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第四章  現在

13  始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideエヴァ

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 早くスティアおばさんへ膝掛けを届けて戻らなければ……。
 それに今日はエルさんと一緒にお食事をする日だからお客様をお待たせしてはいけないわ。

 私は淑女としてはしたなくない程度の早歩きでスティアおばさんの家へと向かう。

 診療所より歩いてほんの5分くらい先にある。
 以前何度かスティアおばさんのお宅へお茶に招かれ尋ねた事があったの。
 だから迷う事無く彼女の家へと歩いて行ったわ。

 スティアおばさんの家は平民宅にしては落ち着いた調度品が置かれ優しい温もりのある家。
 落ち着いた色合いと漂う雰囲気を私自身好きなのよね。
 ほらこの角を曲がればスティアおばさんの家までは直――――!?


 ドンっ⁉


 角を曲がる瞬間私は何かとぶつかったわ。
 思った以上の衝撃に身体は耐えられなくて地面へ転んでしまうと思ったのに、何故か何時まで経ってもその衝撃は訪れない。
 いえ訪れないどころか、何かとぶつかったと同時に私の右腕と腰を力強くぐいっと前方へと引き寄せられると転倒する事を免れたの。

 あぁよかった……と私は状況も考えず暢気のんきに安堵の溜息を漏らしたけれど、私は一体何とぶつかり誰が助けてくれたのかしら。

 とは言え同性でないのは間違いない……わね。

 ならば何時までも男性の腕の中にいるのは良くない。
 助けてくれた?お礼ってぶつかったのは……ねぇ。
 
「ちゃんと前を見て歩いた方がいいですよお嬢さん?」

 一片の感情の籠らない冷たくも硬質な声。
 まるで自分とは初対面だと言わんばかりの口調。
 でも私は貴方の声を覚えている。
 何故なら貴方は……。

「ジェフ、さま!?」

 今私を転倒より救ってくれた……いえ、出会い頭でぶつかったわね。

 先日も寂れた場所より救い出してくれた白馬の王子……ジェフリー・サザートン様⁉
 
 また何時かお逢いいしたいと思っていただけに私は再会出来てとても嬉しかったと同時にジェフリー様の腕の中にいると言う現実に、胸がどきどきとして顔が、ジェフ様と触れている肌がやけどしそうなくらいに熱い。
 
 どうして他の人にはないジェフ様にだけこの様な反応をしてしまうの?

 一体私はどうなっているのかしら……と思った瞬間私はジェフ様の大きな手によって塞がれ、その後の言葉を紡ぐ事を半ば強制的に遮られてしまった。

 全く理解が追い付いていない状態。
 何もかも突飛過ぎて私はどうすればいいのかわからずに固まってしまったわ。

 ただ私にわかるのはジェフ様は意味もなくこの様な無体を働く御方ではない。

 見た目すっきりと痩せている様にみえて実際ジェフリーの身体は以外にも男性らしく逞しい事を私は知って……あら嫌だわ。
 私は何と言うはしたない事を考えてしまったの。
 とは言え未だジェフ様の腕の中に囚われている私は、彼より仄かに香る匂いにクラリと眩暈を起こしそうになってしまう。

 何故ジェフ様の香りでそうなるのかはわからない。

 マックスともエルさんとも違う。
 また遠い昔お父様に抱かれた際に香るものとも違ったの。
 お父様の匂いはとても安心させてくれるもの。
 でもジェフ様の、この香りは……。
 
 夢見心地なひと時。
 時間にすればほんの僅か。
 

「ジェフリー、何をしているのかな?」

 私達は現実へと唐突に戻されてしまったわ。
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