6 / 11
本編
6 家族の団欒
しおりを挟む
「幾ら制約があるからとは言え余りにも許されぬぞ!!」
「ヒュー落ち着いて下さいませ。お怒りはごもっともに御座いますが兎に角王子自ら運命を選んだのです。この後は彼らの末路を見守るのみ。それに私達には漸く愛する娘が戻ってきたのですもの」
「お母様……」
私は婚約破棄宣言の敬意を両親へ説明した。
それまでの虐めについては既に把握済みらしいから説明はしなかったと言うか、辛い話は何度もしたくはないのが本音。
「ね、これより先はもうアリスはこのノースモアより離れはしませんわ」
「そう、だな」
「そうですよ。辛く悲しいこの十一年間でしたがいえ、正確には十八年ですわね。あぁそれ以上かもしれませんわね。正当な主のいないこの大地は荒れ、魔界より幾度も門が開きかけたのを命懸けで護られたのはヒューとノースモアを愛する者達でしたわ」
「あぁ思い出しても何度命を失うかと思ったよ。しかしその度に愛するロリーナと無事にこの世へ生まれてくれたアリス、君達の存在があればこそ……だ」
「お父様っ」
私は感極まって思わずお父様へ抱き付いてしまった。
淑女としてはあり得ない行動だけれどね。
「はは、アリスは大きくなっても別れた5歳の、小さくてお転婆な所は変わらないな」
「ま、お父様、お転婆はもう治りましたわ。これでもちゃんと王太子妃教育は終了しましたのよ。ただ……王太子妃にはならなかっただけです」
頬をぷくりと膨らませ文句を言ってしまう。
でもお父様はそんな私を抱き締め、頭をその大きな手でわしゃわしゃと撫でられるの。
折角ジョアンが髪を整えてくれたのに、きっと鳥の巣の様になってしまったわ。
「なぁロリーナ、どうして我が娘はこの様に可愛いのだろう」
何をしても可愛いと、可愛いを連呼するお父様。
王太子妃教育の為にノースモアを離れて十一年もの間愛情に飢えていたから?
ノースモアを離れられられないお父様は兎も角、お母様は家政を切り盛りしつつ年に数度王都へ私に会いに来て下さったわ。
王都での滞在は決して長いものではなかったけれどもよ。
それでも時間のある限り一緒にいて下さったし、冷遇されている私を思い色々と動いても下さった。
とは言えあの糞王子は表面上だけ態度を改めるだけ。
何れも証拠はないのだから決定的に追い詰める事は出来ない。
そうしてお母様が北へと戻られた後、嫌がらせは更に酷くなったのは言うまでもない。
だから数年もすれば私からお母様へこれ以上動かないでとお願いをしたの。
勿論最初はお母様も反論されたわ。
幾ら王族でもやっていい事と悪い事があるってね。
そんなお母様に私はお話したの。
『沢山ある運命を引き寄せるのは本人のみ。彼の人生は彼のもの。今この状況も全て彼自身が選び決断したものなの。だからお母様私は少し辛いけれど我慢をしているの。だって何れ彼の選んだ運命の結果は導き出されるのよ。私はそれを見届けたいの。ううん私は……として見届けなければいけないの』
それ故これ以上の干渉はしないで……と。
本音を言えばお母様と一緒にノースモアへ帰りたかった。
何故ならノースモアは私の命そのもの。
でも私には生まれる前からの制約がある。
だから今は王都より去る訳にはいかない。
ノースモアの娘として負ける訳にはいかない!!
まだあの頃は10歳にも満たない子供だったもの。
親の愛情に飢えていたわ。
譬えあの御方がいらしたとしても所詮は他人。
ジョアンやチャド達も皆必死に私を護ろうと頑張ってくれたし勿論愛してもくれたわ。
それでも二つ名を持つ私であっても両親と言う存在は特別なのね。
16歳にもなって子供の様に甘えている。
お父様の可愛いは正直に言って恥ずかしいし、ほんの少し擽ったい。
お母様のほんわかとした笑顔は心がぽかぽかと温かくなる。
誕生した時より当たり前に享受できるだろう両親の愛を何故私は出来なかったのか。
それは私が生まれる前、とある事件が勃発したのが事の始まりだった。
「ヒュー落ち着いて下さいませ。お怒りはごもっともに御座いますが兎に角王子自ら運命を選んだのです。この後は彼らの末路を見守るのみ。それに私達には漸く愛する娘が戻ってきたのですもの」
「お母様……」
私は婚約破棄宣言の敬意を両親へ説明した。
それまでの虐めについては既に把握済みらしいから説明はしなかったと言うか、辛い話は何度もしたくはないのが本音。
「ね、これより先はもうアリスはこのノースモアより離れはしませんわ」
「そう、だな」
「そうですよ。辛く悲しいこの十一年間でしたがいえ、正確には十八年ですわね。あぁそれ以上かもしれませんわね。正当な主のいないこの大地は荒れ、魔界より幾度も門が開きかけたのを命懸けで護られたのはヒューとノースモアを愛する者達でしたわ」
「あぁ思い出しても何度命を失うかと思ったよ。しかしその度に愛するロリーナと無事にこの世へ生まれてくれたアリス、君達の存在があればこそ……だ」
「お父様っ」
私は感極まって思わずお父様へ抱き付いてしまった。
淑女としてはあり得ない行動だけれどね。
「はは、アリスは大きくなっても別れた5歳の、小さくてお転婆な所は変わらないな」
「ま、お父様、お転婆はもう治りましたわ。これでもちゃんと王太子妃教育は終了しましたのよ。ただ……王太子妃にはならなかっただけです」
頬をぷくりと膨らませ文句を言ってしまう。
でもお父様はそんな私を抱き締め、頭をその大きな手でわしゃわしゃと撫でられるの。
折角ジョアンが髪を整えてくれたのに、きっと鳥の巣の様になってしまったわ。
「なぁロリーナ、どうして我が娘はこの様に可愛いのだろう」
何をしても可愛いと、可愛いを連呼するお父様。
王太子妃教育の為にノースモアを離れて十一年もの間愛情に飢えていたから?
ノースモアを離れられられないお父様は兎も角、お母様は家政を切り盛りしつつ年に数度王都へ私に会いに来て下さったわ。
王都での滞在は決して長いものではなかったけれどもよ。
それでも時間のある限り一緒にいて下さったし、冷遇されている私を思い色々と動いても下さった。
とは言えあの糞王子は表面上だけ態度を改めるだけ。
何れも証拠はないのだから決定的に追い詰める事は出来ない。
そうしてお母様が北へと戻られた後、嫌がらせは更に酷くなったのは言うまでもない。
だから数年もすれば私からお母様へこれ以上動かないでとお願いをしたの。
勿論最初はお母様も反論されたわ。
幾ら王族でもやっていい事と悪い事があるってね。
そんなお母様に私はお話したの。
『沢山ある運命を引き寄せるのは本人のみ。彼の人生は彼のもの。今この状況も全て彼自身が選び決断したものなの。だからお母様私は少し辛いけれど我慢をしているの。だって何れ彼の選んだ運命の結果は導き出されるのよ。私はそれを見届けたいの。ううん私は……として見届けなければいけないの』
それ故これ以上の干渉はしないで……と。
本音を言えばお母様と一緒にノースモアへ帰りたかった。
何故ならノースモアは私の命そのもの。
でも私には生まれる前からの制約がある。
だから今は王都より去る訳にはいかない。
ノースモアの娘として負ける訳にはいかない!!
まだあの頃は10歳にも満たない子供だったもの。
親の愛情に飢えていたわ。
譬えあの御方がいらしたとしても所詮は他人。
ジョアンやチャド達も皆必死に私を護ろうと頑張ってくれたし勿論愛してもくれたわ。
それでも二つ名を持つ私であっても両親と言う存在は特別なのね。
16歳にもなって子供の様に甘えている。
お父様の可愛いは正直に言って恥ずかしいし、ほんの少し擽ったい。
お母様のほんわかとした笑顔は心がぽかぽかと温かくなる。
誕生した時より当たり前に享受できるだろう両親の愛を何故私は出来なかったのか。
それは私が生まれる前、とある事件が勃発したのが事の始まりだった。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す
岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる