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第一章

10  カオスなお茶会

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 魔王様と化したアルお兄様のお陰でその後は比較的友好的な?
 いやいや果たしてあれは本当に友好的だったのだろうか。


 私は私を溺愛し過ぎるアルお兄様のお膝の上でお茶を、焼き菓子やケーキをそれはもう雛鳥の様に食べさせられていた。
 然も対面でジーク様の生暖かいからの何故か突き刺さる様な眼差しの中でゆっくりと、何と申しましょうかゆっくりと時間を掛けてってとてもではないけれど居た堪れない。
 当然私は何度もお膝より下ろして欲しいと、お行儀が悪いからと、一番はお客様の前で恥ずかしいからと何度もアルお兄様へ抗議はしたの。

 なのにどうしてなのかアルお兄様はそれはもう満面の、イケメンの笑顔の破壊力とは血の繋がっている妹でさえも思わず見惚れてしまう程に強烈だわ。
 私はまるで巨大な砂糖壺の中へと頭の天辺から足の指先まで完全に漬け込まれる様な溺愛ぶりを発揮させられてしまった……ってこれは過去の記憶とそう大差ないわね。
 
 何も私を溺愛するのはアルお兄様だけではないのだもの。
 ただここで問題なのはジークヴァルト様の前で恥ずかしいやら何だかんだと言いつつも、この現状に馴染んでいる私も相当ヤバいのかもしれない。


「いいの、これはの出来なかった愚かな駄犬への罰ゲームだから。だからね僕の可愛らしいエルは何も気にしなくてもいいのだよ。さぁ今度はお前の好きな木の実のタルトを……焼きたてだから美味しいよ。ほら、可愛いお口をあーんと開けてご覧」
「んンっ、お兄……あふぁ」

 口の中のものを咀嚼し終えれば絶妙なタイミングで紅茶をって私は、本当に雛鳥の様にせっせと食べさせられていく――――⁉
 
「それは流石にやり過ぎですわアルフォンス様」

 グッジョブだよテア!!

 そうだよ兄妹での口移しはアウトでしてよお兄様!!

「はぁテアに注意されると仕方がないな。でも丁度いいお仕置きになったみたいで僕はとても満足しているよ」

 だから一体誰に、そして何に対してのお仕置きなの?
 
 最初は私なのかなって思ったけれども違った。
 第一アルお兄様にお仕置きをされる様な事をした覚えはないもの。
 ではジークヴァルト様……ってそれは本当にあり得ない。

 抑々ジークヴァルト様にしてみれば私何て存在しないのも同義。
 こうして今日みたいにイレギュラー的なイベントは多分、私のやり直し的な人生でのバグみたいなものだと思う。
 
 ではテア?
 それも違うでしょ。
 この時のテアはまだ12歳。
 位置づけとしては一応私の専従侍女的な存在。

 でも正式には我がキルヒホフ侯爵家へ養女として、男爵家より既に籍は抜いてはいるけれどね。
 お互いに様子を見てから…・・・だったと思われる養女の件は何時の間にかお母様とテアとの談合の結果、テアが侯爵家へ越してきた時点みたい。
 またその談合での条件として挙げられたのはテアの岩石よりも堅い意志の許において、野猿令嬢である私を侍女目線で一から躾け直すだなんて物凄く恐ろしいシチュエーションにがっつりと嵌っているらしい。

 まぁお母様にしてみれば可愛らしくも優秀過ぎるテアが義理とは言え娘となるだけでなく、長年手を焼いていただろう実の娘の私が野猿から無事に卒業してくれるのであればよ。
 少々斜め上を突き抜けたテアの侍女目線と言う方法も結果オーライならば何をしてもいいと言った具合で了承されてしまった。


 そうして常にテアの後ろ手へ隠されているだろう見えない鞭は、当時何も知らない幼かった私を何度恐怖の底へと叩きつけた事だろう。
 
 あぁ過去の記憶が少し思い出されていく。
 そう私は何時もテアの半端ない扱きによって毎日泣き暮らしていた。
 
 えーっと話が少し逸れたわね。
 私でもジークヴァルト様にテアでもなければお仕置きは一体誰目的?


 結局何もわからないままお茶会は無事に終了したわ。
 気掛かりだったのは妙に魂の抜けた様なお姿になってジークヴァルト様は静かに帰宅された事。
 お兄様は至って満足そうに『百年早いわ!!』とか謎の言葉を漏らしておいでだったし、テアはと言えば『まだまだアルフォンス様もお子様ですわね』と何処か達観した感じの物言いに理解出来ない私の頭の中ではてなマークで一杯だ。

 まぁ何れにせよ私にはもう関係ないからいいのだけれど……。


 だがしかしたった三つしか違わないのに今回も私はテアへ何故か頭が上がらない気がするのは気の所為なのだろうか。

 いや絶対気の所為ではないと私はここに断言する!!
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