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第二章  過去から現代へ向かって ~過去二年半前

25  私はこれで…… Sideエヴァ

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 今日は色々と疲れてしまった。
 お仕事が忙しいのは今更ではない。
 マックスの診療所へ復職すると決めたあの時……。


 宿屋でマックスと話しをした際彼の気持ちがわかった、いえ正確には想像でしかわからない。

 何故なら私はを体験した事がない。

 確かにルガートへ来てから何度か戦場へ赴く騎士達とその中にはきっと陛下もいらっしゃった筈。
 でもあの頃私はこの離宮より外の世界へ出る事が出来なかった。
 いえ、外へ行こうとすれば隠し通路より出られたのにも拘らず私の心と身体がそれを拒否していたの。
 本当に情けないけれども15歳になるまで私は自分自身で離宮と言う小さな世界に囚われてると思う事で自分を生かしていた。

 そうして徐々に外へ出て少しずつだけれど私の世界は広がっていったわ。
 マックスと出会って診療所で働いていなければ多分、いえきっと今の私はここでこうしていなかったでしょうね。
 病気や怪我でやってくる患者さんと触れ合えていたからこそ、私は自分とも向き合えた。
 それにマックスとも……。

 そ、それにそうよ。
 第一あんなに破格のお給料が頂けるなんて!!

 週三日働くだけで65000!!

 王都では普通その半額が相場らしい。
 アナベルの食堂にしても破格なお給料との筈なのに診療所はそれを上回る金額なの。
 然も今は食材費込みだから85000ルトを頂いている。

 でもここだけの話……お野菜の大半は菜園で賄えているしお肉に関してもアナベルの分を入れてもよ。
 お店のおじさんがおまけしてくれるから一ヶ月で10000ルトも遣わないの。
 だからその余った分はちゃんと臍繰りさせて頂いてます。


 本当は退職の原因となったあの出来事でマックスやこの国の人々の傷ついた心に触れて、遣る瀬無い想いと直接的ではないとは言えシャロンを後方支援せざるを得なかった申し訳なさが綯い交ぜ状態となったわ。
 私はまだまだ何も分かってないお子様なのだと言う事が十分にわかったの。
 それに私だけならば構わないけれど、もし彼らの怒りの矛先がアナベルへ向けられたらそれこそ今まで尽くしてくれた彼女に申し訳なさ過ぎる。

 アナベルはとても強い。
 強いからこそきっと自分が倒れるまで彼女は私を護るでしょう。
 私は私を護ろうとしてくれるアナベルを護りたい。
 勿論物理的に敵わないのは十分理解していてよ。
 私が言いたいのはアナベルの精神的な負担を少なくしたい。
 何時までも護られているだけの子供ではないのだと、だからアナベルにも自身の幸せを見つけて欲しいのだと私は願っている。

 それにしても今回の逃亡はとても残念な結果だったわ。
 まさか私が体調を崩す何て考えてもみなかったのですもの。
 それにしても何故あんなに急に眠くなったのかしらね?
 やはり疲れと緊張もあったのかもしれないわね。


 診療所でのお仕事もまた続けられる事になって本当に良かったわ。
 賭けの件は謝罪してくれたし、何と言っても復職の決定打はお給料のアップよ。

 10000ルトの上乗せ。

 ふふ然も今月からよ。
 だから今月より95000ルトも頂けるの。
 正直なところお給料アップがなければ少し躊躇ってしまうのは否めないけれども、やはり生活する上でお金はなくてはならないもの!!

 これで後二年と三ヶ月で……約束(一方的な)十
 それまでにこの分だとしっかり蓄えも出来るというもの。
 今度こそ最初に決めた十年を務めあげ、私達は自由を勝ち取るの!!

 そう私はこれからキリキリと働き自由の為の資金を……と思っていた時に今日のアレは一体何だったの?

 燃え盛る炎の様な紅い髪の騎士。
 然も行き成り来高と思えばって何?
 おまけに『惚れたから結婚して欲しい』ってあり得ないわ。

 普通物語に出てくる王子様達は『』とムード盛り沢山な場所で、爽やかにそして情熱的に愛を乞うものでしょ。

 先ずと言う意味がわからない。
 それに王子様でもない。
 当然物語の様にドキドキもない。

 筋骨隆々の熊の様に大きな騎士と言うのも物語と違い過ぎる。
 なのにどうして即へ至るのかが理解出来ない。

 理解出来なかったのとお仕事中だったから追い返す様な事を言ってしまったわ。
 だって私はまだをした事もなければこの先どうなっていくのかもわからない。

 それに一応……そう不本意ながら私は既婚者。
 う~ん何にしても実感がない。
 ふぁ~もう考えるのも疲れてしまったのでそろそろ休みましょうか。
 では皆様お休みなさい。
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