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第四章  現在

閑話  まったく油断も隙もない!! Sideアナベル 前半

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「あ、アナベルどうしてここに!?」

 可愛らしいお声で私の名を呼んで下さるのは、自身の命よりも大切な私のエヴァ様。

 エヴァ様は存在こそが尊い!!

 可憐な鈴を転がす様な美しい声音で我が名を呼んで下さるなんてまさに至福。

 ですがエヴァ様、如何な事情があろうともです。
 馬の骨と一緒なのは容認出来ませんよ。

 そう私は全て把握をしております。
 エヴァ様に何が起こったのか、またその馬の骨が何者なのかもです。
 ラファエル王よりエヴァ様へ何人もの影が配備されております。
 なので私と離れていようともエヴァ様の行動の全ては逐一、はっきり申し上げますとリアルタイムで報告がなされています。

 勿論エヴァ様は何もご存じではありません。
 
 エヴァ様には煩わしいものは可能な限り排除したいと考えております。
 その為ライアーンとルガート両国よりエヴァ様の護衛隊長であるこのアナベル・ベイントンが存在しているのです。

 ですのでそこな馬の骨……この者はラファエル王の重臣の一人、ルートレッジ侯爵ジェフリー・サザートン。
 ラファエル王の腰巾着もとい側近のチャーリー卿が今絶賛を光らせている者。

 色々な意味でシャロンとの噂どころではありません。
 あの忌まわしいシャロンと深い繋がりのある家柄だけに私の胎綿は猛烈に煮え滾っておりますの。
 これ以上シャロンと関りのある者にエヴァ様を近づけたくはない。

 なのに何故エヴァ様!!
 その様な馬の骨の腕の中で微笑まれているのです!!
 あぁ私のエヴァ様が穢れてしまう。
 
 
 今回の件の始まりは確かにエヴァ様がかばんを奪われたと言うハプニングによるものである事は理解しております。
 本来ならば影へ指示しエヴァ様には貧民街へ向かわれる事がないようにするべきでした。
 だからカバンを奪われた際エヴァ様が物取りを追い掛ける可能性もなくもなかったのです。
 えぇ当初想像していたよりも随分とエヴァ様は逞しくお育ちになられたもので……。

 エヴァ様を救出しようとする護衛を一時止めたのは何を隠そうこの私です。
 何故かと問われれば一度見極めたいと思ったのです。
 エヴァ様がお勤めに出られる頃より念の為にと護身術も学んで頂きました。
 その成果を確認したいのもありましたし勿論危機が及べば直ぐにでも救出する準備も出来ておりましたよ。
 そこはこの私自ら颯爽と現れエヴァ様を回収……いえお助けする心算だと言うのにです。

 トンビに油揚げ……とはまさにこの事でしたっ!!


 まさかあの様な場にあの骨男ルートレッジ侯爵がエヴァ様の前へ白馬の王子様然としゃしゃり出てきたお陰で、ほらエヴァ様のあの様に蕩けたあのお表情かお!?
 骨男の胸なんぞに大切なお身体を預けてはいけませんエヴァ様!!

 その骨男は、世の中男という生き物は実に危険な存在なのですよっ!!

 私の心の声はエヴァ様へ全く届く事もなく以前二人の世界に浸っているこの地獄絵図が居た堪れません。

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