うならば二度とお会いしたくはなかった。
いえ、もう二度とジーク様と結婚はおろか婚約もしたくはない!!
あの悲しい想いはもう二度と味わいたくはない!!
なのに、なのにどうして?
こ、こんな風に我が家へ訪れる事なんてなかったと言うかよ。
王命による婚約まで会う事もなかった……筈?
「エルこちらは僕の親友でジークだよ。学院時代はよく試験で順位を競い合っていたライバル関係だったのだけれどね。卒業してからはほら、勤め先が二人揃って同じ王宮だろう。部署は違えどもお護りする相手は同じだからね。それ以外にも普通に僕達は親戚同士だし気付けば色々と仲良くなったのだよ」
ほぉそうですか。
私は一向に存じ上げませんでしたよアル兄様。
その証拠にアルお兄様とジーク様より一切友情と申しますか抑々私達親戚付き合いをしていたのでしょうか。
少しも記憶にないのですけれどね。
コホン……こ、これは怒っているのではなくす、少しだけ拗ねてい……⁉
「御機嫌よう愛しき天使。私はジークヴァルト・アロイス・ラッツェルと申します。どうか私の事はジークと呼んで下さいますよう」
はい?
今物凄く物騒なお言葉が?
いやいや私ってば到頭聴覚に異常をきたしたのかしら。
何故なら愛されてもいないのに愛しき天使って、私の耳は本当に可笑しくなったとしか思えない。
貴方には愛する女性がいる筈なのにどうして私へ、そのお湯な優しい笑顔を向けられるの?
また絶対にあり得ない事が今私の身に起こっている!?
大きくもご立派なお身体を私の視線に合わすべく床へ跪けばよ。
ジーク様はゆっくりとお身体を屈められたまま、私の様なお子様の手へそっと、まるで淑女の様に恭しく掬い上げればまさか本当にキスを落とすお心算なのだろうかそれとも――――。
ただ分かっていると言うか視覚的に見えているのは、ジーク様のものよりも遥かに小さい私の手をぎゅっと握り締められたまま何故か決して離そうとはせず、だからと言ってキスを落とす訳でもない。
なのに私の手より20㎝程の所へ身体を前傾へ傾けられたままのジーク様のお顔があると言うちょっとした……えーっと今までの経験上私にしてみればこれはかなりな混沌。
何故かジーク様はその体勢のまま少しも動かれる事はない。
ただじーっと静かに、ううん何かもの言いたげな切ない眼差しで私を見つめておいでになるの。
理由なんてわからない。
でもその憂いを帯びた眼差しが堪らなく私の心ギューッと鷲掴みにするのは何故?
ねぇジーク様、貴女が愛しておられるのはアーデルトラウト様……ですよね。
前回の私と貴方は王命による婚約で、そこに愛情云々何てものはない。
なのにどうしてその様な切なくて堪らないと言った眼差しで私を見つめるの?
わからない。
本当にわからない。
私は何を言いまたどんな行動をすれば正解なのかしら。
そこへこの永遠にも等しいと思う状況に救いの声が現れる。
「……ねぇジーク僕の大切な天使に何時まで、そして何をしているのかな」
それはもう清々しい程の魔王様宜しくと言った具合の真っ黒なオーラを纏うアルお兄様。
実の妹の私でさえ若干引きたくなる様な壮絶過ぎる程の凍れるお色気むんむんの笑みを湛えたまま、私の腕を掴んでいるだろうジーク様の大きな腕と手ををがっちりとホールドされておりました。
とは言え一応状況的には助かったからアルお兄様にはあとでお礼を言っておこうっと。
目の前には焦げ茶色の髪と煌めくエメラルドグリーンの瞳を持つ眉目秀麗筋骨隆々なイケメン。
決して忘れられない、忘れようとしても忘れられっこない御方。
そうこの御方こそ七年後の世界で私の婚約者であり、二日後の結婚式を控えていたと言うのに私達が使うであろう寝室で、同僚の女性騎士であられるアーデルトラウト様と愛し合われていた。
私は何故かその現場に呼び出されればしっかりとこの目に焼き付けてしまったわ。
そのショックで私の心は壊れてしまいこの御方の執務室のバルコニーより身を投げ……た。
シュターデン公爵家当主、ジークヴァルト・アロイス・ラッツェル様。
叶うならば二度とお会いしたくはなかった。
いえ、もう二度とジーク様と結婚はおろか婚約もしたくはない!!
あの悲しい想いはもう二度と味わいたくはない!!
なのに、なのにどうして?
こ、こんな風に我が家へ訪れる事なんてなかったと言うかよ。
王命による婚約まで会う事もなかった……筈?
「エルこちらは僕の親友でジークだよ。学院時代はよく試験で順位を競い合っていたライバル関係だったのだけれどね。卒業してからはほら、勤め先が二人揃って同じ王宮だろう。部署は違えどもお護りする相手は同じだからね。それ以外にも普通に僕達は親戚同士だし気付けば色々と仲良くなったのだよ」
ほぉそうですか。
私は一向に存じ上げませんでしたよアル兄様。
その証拠にアルお兄様とジーク様より一切友情と申しますか抑々私達親戚付き合いをしていたのでしょうか。
少しも記憶にないのですけれどね。
コホン……こ、これは怒っているのではなくす、少しだけ拗ねてい……⁉
「御機嫌よう愛しき天使。私はジークヴァルト・アロイス・ラッツェルと申します。どうか私の事はジークと呼んで下さいますよう」
はい?
今物凄く物騒なお言葉が?
いやいや私ってば到頭聴覚に異常をきたしたのかしら。
何故なら愛されてもいないのに愛しき天使って、私の耳は本当に可笑しくなったとしか思えない。
貴方には愛する女性がいる筈なのにどうして私へ、そのお湯な優しい笑顔を向けられるの?
また絶対にあり得ない事が今私の身に起こっている!?
大きくもご立派なお身体を私の視線に合わすべく床へ跪けばよ。
ジーク様はゆっくりとお身体を屈められたまま、私の様なお子様の手へそっと、まるで淑女の様に恭しく掬い上げればまさか本当にキスを落とすお心算なのだろうかそれとも――――。
ただ分かっていると言うか視覚的に見えているのは、ジーク様のものよりも遥かに小さい私の手をぎゅっと握り締められたまま何故か決して離そうとはせず、だからと言ってキスを落とす訳でもない。
なのに私の手より20㎝程の所へ身体を前傾へ傾けられたままのジーク様のお顔があると言うちょっとした……えーっと今までの経験上私にしてみればこれはかなりな混沌。
何故かジーク様はその体勢のまま少しも動かれる事はない。
ただじーっと静かに、ううん何かもの言いたげな切ない眼差しで私を見つめておいでになるの。
理由なんてわからない。
でもその憂いを帯びた眼差しが堪らなく私の心ギューッと鷲掴みにするのは何故?
ねぇジーク様、貴女が愛しておられるのはアーデルトラウト様……ですよね。
前回の私と貴方は王命による婚約で、そこに愛情云々何てものはない。
なのにどうしてその様な切なくて堪らないと言った眼差しで私を見つめるの?
わからない。
本当にわからない。
私は何を言いまたどんな行動をすれば正解なのかしら。
そこへこの永遠にも等しいと思う状況に救いの声が現れる。
「……ねぇジーク僕の大切な天使に何時まで、そして何をしているのかな」
それはもう清々しい程の魔王様宜しくと言った具合の真っ黒なオーラを纏うアルお兄様。
実の妹の私でさえ若干引きたくなる様な壮絶過ぎる程の凍れるお色気むんむんの笑みを湛えたまま、私の腕を掴んでいるだろうジーク様の大きな腕と手ををがっちりとホールドされておりました。
とは言え一応状況的には助かったからアルお兄様にはあとでお礼を言っておこうっと。
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