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第四章 現在
閑話 まったく油断も隙もない!! Sideアナベル 後編
しおりを挟むあぁ馬の骨男を主導による下馬をされる際のあの神々しい御姿!!
骨男が貴公子然とエスコートを行うのははっきり言ってどうでもいいのです。
そうエヴァ様の少し頬を朱くお染になるだけではなく、恐らくこの様なシチュエーションは初めての事なのでしょう。
やんわりとはにかまれる御姿が何とも可愛らしくも愛らしい。
そうして自信なさげにあの骨男へと雪の様に白くも柔らかな御手を差し出されるのです。
えぇ、変われるもの……可能ならば私がっ、この手でエヴァ様をお降ろしして差し上げたかったです!!
しかし物事には悲しいかな身長差……というものが存在するのですよ。
私とエヴァ様は女性の中でも小柄な部類に選別されます。
よって私は現在この激甘ピンク色オーラ全開の中、ただ一人苛々を抱えこの様子を歯噛みしじっと耐え忍んでおります。
私の胸……いえ腸が煮え繰り返れば余りの熱さで自身の内臓をも溶かすのではと思っている間も、エヴァ様はそんな私の切ない思いに気付れる事はありません。
それどころか骨男と互いに熱い視線で見つめ合われていたのです。
だから私は……。
「……フィオ、もう暗くなりますよ」
ついお邪魔虫をしてしまいました。
ですがこれも全ては愛すべきエヴァ様の御身を護る為。
なので私は間違ってはいない……筈。
シャロンによってエヴァ様の人生は大きく狂わされてしまいました。
そのシャロンに所縁のある者をこれ以上エヴァ様へ近づけさせる事等到底私は容認出来ません。
それでもエヴァ様達は別れ難そうなのです。
「――――フィオ?」
だから再度私はお声を掛けさせて頂きました。
するとエヴァ様も流石にこれ以上は……と思われたのでしょう。
「あ、あの先程は誠にありがとう御座いました」
お可愛らしい上に何やら艶めいた女性らしさも微かに纏わされるのは私の気の所為でしょうか。
そんな意気消沈とし掛ける私へ更なる追い打ちが私を襲ったのです。
お礼を述べるエヴァ様へ骨男は貴公子然と膝を折り、跪くと実に優雅な仕草でえっ、エヴァ様の手を掬い上げればです。
あろう事か口付けたのですよ!!
あり得ないこの糞外道……コホン、失礼つい本音が出てしまいましたわ。
「お嬢さんはフィオ嬢と仰られるのですね。実に可愛らしい名前です」
そう告げるとエヴァ様へまるで自分は無害ですよ~と言わんばかりに甘く優しい笑みを湛えると軽やかに馬へと跨りましたわ。
これで漸く立ち去るのかと思いきや、今度はエヴァ様が骨男の元へ近づかれるではありませんか!?
お待ちくださいエヴァ様。
これ以上はダメですよ。
そうして可憐な御声で――――。
「あ、貴方様のお名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」
聞かなくても私は知っております。
「――――ジェフリー、ジェフリー・トーマス・サザートンと申しますフィオ嬢」
「ジェフリー様……ですね」
「はいフィオ嬢、もし貴女が宜しければジェフと呼んで下さいませんか?」
宜しい訳ないでしょう、このすっとこどっこいっっ!!
「はい、ジェ……ジェフ様」
そんな蕩ける様なお表情でそんな奴の名を呼ばないで下さいエヴァ様!!
「では何れまた……」
今度はないのでさっさと立ち去るがいい!!
「はい、ジェフ様……」
あぁもうエヴァ様、しっかりなさって下さい。
私が傍でこれでもかと葛藤し悶絶する事約30分後に漸く骨男は帰って行きました。
私はと言えばストレスで本当に身体へ幾つも穴が開いてしまうかと真剣に思いましたわね。
その後私はややふわふわされているエヴァ様を離宮へとお連れしましたよ。
夕食も入浴もエヴァ様は気もそぞろと言った状態で、あぁ今はご自身の寝室で休まれておられます。
そしてエヴァ様は、エヴァ様が抱かなくてもよいお気持ちの正体をまだ御存じではありません。
また私も態態それをお教えする心算は毛程もありません。
可能ならば骨男とはもうこれっきりにして欲しい。
そう何が切っ掛けでシャロンに、これ以上エヴァ様の御心を煩わされたくはないのです。
ただこればかりは今後の事もありますのでまた報告と対策を練らなくてはいけません。
立場上エヴァ様はこのルガートの王妃陛下。
臣下と恋に落ちる事は絶対に許されません。
ですが……それもシャロンが片付くまでの事。
全てが終わればエヴァ様を無事ライアーンへお連れ申し上げるのが私の役目。
まぁその様な事は何があろうとも陛下達には申しませんけれども……ね。
因みにエヴァ様が盗まれた1000ルトとエヴァ様の鞄は、ちゃんと影達によって取り返したのは言うまでもありません。
あぁそれとあの不埒者と言うゴミもしっかり落とし前はつけさせて頂きました。
それにしてもあの様に治安の悪い所を何時までも改善出来ないとは陛下の政治力を疑ってしまいますわね。
まぁそれすら私とエヴァ様にははどうでもいい事。
最愛のエヴァ様がお幸せになられる事だけが私の望みなのですから……。
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