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第四章 現在
3 今度こそ Sideエヴァ
しおりを挟むスティアおばさんを見送ってから、私は診療所内の掃除と診療に使ったものを洗濯をし終えると中庭へ干していく。
マックスがカルテの整理をしている間に私はダイニングで昼食の用意を……そうそう今日は三人分ね。
本当は私とマックスの分だけでいいのだけれども、二年前怪我負って入院していたエルさんが甚く私の料理を気に入ってくれたとかで、マックスの提案により週に一度水曜日のお昼は三人お食事をする事になったの。
でもここだけの話、最初はエルさんがとても怖かったわ。
何故ってそれはそうでしょ。
初対面で行き成り部屋に入った瞬間羽交い絞めされる何て普通にいないもの。
それに何時も部屋に入ると物凄~く難しい顔をして書簡を読んでいるの。
だからエルさんって一体何者なのだろうと思うけれども敵ではないのは確かよ。
ふふ、あのマックスが礼儀正しく彼に接しているところからして、もしかすると王宮関係なのかもしれないわね。
でも王宮の関係者だとすれば私の正体……いえ、もうずっと忘れられている人間何て誰も興味すらないでしょ。
そうそう心配するだけ無駄だわ。
とは言えエルさんは本当によく食べる男性。
でも物凄く美味しそうに食べてくれるのは嬉しいし見ていて飽きないわね。
それに頑張ってお料理を作った甲斐があるってものだわ。
年齢はマックスと一緒くらいだと思う。
私よりも遙かに年上でしょうし顔の作りも悪くない。
寧ろ女性が放っておかないくらい整っているイケメンという部類に入るのでしょうね。
背中まである銀色の髪を一つに束ね、深い湖の様な蒼い瞳が魅力的だわ。
一目会えば忘れられないという感じに見受けられるけれど、私にとってはただの元患者さんでありおじさん……んんおじお兄さんと言うところかしら?
それとも週一回だけ一緒にお食事をするお友達?
何れにせよこの診療所にいるだけのお付き合い。
それに私は忘れてはいなくてよ。
前回私はこの国を出る事に失敗してしまったのだから今度こそ失敗は許されない!!
この国へ来て十年。
色々あったけれど漸く目標の年月をクリアしたの。
蓄えもそれなりに出来たしね。
後はタイミングを狙ってアナベルと一緒に第三国へ脱出し、そしてほとぼりが冷めた頃と言うかよ。
出来るだけ早く彼女をライアーンへ帰国させて今度こそ私は私の為の人生を送るわ。
そう今度こそ私だけを愛してくれる素敵な男性と恋をするの。
きっと白馬に乗った素敵な方が私を探して見つけてくれる筈。
また私がいなくなれば陛下もきっと遠慮なく新しい王妃を大々的に娶る事も可能だわ。
第一顔さえ知らない夫何て私はいらない。
私自身覚えていないのも問題かもしれないけれども、陛下もきっと私の事等覚えていらっしゃらないでしょうから……ね。
だから私がこの国を出れば全て解決するの。
さぁこうしてはいられない。
早くお料理を並べなくては!!
今日のお昼はスイーツ鴨のオレンジソース掛けに朝市場で新鮮な魚が手に入ったからカルパッチョをサラダ風にアレンジしたのよ。
我が家産の人参のポタージュに自家製のクロワッサンをオーブンで温めて……と、デザートは苺のカスタードパイ。
我ながらお料理の腕は本当に上達したわね。
これならば何処へ行ってもちゃんと暮らしていけるわ。
後何回こうして三人でお食事会が出来るのでしょうね。
私が出て行っても男性二人がきちんと食事をしてくれたらいいのだけれど、それだけが少し心配だわ。
ふふ、何年かしてこの診療所へ訪れた時、マックスとエルさんの干乾びたミイラ姿何て見たくはないわね。
そうならない為にもおじ様方、そろそろ結婚して幸せな家庭を築いて下さいね。
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